第12節『試験その⑤』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それではどうぞ。
「お待たせしました。それでは実技試験の会場へ向かいましょう。ついてきてくださいね。」
筆記試験の時と同じようにレイさんに連れられて学園内を歩いていく。
時々教室に出たり入ったりしている団体をみかけたから、きっとその子どもたちも試験をうけてるんだろう。
明らかに大人の出入りのある教室もあったけど…
採点でもしてるのかな?
「そうだ、バックス。」
「ん?」
「年下のきょうだいとかいるの?」
「ああ。妹が一人。二つ違いだったか?どうした、急に。」
「いや、面倒見がいいなぁと思ってさ。」
「はぁ?一体どこ見てそう思ったんだよ。…まぁ面倒見はいい方だと思ってんよ。妹のこともそうだし、家の近所にはもっと小さいガキもいるからな。」
「俺の家の近くは物作りしてるとこが多いから作業中家の中に子どもいると危なかったりするんだよ。だから子守がてら一緒に遊んだりすることは多かったかな。」
「なるほどね。」
「マルクはどうなんだ?きょうだいとか歳の近い子どもとかさ。」
「きょうだいはいない…かな?歳の近い友だちとかもいないし…。いや、まぁともだちはいるけど…。」
友だちはスライムと狼です、とは言えないな…
ソラリアさんも友だちというような仲良さじゃないし。
ギルドとかで話す人はいるけど、みんな年上だしなぁ。
尻すぼみに消えていった僕の声に、バックスは不思議そうに首をかしげる。
「なんで疑問形なんだ?」
「僕の両親はね、ぼ「はい!到着です!!」
おっと、なんてタイミングなんだろうか。
正直話しにくい内容ではあったけど、そこに関してもシャンドラさんたちと決めた設定があるので乗り切る自信はあった。
まぁ変に嘘重ねるのもよくはないし、しゃべらなくていいならいいかな。
幸い、バックスの注意もしゃべり始めたレイさんの方に向いている。
連れてこられた建物は結構な大きさで、筆記試験をした建物は3階建てだったけど、この建物は2階分くらいだろうか。
教室のある建物は赤茶色のレンガで出来た綺麗な建物だったけど、この建物は窓以外は全面灰色。
石で出来てるみたい。
大きめな扉の両脇に一人ずつ鎧を身に着けた兵士が立っている。
試験だし、出入りを確認してるのかな?
でも筆記試験の建物にはいなかったような。
「この建物は修練場と呼ばれていまして、入学された際には実技の授業をこちらで実施することになります。魔法も、武技もどちらもですね。内部には強力な魔力壁が施されているのでそう簡単には壊れません。緊急時の避難所としても採用されています。早速中にはいっちゃいましょう。衛兵さん、よろしいですか?」
「はい。えーっと、係員のレイさんですね。念のため、印章を拝見しても?」
「あ、はい。」
レイさんは声をかけてきた兵士さんに腕に着けている印章を見せる。
布で作られた印象は赤色の生地に金色の糸でこまごまと文字が書いてある。
「なぁなぁ、あれだけでいいのかな?あんなの誰でも作れるんじゃないか?」
「うん。僕もそう思ったけど…」
「あぁ、それは心配ない。」
「んあ?」
予期せぬところからの返事にバックスはとぼけた声を出した。
たしか、ミンクと呼ばれたハーフエルフの子と一緒にいた、エルフの男の子だ。
若草色の短く切りそろえられた髪とグレーがかった瞳が目を引く。
一番注目を集めるのはエルフ族特有の長くとがった耳なんだろうけど。
「あれは魔法が編みこまれてるからな。」
「編みこまれ・・・?魔法が?」
「そう。あれはエルフの技術だから人間が分からないのも仕方ない。詳しいことは種族秘だから話せないけど、あれは魔方陣の技術を応用したものなんだ。」
「係員みんな腕に着けてるから簡単そうに見えるけど、実はあれを作るのは難しいんだ。きっと学園長様が作成したんだろう。」
「へぇ・・・。こりゃどうも。」
「あぁ。」
かすかに口元を上げて、エルフの男の子はミンクのそばへ戻っていった。
女の子が見れば見とれちゃうってやつなんだろうか。
同じ組の一部の女の子は彼を目で追ってる。
ミンクは戻ってきた彼に不安げな表情で話しかけていた。
何かあったのかな?
