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竜の薬師  作者: もんた
第2章 学園編-前編
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第19節『お怒り』

どうも、もんたです。

お待たせしました。


「あぁ、気のせいではないですな。今度受け取りにいくことになっていますので、その際はどうぞよろしく。冒険者ギルドや商業ギルドも大きな窓口ではあるけれど、やはり一番は領主様の兵団だから。一番この割引を喜んでくれているかもしれない。」





モロゾさんはあっはっはと大きな口を開けてずいぶんと機嫌がよさそう。

そりゃそれで儲けが出るわけだし商人としては嬉しいよね。


かあさんの小屋にもエルフの行商人がたまに来てたっけ。

かあさんも街に買い物に行くことはたまにあったけど、ほとんどは行商人から買ったり、じいちゃんが持ってきたもので済ませてた。

じいちゃんが持ってくるものは、僕でもわかるくらい質がいいもので昔はすごく不思議だったんだけど…。

修行して、話を聞いた後の今だからわかる。

あれは多分この国か、別の国からもらったものだったんだろうな。

行商人の人たちに薬とか魔物素材を売るんだけど、じいちゃんからのあまりものの話になると一気にルンルンになってたのも頷ける。



特に、アリア…さんだったけ。

普段はおっとりしてるのにお金の話になったとたんめちゃくちゃ早口になるから初めは怖かった。

2回目からはさすがになれたけど。






「マルクさん?」

「ご、ごめん。ちょっとぼーっとしてたよ。」

「ははは、お疲れですかな?ついつい話し込んでしまった。わたしもアイナの迎えにきたところでしたのでね。そうだ、マルク君もシャンドラ様のお屋敷に送りましょうかな?」

「あ、いえ。僕もソラリア様をお待ちしているので。」

「あぁ、貴族コースの試験中でしたな。それではここでお別れですね。またお会いしましょう。」

「はい。ありがとうございました。アイナもまたね。」

「もちろんです。また、といっても次は結果発表でしょうし、そのあとは学園でいつでも会えますから。」

「そうだったね。合格してるといいなぁ。」

「マルクさんなら問題ありません。勿論、わたしだって合格しています!」

「うんうん。調子よかったようで何よりだよ。マルク君、ぜひうちの店にも顔をだしてもらえると嬉しい限りです。冒険者ギルドの二軒隣にある建物ですので。その時はしっかりとサービスさせてもらいますよ。」

「本当ですか?ありがとうございます。」

「信用第一ですから。わたしの名前にかけて、嘘は尽きませんとも。それじゃあ。」

「はい。また。」





モロゾさんが伸ばした手をしっかり握り返す。

満足そうに頷いてアイナの手を引いて馬車へ向かっていった。

アイナは時折こっちを向いて手を振ってくるので、馬車の陰で見えなくなるまで僕も手を振っていた。
















「何やらいい雰囲気ですね?」













――スッとした。



背中にぞわりと寒気が走る。

ゆっくりと振り返るとソラリアさんがにっこりと笑って立っていた。


いや、きちんというと、にっこりと笑っているような顔で、になるかな。


全く笑ってない。


ぐっと上がった口元から今にも呪いの言葉が出てきそうだ。

寒気と同時に、ソラリアさんの後ろからは火が出ているかのよう。

というか何かのきっかけで本当に火が飛んできそうだ。






「お、お疲れ様です。ソラリア様。」


「えぇ。マルクさんが女の子とイチャイチャして楽しんでいる間に私はとっても退屈な礼儀作法やマナーの試験を受けてまいりましたよ。ええとっても退屈でした。」

「い、イチャイチャなんてしていませんよ。」



「どうでしょう?姿が見えなくなるまで手を振りあって、お相手の女の子はと~っても楽しそうでしたよ?そういえばマルクさんも嬉しそうな表情でしたね~。」

「た、ただの挨拶ですよ。それにアイナとはさっき初めて話したばっかりで…。」

「へぇ?」







ソラリアさんの目元がピクリと跳ね上がる。



やってしまった。

これはやってしまったんだろう。



マリアンヌ様がシャンドラさんに怒るときと全く同じだ。

ソラリアさんの身体から炎が沸き上がるのが見える。


…沸き上がってないよね?







