第20節『持つものの覚悟』
どうも、もんたです。
世間はお盆休み。
そんなの関係ねぇ!
それでは、どうぞ。
ソラリアさんの魔法を完璧に消せるような存在で、かつやる気のないような声をしている人と言えば…。
「ケ、ケラン先生!?」
ソラリアさんの驚く声が聞こえてくる。
僕の後ろに視線を向けて、目を見開いている。
ソラリアさんの視線に合わせて振り返るといつも通りのぼんやりとした表情でケラン先生が立っていた。
僕の方をちらっとみてウインクをした後、ゆっくりとソラリアさんほうへ向かっていった。
すれ違う時に背中の真っ赤なマントがひらりと風に舞った。
いつも思うけど、もう少し薄い色だったらおしゃれでよかったのにな…
「ソラリアお嬢様。」
いつもとは少し違った声色でケラン先生が呼びかける。
「ひっ!…は、はい…。」
「私はいったい、授業で何をお教えしていたでしょうか?」
――スウッっと周辺が冷える。
さっきまでソラリアさんの魔法によって出ていたはずの熱気を感じない。
「え、えっと…。」
「火属性魔法の危険性については?」
「お、教わりました…。」
「それでは野戦や攻城戦といった戦場での有効性については?」
「そちらも…。」
「そちらも?」
「しっかりと教わりました!!」
もう一段間温度が下がったような。
「ふむ。よく覚えてらっしゃいますね。それでは、市街地戦での火属性魔法の運用については?」
「えっと…。」
「覚えてませんか?」
「お、覚えています!!」
「ほぉ。覚えていてなお、ここで火属性の魔法を使われたのですか?」
「うっ…。」
「周辺に何が見えますかな?」
ケラン先生の言葉に、ソラリアさんがうつむきがちだった顔をあげてきょろきょろし始める。
そうしている間に徐々に冷静になったのか、顔色が青くなっていく。
「あ、あの…。」
「お分かりになりましたかね?」
「はい…。」
ケラン先生の小さなため息のあと、周囲の雰囲気が少し緩んだ。
「…お嬢様。」
「はい…。」
「みなまで言うなとおっしゃるかとは思いますが、ここで改めて。我々の得意とする火属性魔法は他属性の魔法に比べ威力が高く、華やかで注目を集めやすい魔法です。式典だろうと戦場だろうとそれは変わりません。」
「しかし、物事には必ず表裏が存在するのです。正義の反対に悪があるように、創造の対として破壊があるように。」
「式典で人々の心を彩る華やかさも、戦場では民草の命を燃やし尽くす灰暗さに変わります。祭りで羨望の目を集める魔法は、戦場で畏怖を集め絶望を与えます。」
「……。」
「僕はずっと後者でした。戦場で敵兵を焼き、街を壊し、時に味方すら天に還しました。僕の口で。」
「戦場一帯を広域殲滅魔法で焼き尽くし、陛下から受けた名前が【赤滅】です。僕の背には数百、数千、いやおそらくもっと多くの命が続き、のしかかっています。僕は死ぬまで頂いた二つ名を胸に抱き、業を背負って生きていきます。」
「それは…。」
「えぇ、きついですとも。夢に見ますよ。それでも忘れてはいけない。目を背けてはいけない。ここで僕が罪に苛まれ自ら命を落とすようなことをすれば――」
「すれば…?」
「亡くなった命が、いえ、僕がこの手で摘んだ芽が、うかばれない。」
「――っ!!」
「僕は他人の未来を理不尽に終わらせた。だから、僕は僕の手で自分の命を刈り取るようなことはしてはいけないのです。僕は腕がちぎれようと目が見えなくなろうと生きなくてはいけない。お嬢様はこの覚悟かおありか?」
「わ、わたしは…。」
「僕はお嬢様にこんな業を背負ってほしくないから魔法を教えています。もちろん、為政者としてやれねばならない時があるでしょう。ですが、その時は僕がやります。もしくは彼がやるでしょう。お嬢様にはあくまでご自身の命を守るためにこの魔法を使ってほしい。」
ケラン先生の重い告白にソラリアさんは涙を流しながらうなずいた。
「…はい。……はいっ!」
「と、いうところで授業はおしまいです。少々重くて規模が広がりすぎた話になりましたが…。好きな子にライバル出現を察して嫉妬する気持ちはわからなくもないですが、もう少し思慮深くなってほしいものです。ねぇ、マルク。」
