第15節『実技試験その③』
どうも、もんたです。
おまたせしました。
レイさんはちらちらとこちらを見ながら下がっていく。
距離をとったのを確認して、さっそく試験はじめだ。
ひと呼吸おく。
自分の体の中の魔力を集中させる。
―――そもそも魔力とは、この世の中に生きているものすべてに宿っているもの。
人間はもちろん、亜人や動物、森の植物だって大なり小なりもってる。
動物や植物の中で保有する魔力の値が生まれつき異常に高いもやなんらかのきっかけで極端な魔力を体内にため込んでしまったものが魔物となってしまう。
魔物となってから、さらに魔力をため込んだり、他の魔物を食らったりして魔力を溜めていくことで魔物としてのランクを上げることが出来る。
そうやって進化と成長を繰り返した魔物は手下を引き連れていたり、付近一帯の長になっていたりする。
サドニア王国内にもところどころ特定の魔物の縄張りがあり、冒険者の稼ぎどころとなっていたり、危険地帯になっていたりする。
有名なところだと【竜の尾根】の頂上付近は龍の巣だし、尾根の北西側の麓はリザードマンの密集地帯となっている。
東部に広がる平原は比較的落ち着いているが、南東の森はジメジメとした湿地帯となっていてカエルや虫の魔物がはびこっている。
南西の内海から外海に出る窓口には季節によるものの水竜が産卵のためにやってくるため、一時的に船舶の出入りが制限される。―――
おへその少し上の当たりで循環させていた魔力を右手にあつめ、そのまま上にかかげる。
周辺の空気から、魔力を使って水を集めて、水玉を作った。
大きさはいつも使う≪水蛇≫と同じ。
今日そこから生み出されるのは蛇ではなく、矢。
いつも狩りで使ってる弓矢をイメージする。
5回分一気に作ってもいいけど、そうするとずっと浮かべておかないといけないし面倒だな…
あれ?
それならそもそも水の玉作らなくてよくない?
ソラリアさんや他の人の魔法みたいに手元で作ればよかったじゃん。
無駄に魔力使ってしまった…。
あれだけ魔力は大事に使えってじいちゃんに言われたのに…。
ばれたらめっちゃくちゃ怒られるんだろうな。
…いないし、ばれないよね?
まぁ、作っちゃったものは仕方ないので今回はこれでいこう。
水の玉にさらに魔力を加えて一本の矢を手元に持ってくる。
…まだ少し大きいかな。
ぎゅっと押し込めて、小さく。
「いきます。」
――ヒュッ!!
ソラリアさんの魔法に負けないくらいの速度で水の矢が的に向かって飛んでいく。
期待通り的の中央にヒットした。
ホッとしたまま、次々と矢を飛ばしていく。
全弾命中!
どんどんうっちゃったけど大丈夫だったかな。
最後に頭の上に浮かべていた水玉を中間の地面に撒いて片付けもおしまい。
「おわりました。」
ふり返るとレイさんがぽかんとしている。
「あの…?」
「はっ!え、えっと、す、すいません。マルクさん、遠当て終了です。全弾命中、中央は…ちょ、ちょっと確認してきます!」
レイさんが的の片づけをしていた奥の係員のところへとかけていく。
僕は戻っていいんだろうか。
暇を持て余すようにキョロキョロしているとレイさんが息を切らして帰ってきた。
周りもどんどん交代しながら試験を進めている。
後ろの方では魔法や弓矢ではなく剣や手斧、槍がぶつかり合ってる。
「はぁ、はぁ…。な、なにかありましたか?」
「す、すいません。少し暇で…。」
「そ、そうですか。えっと、マルクさんは、全弾中央に命中となりました。この結果を残されたのは今の3年生主席が達成したっきりです。すごい記録ですよ!」
「そうなんですか…?弓矢とか魔法の訓練をしてれば簡単にクリアしそうですけど…。」
「普段であればそうでしょうね。やはり試験ということもあって緊張していつも通りの力をだせる、というのは難しいものですよ。マルクさんはそれほど緊張されていなかったみたいですね?」
「そう…ですね。森で狩りをしてる時のほうが緊張するので、今回はあんまり。」