「へ、へぇ~。さっきお話ししたばかりなのですね?」

「は、はい。そうですけど…。」

「つまり馬車を待っているこのちょっとした時間くらいで仲良くなった、と?」

「そう…ですね?仲良くなったというかお喋りをしたというか…。」

「呼び捨てにするほどに?」

「えっ?…あ。」

「ふ~ん…。わかりました。」

「い、いえ!違うんです!これはアイナがそう呼んで、というので…!あっ!」







ピクッ






「呼び捨てにしてくれと言われて、敬称を付けずに呼んでいるんですね?」

「そ、そうです。はじめはアイナさん、と…。」

「わたしのことは呼び捨てで呼んでくれませんよね?」

「それは、さすがに…。」

「でもデーザン商会のアイナのことは呼び捨てに出来る、と。」


「た、立場がですね…?」







ソラリアさんが小さく息をはいた。









「マルクさんの……バカーーーーーーッ!!!!」

「ご、ごめんなさいーーー!!!」

「許しませんっ!!≪ファイアボール≫!!!」







怒りのままにソラリアさんが魔法を打ってくる。

火属性はまずい!!



周りは木製の馬車に馬、さらにはその世話をする人がちらほら。

花壇には花はもちろん、低木も植えてあるし、間違って当たりでもしたら火事になっちゃう。

そうなると当然避けるなんてできないわけで…

()()するしか!






「ちょっ!!火の魔法はダメです!!≪アクアボール≫!!」



「従者の癖に生意気です!主に口答えしない!!≪ファイアボール≫!」


「違っ!?」







魔法同士が打ち消しあい、もうもうと煙が立ち込める奥からさらに火の玉が飛んでくる。

威力よりも数を意識した小さな玉とはいえ、炎であることには変わりない。






「ソ、ソラリア様!落ち着いて!」


「これが落ち着いていられますか!!そこになおりなさいっ!」


「誤解です!!」







このまま逃げてても変わらないし、いつ周りに被害が出るかわからない。

ただ立ち止まるといい的な気もするけど…。

ここはやるしか…!







「ソラリア様!!待ってください!危ないから!!」



「問答無用!≪ファイアボール≫!」

「うえっ!?」







案の定ソラリアさんはしっかりと狙って魔法を打ってきた。

今まで勢いに任せてよけてきたけど、残念ながら僕はしっかりと立ち止まってしまってる。

息もあがってしまってすぐに動けそうにない。

ソラリアさんの放った火の玉は確実に僕に向かって飛んできている。

あ、これはしん……












「はい。そこまで。」












後ろからけだるそうな声が聞こえたと思った次の瞬間、僕の目の前で火の玉が()()()()()



――消えた!?


魔法を反属性の魔法で打ち消すのはよくある。

僕もさっきしてたわけだし。

相手の魔法と同じかそれ以上の魔力を込めて反属性の魔法をぶつけるだけ。

爆発して視界が悪くなったりはするけど、ダメージは受けずに済む。

相打ちさせるのが遅いと爆風で吹き飛ばされたりするけど。




でも()()()()、はレベルが違う。

他人が操作してる魔力に干渉して、魔法としての形を崩さないといけない。

当然、相手だってそう簡単に壊せるような魔力の組み方をしてるはずはない。

半端に干渉しても、相手が強ければそのまま魔法は飛んでいくし、下手すると自分の魔力と相手の魔力が暴走して大爆発。


ここまで完璧に魔法を打ち消すには、使われてる魔法への理解と圧倒的レベルの差が必要なはず。

それこそ、僕の風魔法をかあさんが指先一つでけしちゃうみたいな。

そして、ソラリアさんの魔法を完璧に消せるような存在で、かつやる気のないような声をしている人と言えば…。





お読みいただきありがとうございました。


めちゃくちゃ暑いです福岡。

溶けそうです。

家で落ち着いて書けないので、カフェを探してふらふらしております。

皆さんも熱中症等お気をつけて。

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