第18節『ちょっとした授業』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それでは、どうぞ。
き、きれいな顔が目の前に…。
それに、なんか、良い匂いがする…。
「ア、アイナ、ち、近いよ!」
「えうっ!?す、すいません!!」
アイナは褐色の頬をほんのりの赤く染めながら花の香りと一緒に離れていく。
「い、いや。ごめんね。えっと、何の話だっけ。」
「し、失礼しました…。確か、マルクさんの弓矢の腕前の話でした。護衛騎士団の方々と訓練された、と。」
「そうだったね。えっと弓兵の人たちと一緒に訓練したんだけど、みんなとっても上手でさ。特にサイロウ爺は言葉通り百発百中で的に当たるんだ。口では耄碌した、なんて言ってたけど絶対嘘だよアレ。」
「サイロウ爺、というと…。まさか近衛騎士団弓兵隊隊長のサイロウ様ですか?」
「そう。爺ちゃんって呼んでくれって言われたけど、周りの兵士さんたちが様付で呼んでる中そんな風に呼ぶ気にはならなくって…でも爺ちゃんって呼ばないと不機嫌になるし、でさ。隊員さんと相談して、サイロウ爺って呼ぶことにしたんだ。…今更だけど怒られないかな?」
「ふふふ。怒られることはないんじゃないでしょうか。」
「そうかな?それならよかった。」
「おーい!アイナ!!」
「ん?」
「あら。」
アイナの奥の方から名前を呼びながら男の人が近づいてくる。
アイナより肌の色は少し薄めだけど、つばの広い帽子の隙間から見える髪は全く同じ色だ。
…おなかはちょっぷり出てるかな。
「アイナ、ここにいたか。迎えに来たぞ。」
「はい。お父様、ありがとうございます。」
「うむ。それと…失礼ながらお隣の方は?」
アイナのお父さんが目を細めてみてくる。
にっこりと笑ってるけど、笑ってないってこの表情のことなんだろう。
僕は屋敷でちらっと見たことあるけど、数日前まではなんてことないただの居候だったから、直接話すことなんてなかったもんな。
「初めまして、アイナのお父様ですね。マルクと言います。」
「マルクさんは同じ試験の組だったんです。ソラリア様の従者をされてるんですよ。」
「なんだって!?こ、これは失礼しましたっ!私、デーザン商会のリュカ・モロゾと申します。侯爵様にはいつもいつもお世話になっております。」
「あっ、丁寧にありがとうございます…。アイナさんが言うようにソラリア様の従者をしています。それと、僕は貴族ではないですし、従者ですので、いつも通りの話し方でいいので…。」
「いえいえ。マルク様、従者といってもただの従者ではないのですぞ。領主様のご息女の従者、なんてなりたくてなれるものではないですからな。」
「はぁ…。それでも様付けはよしていただけると…やりにくくって。呼び捨てで結構です。」
「うむ…?しかし呼び捨て、というわけには…。」
「アイナにもさん付けにしてもらっていますし、せめて君とか、さんとかで…。」
「ご本人がよいというのであれば…マルク君と呼ばせていただきましょう。」
にっこりと目じりを落とすモロゾさんはまさにいいお父さん、って感じだ。
シャンドラさんとは別の優しい雰囲気だな。
「堅苦しいのはよしましょう!マルクさん、お付きの従者というのは貴族様を守れるだけの護衛の力はもちろん、社交場に出るための礼儀や家内のことなど覚えることはたくさんあるんです!あ、もちろん、護衛に関しては別に人をつけることもありますが、それでも最低限の自衛力くらいは必要ですし。」
「えぇ、アイナの言う通りです。マルク君はまだまだ子供ながらしっかりされている様子。ソラリア様をお守りするくらいだ、魔法や剣技にも覚えがあるのでしょう?」
「そうです!!お父様!マルクさんの魔法はとってもすごいのですよ!遠当ての試験では見たことない魔法をお使いでした!」
「ほぉ!マルク君はアイナと同い年なのにオリジナルの魔法を?」
親子そろって興味津々、といった感じだ。
アイナに至っては目をキラキラさせているし。
「あー、えっと、オリジナルって言っても魔法で弓矢を再現しただけなので大したことはないかなぁ、と。剣もそんなに使えませんし…。」
「魔法で矢を…?ふむ…。それはどういったメリットがあるのでしょうか?」
何か引っかかったのか、モロゾさんは顎に手を置いて首をかしげる。
