17節『砂漠の民』
どうも、もんたです。
「もし?」
「えっ?」
頭の上でふわふわと水球を浮かべていると声をかけられた。
聞いたことがあるような、ないような。
流石に同じミスを何度も繰り返すわけにはいかないので、集中力は切らせてない。
浮かべていた水球を生垣の上に落として顔を上げると、翡翠色の大きな瞳が僕を覗いていた。
「集中されている時に申し訳ございません。」
「いや、大丈夫だよ…っと。どうかされましたか?」
つい普段通りに声かけちゃったけど、この場所を使うってことはそういうことだと思い出した。
失礼だと思われてないかな…。
「ふふふ。」
「え、えっと?」
「いえ、普段通りにお話しいただいて構いませんよ。試験の時にバックスさんにお話だったように。私貴族じゃないので。お隣、よろしいですか?」
「え?あ、はい、えっと。うん、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
にっこりと笑って僕の隣に座る。
顔は見おぼえあるけど、当然ながら名前とかは知らない。
僕と近い銀色というより明るい灰色の髪は肩口までで切りそろえられている。
トーカの街では珍しい褐色の肌が目を引く。
「あ、肌の色、珍しいですか?」
「えっ、あ、じっと見ちゃってごめん。」
「きにしてませんよ。珍しいのはわかってますし。父がラゴア王国の出身なので、その血を受け継いでいるのです。」
「ラゴア王国?」
「はい。ご存じないですか?」
「えーっと、このサドニア王国から東にずっと行ったところってくらいしか…。」
「あまり交流のない国ですからね。ラゴアとサドニアの両王国の間にバルナージ共和国がありますし。ラゴア王国は国土の3分の1を砂漠、と呼ばれる広大な砂地が占めているのです。国全体でも雨が少なくって…。なかなか植物が育たないので、結構大変な国なんです。そのため、いや、そのおかげというべきでしょうか。交易が発達して行商人が多いのが特徴ですね。わたしの父も行商人としてこの街を訪れ、そのまま居ついてしまったみたいです。」
「へぇ。じゃあ今もお父さんは行商人をしているの?」
「いいえ。今はこの街に腰を落ち着けています。デーザン商会ってご存知ないですか?」
「デーザン…あ、この前お屋敷に来てたような。」
「そのデーザン商会です。あっ!」
「んっ!?」
突然の大声に変な声が出ちゃった。
「私、お名前お伝えしていませんでした!なんて失礼なことを…。私、リュカ・アイナと申します。気軽に、アイナ、とお呼びください。よろしくお願いしますね、マルク様。」
「う、うん。よろしくね、アイナ。…って、アイナはどうして僕の名前を?」
「それはもちろん、同じ試験組でしたからお名前を聞く機会はございましたよ。遠当てでは全弾中央命中という快挙ですもの。同じ組の受験生はもちろん、周囲で試験をしていた方々も注目されていましたから。」
「えっ…。周りも…?」
思わぬ事実にびっくりしてしまった。
確かにみんなのところに戻った時には質問攻めにあってはいたけど。
その後は特に何もなかったし…。
「きっと皆さん、ソラリア様がいらっしゃったのでお声をかけにくかったんですよ。あ、私も声かけにくかったのですが、こちらのベンチで魔法の訓練をされている様子でしたので、お一人でお暇なのかなぁと思ったのですが…。」
「ん?」
「あの…今更ですが、ご迷惑ではなかったでしょうか…。」
アイナはどんどん声のトーンを落としながら、最後にはしょんぼりと顔を俯けてしまった。
元気に話していたさっきまでとは大違いだ。
確かに魔法の訓練はしてたけど、本当に暇つぶしだし、急ぎの訓練とかでもないからな。
「ううん。本当にすることなくって遊んでただけだから。せっかくだからおしゃべりしよう。」
「本当ですか!ではでは!」
そのあとはさっきまでと同じように明るく話すアイナといろいろとお喋りして時間をつぶしていた。
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それから20分くらいかな。
なにを話しても楽しそうに話すアイナにつられてずっと話を続けてた。
「まぁ!それではマルクさんは複数の属性の魔法が使えるのですね!氷属性が一番お得意なのですか?」