「はぁ~。すごいですね。さて、ひとまずマルクさんの遠当ての試験は終了です。それでは次、バックスさん前へお願いします!」
軽く頭を下げて、みんなのところへ戻る。
入れ違いにバックスが前に出てくるのが見えた。
「よっ!すげぇなマルク!」
「ありがとう。バックスも頑張って。」
「うぐっ…。はぁ…。」
「?どうしたの?体調でも悪い?」
「ちげぇよ。ただでさえ弓はそこまで得意じゃないのにお前の後って…。ま、頑張ってくるわ。」
バックスはひらひらと手を振りながらレイさんのもとに向かった。
すれ違って待機場所へいくと、なんとなく、というか絶対に視線が集まってる感じがする。
どんな表情か、と言われるといまいちわからないけれど、怖がってる感じとすごいなって感じの2種類くらいかなと思う。
ちなみに、ソラリアさんの目はキラキラしてるほう。
「マルクさん!!とっても凄いです!全部中央だなんて!!」
「ありがとうございます。ソラリア様の従者としてなんとか。」
「なんとかどころじゃないですよ!!」
そのあともなんだかんだと褒められおだてられ…。
それまで一切話さなかった同じグループの人たちからも声をかけられた。
さっきの魔法はなんだとか、ソラリアさんとはどんな関係なのか、とか。
そもそも君は誰なのかってのが、一番困ったかな。
そんな質問に答えている間にも試験は進んでいくわけで。
気付いた時にはバックスが戻ってきていた。
全く見てなかったよ…。
「ふぃ…。まぁ頑張った方かな。」
「お疲れ様。バックス。」
「ご苦労様でした、バックスさん!」
「おう。ありがとな。ソラリア様もありがとうございます。」
「弓矢はお得意でないとのことでしたけど、しっかり的に当たってたではありませんか!」
「いやぁ、とはいえ半分ですから。マルク、どうだったよ。プロから見て俺の腕前は。」
「プロって何さ。試験の結果でしょ?み、みてたよ?」
全く見てなかったとは言えない。
「マルクさんなら、皆さんに囲まれて全く、見てませんでしたよ。」
「ちょっ!?」
思いもよらない裏切りにびっくりしてしまった。
横にいるソラリアさんは頬を膨らましている。
「そ、そんなことないよ!」
「いーえ。マルクさんは目もくれてませんでした。女の子たちに囲まれて鼻の下を伸ばしてらっしゃいました!」
「ふぇっ!?」
「ふ~ん?」
違うよ!?
困ってたんですけど!
バックスもソラリア様もジトっとした目で僕を見てくる。
「ち、違うよ!?いろいろ質問されたのに答えるのが大変で、困ってたんだよ!」
「んで、結果は見てたわけ?」
「うっ…。みて、なかったけど…。」
「…はぁ。」
大げさに肩をすくめるバックス。
ソラリアさんはかわらず頬を膨らませたまま。
「ま、いいけどよ。見てなんかかわるわけでもねぇし。ちなみに2発命中、中央には当たんねぇわ。」
「そ、そっか。でも苦手とは言っても当たるんだね。」
「一応これでも鍛冶屋の息子だからな。最低限の武具の扱い位はできるようになってるさ。それでも剣の方が圧倒的に多いし、俺はこの後の追加試験を受けることにするよ。」
「追加試験?」
「あぁ、あんまり知られてないんだよな。追加試験ってのは――。」
「み、みなさん!注目してください!」
そういえばまだ試験中だった。
レイさんが手を頭の上で左右に振っている。
身長が同じくらいだからピョンピョンと飛んでいるのがかわいらしい。
年上の女性にそんなことを言うのは失礼なんだろうけど。
「はいっ!ありがとうございます!えーっと、これにて通常コースの皆さんの試験は終了、この場で解散となります。お疲れさまでした。結果は2~3日後にわかりますので、それまでゆっくりされてください。貴族・騎士コースを希望される方はこの後、礼儀作法の試験が残っていますので、もうしばらくこのままで。」
「あっ!!希望される方は追加試験を受けることが出来ますので、希望される方はわたしに教えてください。私からは以上です。何かご質問は…?」
キョロキョロとするレイさん。
すると、前方からすっと手が伸びた。
お読みいただきありがとうございました。