「なぁ、マルク。」
「なに?」
「あいつ、名前なんていうんだ?」
「・・・さぁ。」
颯爽ときて颯爽と去っていくんだもん。
ききそびれちゃったよ。
「バックスさん、マルクさん、置いていかれちゃいますよ?」
そんなことを言ってる間にレイさんたちはさくさく言ってしまっている。
列に話されないように駆け足で向かっていった。
門をくぐると目の前に壁。
外壁と同じ色で暗めだけど、天井に吊るされているランプのおかげで怖いような感じはしない。
左右に広がっている通路をレイさんは迷わず右方向へ。
こっちですよーという声が反響してちょっと面白い。
通路を歩いて一度曲がったところで、奥の方からにぎやかそうな音が聞こえてきた。
徐々に大きくなっていく音にちょっとわくわくしながら、通路を抜けると、
「へ?あれ?広くない?」
「ふっふっふ。良く気付きました。あなたは・・・マルクさんですね。」
「え?あ、はい。」
してやったといわんばかりの声でレイさんが振り向く。
顔もいたずらが成功したときのように嬉しそうだ。
「この修練場には世にも珍しい空間魔法が使われているのです。具体的な中身や技術等はお伝えできませんが、学園長の力によって、だいたい本来の広さの2倍から3倍くらいの面積になっています。さらに、防御魔法も組み込まれているのでちょっとやそっとじゃ壊れない、魔法や武術の修練にぴったりな空間となっているわけです。当然外壁にも防御魔法が施されています!」
「は、はぁ・・・凄いですね。」
「それはもう!これを語りだしてしまうと大変なことになるので割愛させてもらいますが、とっても凄いことなのです!さぁさぁ、そんな凄いところで皆さんには実技試験を行っていただきます。こちらへ来てください。」
修練上には木の柵で一定区画ごとに区切られていて、手前から順に同じように試験が始まっていた。
空いている一区画に案内された僕たちは赤い線で囲まれている中に入るよう指示される。
試験を受ける人以外の待機スペースらしい。
その正面にある黄色い丸の中に立って、30メートルほど先にある的に攻撃を当てる、と。
魔法が使えない人は弓矢や投擲で当てればいいらしい。
・・・この距離は投擲で狙うようなものじゃない気もするけど。
もしこの遠当ての試験がふるわなくとも、近接武器をもっての試験もあるらしいので大丈夫。
そもそも冒険者や騎士志望の人以外はこの手の実技試験は無いらしい。
元から別のグループに分けられていて、別の部屋で各々の志望にあった試験を受けているんだって。
ってことはバックスは冒険者コースにも志願してるんだろうか。
鍛冶屋に戦闘技術はいらないだろうし・・・
修練場の右半分が遠当て、左半分が剣や体術の試験場となっているようで、背中合わせになっていることもあり、後方から金属同士のぶつかる音が絶え間なく聞こえてくる。
遠当てで使われる的には中心、中心付近、その他、とポイントが割り振られていて、合計点をチェックするようになっている。
それぞれ、命中すると、丸、二重丸、二重線が記載された木の板を掲げて教えてくれるらしい。
「弓矢を使用する場合は、こちらの籠に入っているものを使ってください。兵団の方たちが手入れしているものですから安心して使ってくださいね。円の中に入って、準備が出来たらなんでも良いので合図をください。始めます、とかはい、とか。」
「あちら側に係りの者が居ますので当たり外れは間違いなく確認できます。当人たちは防御壁をはっていますので矢とか魔法があたることはありません。質問があるかたは居ますか?」
「制限時間とかは・・・?」
「特にありませんが・・・あまり長いようであれば急かしちゃいます。次の試験もありますし、他の班も続々とこちらの試験会場に来ますので、ずっとここにいるわけにはいきませんから。他にご質問は?」
「魔法の制限はあるんですか?属性とか・・・」
「属性も等級も特にありません。ただ、できれば初級魔法が好ましいです。簡単ですし、当たり外れが確認しやすいので。それにここで魔法を無理して使って疲れちゃうと、次の試験で十分な力を発揮できないと思いますから。他には?」
「え、えっと・・・」
その後もいくつか質問とレイさんの回答が続き……
いざ試験開始だ。
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