第14節『実技試験その②』
どうも、もんたです。
ソラリアさんは再び的のほうを向くと、今度は両手を前に伸ばした。
魔力をぐっと練り上げ、両のてのひらの前に赤い魔方陣を展開する。
あれは・・・
『我、希う、灼熱の力!』
「ち、ちょっと!ソラリア様!?」
力強い詠唱にレイさんはびっくりした様子で声を上げる。
ただこの魔法は邪魔しちゃダメだ。
レイさんも気づいているのかそれ以上の声はかけない。
ソラリアさんがやろうとしているのは火属性の中級魔法。
初級魔法と違って詠唱が必要になるし、もちろん使う魔力や集中力も全然ちがう。
少し前に僕が水の玉を集中切らして空から落として濡れちゃったけど、当然今回はそんなことじゃすまない。
準備してるのは火の玉。
集中力切らして手元で爆発しようものならソラリアさんは大けがだ。
試験を一緒に受けている周りの子の中にも気づいた人がいるみたい。
ざわざわと声が大きくなってきた。
ソラリアさんはそんな声も聞こえていないかのようにしっかりと集中できてる。
これなら大丈夫…かな?
ソラリアさんの足元に赤い魔法陣が広がる。
魔力が高まり、スカートがはためく。
離れているのにこっちにもじんわりと熱が伝わってくる。
『赤熱の力!灼熱の双球!我が魔を以ってして焼き払い、撃滅せよ!』
「打ち砕いて!……≪ジェミファイア≫!!!」
「「「おおっ!?」」」
ソラリアさんの両手の先から発射された2発の火の玉が迷うことなくまっすぐと的へ向かって飛んでいく。
弾は先ほどの《ファイアボール》よりも二回りも大きく、熱量も当然上。
思っていた以上の圧力だったのか、的側にいた係りの人が慌てて離れていくのが見える。
ドッ!!
ドゴォォォォォォォォオオオン!!!
とてつもない爆発音をあげてあっという間に着弾。
爆発の衝撃で砂ぼこりが舞って目を開けてられない。
しかも熱風のおまけつき。
僕らよりも近くにいるはずのソラリアさんは大丈夫か!?
何とか目を開けられるようになった時、目の前に衝撃の光景が広がっていた。
合計3発もの火の玉を受け止めた的はその時点でボロボロになってしまっていた。
ソラリアさんは魔力量が多いし、同世代の使う魔法に比べれば威力も高いもんな。
元は赤い塗料で印がつけられていたけど、遠めで見ても真っ黒だった。
そんな的もソラリアさんの≪ジェミファイア≫を受けて木っ端みじん。
的がたっていた場所は真っ黒に焦げ付いていて、今も煙をはいている。
ざわざわとする中、離れていた係りの人が戻ってきて木の板を掲げた。
木の板は・・・二重丸が二回。
中心には当たってなかったみたい。
実際本当にあたってなかったかはわかんない。
あんなの近くで見たいと思わないし、受けてみたいだなんてもっと思わない。
結果を受けて少しソラリアさんの肩が下がった気がする。
やっぱりショックだったんだろうか。
それでも5発全弾命中は凄いんじゃないかな?
僕が分かるだけならミンクとソラリアさんの二人だけだ。
・・・エルフの子が全弾当ててるかもしれないな。
ボーっとしてる場合じゃなかったや。
「は、はい!これにてソラリア様の遠当ては終了となります。全弾命中、うち2発が中央ですね。素晴らしい結果です。最後の魔法は…中級魔法でしたが、しっかりと制御出来ていたのは流石としか言い様がありませんね。お疲れ様でした。」
「ふぅ・・・ありがとうございます。」
ぺこっとお辞儀をしてこちらへ戻ってくる。
目が合うとにこっと笑ってこちらへ駆け寄ってこうようとするが、残念なことに同じグループの女の子たちに先に囲まれてしまった。
「素晴らしいですわソラリア様!!」
「流石でございます!」
「あ、あの…。」
「先ほどの魔法は何ですの!?」
「ええ!令嬢に相応しい魔法でしたわ!!」
「あ、ありがとうございます。で、ですが…」
……。
これは当分つかまりっぱなしだろうな。
「次は…マルクさん!前に来てください!」
「あ、はい。」
「おっ、がんばれよ!」
「うん。」
名前が呼ばれてしまった。
本当はソラリアさんに一声かけてから行きたかったんだけど仕方ない。
少しへこんでるみたいだったから話したかったんだけどな…。
あの様子じゃまだ声はかけられないだろうし。
わちゃわちゃとしているソラリアさんの周囲をよけて前へ。
「マルクです。」
「はい。えっと、弓矢と魔法どちらを使いますか?」
「魔法でやります。初級魔法じゃないといけないわけではないですよね?」
「え?あ、はい。もし今みたいに壊れちゃっても取り換えるだけなので。いや、まぁ、壊れないに越したことはないんですよ?」
苦笑いを浮かべながらレイさんが指さす方を見てみると、ちょうど的の交換が済んだところみたいで、男性が飛び散った破片を回収して離れていくのが見えた。
「それはそうですよね…。さっきはびっくりしました。」
「ええ。私もです。マルクさん、ちなみに属性は何を?火属性出なければ助かるんですけど…。」
「あ、火属性は苦手なので使いません。」
さてどうしようかな。
氷でやると間違いなく的を壊す気がするし…。
あぁ、水でやればいっか。
《アイシクルアロー》っぽく形を作るとして、《水蛇》の時みたいに水から蛇じゃなくて矢を作る感じで…。
うん、うまくいくんじゃないかな?
「水属性でやります。」
「水、ですか?」
「ダメでしょうか?」
「いえ、ダメじゃないんですが…。水属性の魔法となると、《ウォータボール》ですよね?水だと当たりはずれはともかく、どこに当たったかが判断難しいので…。」
なるほど。
確かに、的が水浸しになるだけで分かりにくいのか。
それなら少し魔力を強めに込めて矢を作ればいいかな?
的がへこんだりとかすればどこに当たったかとかわかると思うし。
「別の魔法を使うので、多分平気だと思います。」
「べ、別の魔法?」
「はい。それじゃあ始めますね。」
「え?あ、えっと、はい。ど、どうぞ!」
首を傾げながらレイさんが数歩下がる。
なんか変なこと言っただろうか。
距離をとったのを確認して、さっそく試験はじめだ。
お読みいただきありがとうございます。
福岡、熊本、しっかり雨続きでございます。
熊本はなおさら。
皆様お気を付けを…