「狩りをするときに便利だな、位ですよ。弓矢でもいいんですけど、矢は消耗品ですから。」
僕の答えに納得したのか、モロゾさんは首を縦に何度も振っている。
「なるほど。その通りですな。消耗品である矢の代用となり得るわけですね。魔力次第にはなるものの延々と弓矢を打てるとなれば一考の余地有り、か。」
「そうです。それに魔物の素材も手に入りますよ。」
「素材?」
アイナはイマイチ関係がわからないのかぽかんとした様子だ。
モロゾさんは商会の会長ということもあり意味が分かったみたいで目を見開いた。
「そうか…そうか!!火属性の魔法でも皮の素材が入手可能と!」
「でもお父様?普通に魔法を使っても素材は得られるではありませんか。」
「バカモン!」
「ひぇっ!」
「うおっ!?」
「よいかアイナ!確かに素材が得られるというのは変わらん。だが、得られる素材の質が変わるのだ!そうでしょう、マルク君?」
鬼気迫る表情というのはこのことなんだろう。
シャンドラさんがマリーさんに怒られると分かったときと同じ顔だ。
「え、えぇ。モロゾさんの言う通りです。アイナ、初級の攻撃魔法ってどんなものがある?」
「初級魔法、ですか?≪ファイアボール≫に≪アクアボール≫、≪ロックボール≫とかでしょうか。」
「うん。その魔法の形は?」
「全部まるい玉の形をしています。」
「そうだね。それが魔物にあたるとどうなるかな。例えば≪ファイアボール≫が狼に当たれば?」
「えーっと?それであれば狼は燃えてしまうでしょう。ソラリア様やマルクさんくらいの魔法がつかえれば、それこそ真っ黒こげに!」
にこにこと怖いことをいうな…。
少なくとも僕は燃やさないよ?
ソラリアさんは…ちょっと断言できないけど。
「ははは…。仮に真っ黒こげになったとして、その狼から素材は取れるかな?」
「ん~…無理、ですね。牙とか爪くらいでしょうか。傷や焼け跡がある毛皮は売り物になりませんし…。あ。」
「気づいた?」
「はい!はい!!」
アイナは閃いてうれしかったのか満面の笑みだ。
授業でも受けてるみたいに手をまっすぐ伸ばしているのがみてておかしい。
モロゾさんも思わず苦笑いしてるし。
「じゃあ、アイナさん。」
「はい!矢の形にすることで傷口が小さくなって毛皮を売り物にすることができるんですね!」
「そう、正解。毛皮以外にも爪や牙も傷とかなく手に入れることができるよ。まぁ、狩りをするうえでもっと大事なのは…」
「「矢が尽きないことだから(ですね!)」」
……
「「あははっ!」」
見事に被ったな。
「矢だってただじゃないしね。モロゾさん、矢はだいたいいくらなんですか?」
「そうですな。基本的に矢はバラ売りしません。バラ売りしたところで1本ずつ購入なんて面倒なことはしないのでね。どこの店も5~10本のまとめ売りが最小単位というところでしょうか。ちなみにうちは10本で500オリン。折れたり欠けたりした矢を持ってきてくれれば、10本50オリンで買い取るとしています。」
「壊れた矢の買い取り?」
「ここ数年で試験的に始めたもので、折れたものは薪の一部になったりするし、鏃が欠けたものは
まとめて鋳しなおせば再度鏃にするか他の武器に出来るのでは、と思い立ちまして。鉄のインゴットを買うよりも安いし、冒険者や兵団の人らは割引で新品が手に入る。どちらもお得、と。」
「なるほど…。確かに言われてみれば…。」
「壊れた剣や鎧は昔からそうやって再利用されてきております。だったら鏃も同じことができるだろう、と思って始めてみたのですが、有難いことにそこそこ上手くいってますな。」
「あ…そういえば、弓兵の人たちが訓練の後に壊れた矢を集めてたような…。」
「あぁ、気のせいではないですな。今度受け取りにいくことになっていますので、その際はどうぞよろしく。冒険者ギルドや商業ギルドも大きな窓口ではあるけれど、やはり一番は領主様の兵団だから。一番この割引を喜んでくれているかもしれない。」
お読みいただきありがとうございました。
ちなみに、10オリン==100円くらいです。
10数話前くらいから日々のアクセスが200Pv越えるようになり、
いろんな人に見ていただいているな、と実感しています。
めちゃくちゃうれしいです。
これからもよろしくお願いします!