「え?あ、はい?」
「ふぇっ!!??」
「え?」
最後の方は少し声が小さくてあんまり聞こえなかったから適当に返事しちゃった。
ソラリアさんは顔を真っ赤にしている。
「はぁ…。これはまだまだかかりそうですね。」
「え?先生、何か?」
「いいえ。さて、お嬢様、マルク。帰りましょう。」
「せ、先生!!」
ケラン先生が案内してくれた馬車ではライオネルさんがむかえてくれた。
「お嬢様、マルク、入学試験お疲れ様でございます。お待たせしましたか?」
「出迎えありがとうライオネル。丁度よかったです。」
「ありがとうございます、ライオネルさん。」
「それでは私はこれで。」
「え?先生は一緒に帰らないんですか?」
「えぇ。僕は少々仕事がありましてね。また後日、お会いしましょう。」
そういってケラン先生は手を振りながら校舎の方へ歩いて行った。
ケラン先生と別れた僕たちは馬車にゆられて屋敷へ帰るのだった。
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「ふむ。それじゃあ二人とも試験は問題なかった感じかな?」
夕食を食べながら、シャンドラさんがにっこりと聞いてくる。
マリアンヌさんは体調がすぐれない、ということで食事は終えてお茶を飲んでいる。
大丈夫かな?
「えぇ!合格間違いないです!」
「そうですね。僕も大丈夫だと思うんですけど。」
「おや、マルク君は少し弱気かな?」
「いえ…そんなことないんですけど。あういう試験は初めてなので全然イメージがわかなくって。」
「ああ、それもそうか。でもまぁ、二人なら心配はいらないと思うよ。結果発表は明後日だから明日は二人ともおやすみするといい。結果発表の次の日はそのまま入学式で忙しくなるからね。」
「本当ですかお父様!」
「うん。あ、でもソラリアはこの後僕の部屋にくること。」
「うっ…。」
「原因が分かってるようでなによりだ。」
「むむむ。」
「ははは…。」
「でもあなた?いいことじゃありません?」
「マリー?」
「だってやっとソラリアに春がやってきたんですよ?」
「ちょっ!?」
「ふむ…。確かに。それはいいことかな。」
「お、お父様!!」
「ライバルが出てきて嫉妬するのもわかるけれど、もう少しレディとしてふるまってもらえたら…ねぇ、マルク君?」
「えっ!?」
「お、おかあひゃま!!??」
「マリー、茶化すのもその辺にね。」
「ええ?いいところじゃない。」
「はいはい。それいじょうやるといろいろと、ね。ソラリアも落ち着いて。マルク君がびっくりしてるよ。」
「え!?しょ、それは…。」
にっこりと笑うシャンドラさんにマリアンヌさんとソラリアさんの勢いが止まる。
途中、シャンドラさんとマリアンヌさんの言葉に引っかかることはあったけど…。
「その話はここまで。そうだ、マルク君。」
「は、はい。」
「明日は休みだけど、何か予定は?」
「あ、えっと、冒険者ギルドと薬師ギルドに顔出しをしようかと。前行ったときは例の事件で話ができなかったので。」
「そういえばそうだったね。今更なんだけど、依頼の期限は大丈夫なのかい?」
「はい。まだランクも低いので期限無しの常時依頼ばっかり受けていますから…。」
「ん?まだFランクなの?」
「はい。冒険者ギルドはFランクで今回の依頼でEランクに上がれるはずです。薬師ギルドの方はDランクまで上げてもらいました。おかげで調合室が無料で使えるのでギルド長にはとっても感謝しています。」
「結構依頼を受けていると思っていたけど、ランクは上がっていないんだね?」
「そうねぇ、マルク君は授業以外は訓練していたり、近衛兵と一緒に森に行ったりしていたから依頼は簡単にこなしてそうだけど…。」
「えっと、薬師ギルドに登録しているせいだと思います。」
「薬師ギルドのせい?…まさか!」
お読みいただきありがとうございました。
お盆休み、皆さんエンジョイされていますか?
僕は仕事をエンジョイしています(白目)
明日も更新予定です!
お楽しみに!