「ん~。氷属性っていうより、水属性の方が得意かな。アイナは土属性って言ってたっけ?」
「はい。ラゴア王国の民はほとんどが土属性か火属性に適性を持っています。私も例にもれず、土属性の適性が強くって。初めの水晶もまっ黄色でしたよ。わたしの父はどちらかと言うと火属性の方が適性強いのですけどね。」
「そうなんだ。そういうのってやっぱり遺伝するものなのかな?」
「そうでもないみたいですよ?私の友人も両親のものとは全く違う適性を持っていると言っていましたし。その友人はマルクさんと同じで水属性が一番適性あるのですけど、お父様は火属性、お母さまは風属性に適性がある方だったはずです。」
「へぇ…。どうやって決まるんだろう。」
「どうなんでしょうか。性格にかかわるとか、生まれによって変わるとかいろいろと説はあるみたいですけど。ちなみにマルクさんのご両親の魔法適性は?」
「さぁ…。なんだろう?」
「ご存じないのですか?」
まぁそりゃ疑問に思うか。
親の魔法属性なんて知ってて当然だもんね。
「うん。大きくなったときにはもう両親とも死んじゃっててさ。」
アイナはびっくりして目を見開いた。
しきりにまばたきした後、目元を潤ませながらか細い声で話しかけてくる。
「あっ…あの…。も、申し訳…。」
「ああ、気にしないで。本当に覚えてないから、悲しいとかもほとんどないんだ。」
アイナの目をみて話すのが少し恥ずかしくって、頬をかきながら視線をそらす。
「そう……なのですか?」
「うん。代わりの人に育てられてね。その人は風属性が得意だったかな。その後ソラリア様のお付きになったんだ。」
「そうだったのですね…。あの、辛いことを伺ってしまって申し訳ありませんでした。」
「いいのいいの。本当に気にしないで。」
「はい。」
「これは内緒の話なんだけど…。誰にも言わないって約束してくれる?」
「えっ…。も、もちろん約束させていただきますけど、よろしいでしょうか…?」
「アイナは悪い人じゃなさそうだし。じゃあ、約束ね。」
僕はそういうと右手の小指を伸ばす。
アイナは不思議そうに首をかしげた。
「これは…なんでしょうか?」
「あれ?しらない?約束する時のおまじないだよ。」
「おまじない、ですか?」
「そう。約束を破らないようにって、小指同士をこう絡めるんだ。それから縦に三回指をふるんだよ。」
「へぇ、初めて聞きました…。こ、これでよろしいでしょうか。」
そういうとアイナは遠慮がちに小指を合わせる。
振った時に指が離れないようにぐっと指に力をいれて、と。
手を三回振っておしまい。
「あっ…。」
「これでよし。今からはなすことは内緒だよ。…どうしたの?アイナ。」
指を離して顔をあげるとアイナの様子が少し変だ。
「な、なんでもありません!!あ、さて、えっと、秘密でしたっけ?」
「え?あ、うん。えっとね、僕を育ててくれた人はエルフなんだ。」
「そ、そうなのですか?」
「うん。見ての通り両親は人族なんだけど。たまたま拾ってくれた人がエルフで、ずっと一緒に暮らしてたんだ。魔法が得意なのもかあさんに教わってたからってのがあるかも。エルフ族の人たちは魔法得意な人が多いからね。」
「そうですね。苦手な方もいるにはいますが、総じてお上手な方が多いと聞きます。他にも弓矢の扱いに長けていると目にしたことがありますが、マルクさんも弓矢はお上手なのですか?」
「うーん。どうなんだろう。森の中で狩りに使えるくらいの腕前はあるから、そこそこ上手なんじゃないかなーって思ってるよ。ただなぁ…。」
「何か問題でも?」
「ううん。弓の腕前っていってもこれまで比較する人がいなくってさ。かあさんと比較したって勝てっこないしね。あぁ、でも近衛騎士団の人たちと一緒に訓練したこともあったっけ。」
「え!?あのエリート揃いと呼ばれている騎士団の方々とですか!?そ、それで結果は!!」
興奮したアイナがぐっと顔を近づける。
き、きれいな顔がめの前に…。
それに、なんか、良い匂いがする…。
お読みいただきありがとうございました。
少し更新遅くなってしまいました。
引き続き更新頑張っていきます。
九州は台風接近で雨風がすごいです。
皆様お宅は大丈夫でしょうか。
十分にお気をつけて。




