第10節『試験その③』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それでは、どうぞ。
「ああ?・・・ちゃんと聞いてないのか?」
ぽかんとした後、にやっと笑うマットさん。
心なしか嬉しそうなのが納得いかない。
確かに、ソラリアさんの従者って設定でいこうと決まったとき、
「本当かい?よし!これで当分安心だね!セバス、上の調整だけですみそうだぞ!」
「はい。大変宜しいことかと存じます。マルク様、お嬢様をなにとぞよろしくお願いいたしますね。」
とものすごく嬉しそうにしていたけど。
それをマットさんに話すと、堪えきれなくなったのか大笑いし始めてしまった。
「がははははは!!!そりゃ完全にやられてんな!」
「えっ!?よろしくって意味だけじゃないんですか!?」
「くくくっ・・・違う違う。シャンドラ様の言った「上の調整」ってのは親同士の調整って意味だろう。つまりは、だ。」
「マルク君が従者になったことで、こどもからの不用意なアプローチはブロックできる。となれば後は親から来る結婚しろだ見合いをしろだっていう煩いアプローチだけ裁けばいい。こういう話は子どもからのアプローチを避けるのが一番難しいからその手間が要らなくなったって大喜びしてたのさ。」
「なん・・・」
マットさんに言われたように、良いようにしてやられたわけか。
それでいて僕に目に見えるデメリットがないっていうのがまたずるいな。
お世話になってるうえで断れるわけもないし。
「まぁ、もう一つも狙いだろうけどな。」
「え?」
「マルクさーん!そろそろ広場へ行かないと時間がー!」
「いや。それよりもほれ、お嬢様がお呼びだ。呼び止めて悪かったな。」
最後、マットさんは何が狙いだって言いたかったんだろう。
結局聞き出せないままマットさんたちと別れ、三人で広場へ向かった。
広場は学園の建物をバックにお立ち台が用意されていて、その後方にはシャンドラさんが座っていた。
きっとあれが観覧席?ってやつなんだろう。
良く見れば座っているのは高そうな服や装飾品を身につけた人ばかり。
広場自体は入学希望者であふれかえっていて、特に列とかはないようだ。
少々時間ぎりぎりでついてしまったため、僕らは後方でそのまま控えておくことにした。
少しだけしゃべっていると開始時間になったのかお立ち台のうえに誰かが上るのが見えた。
『えー。えー。皆さん、聞こえていますか?』
大声ださないと届かないような位置に居るはずなのに、まるで真横にいるように声が聞こえる。
僕がびっくりしてキョロキョロしているとソラリアさんがこそっと教えてくれた。
「これはですね、あそこに立っている人が持っている魔道具のおかげなんです。」
「魔道具?」
「はい。マイク、というものでそれに向かって話しかけると声を大きくするというものがあるんです。ただそれだけだとただ前から声が聞こえるだけなので、あの横にある街灯につけられた丸い玉が見えますか?あれはスピーカーというもので、マイクに話しかけた声を遠くまで届けることができる魔道具なのです。つまり、マイクに話しかけると、あのスピーカーから声が聞こえてくるようになっているので、まるですぐそばに居るみたいに聞こえるんですよ。」
「はぁ・・・すごいなぁ。ソラリア様は物知りですね。」
「そ、そんな。た、たいしたことじゃないですよっ。」
「マルク、イチャイチャすんのもいいけどさ、式典始まるぜ。」
「いっ!?」
「そそそ、そんなことしてません!!」
「分かりました分かりました~。ほら、前。注目しましょ。」
呆れた様子で注意を促すバックス。
そのまま前を向くと、丁度シャンドラさんが壇へあがったところだった。
『んんっ。良いかな?・・・うん。やぁみんな。ここトーカの街及びフリオニール領を統治しているフリオニール・シャンドラだ。知っている人も多いかとは思うけどね。さて、今日は学園の入学試験に集まってくれてありがとうと言っておこう。細かい話は学長からあると思うので割愛させてもらう。』
『君たちはいわば卵だ。雌鳥が産んだばかりの。これから試験に合格し、この学園で各々が知識と力を付け、立派に巣立って言ってくれることを期待している。僕も、この街を治める領主として応援するし、一人の親としても応援したいと思っている。僕も娘が居るのでね。知っているものも居るだろうが、今日君たちと同じように僕の娘も試験を受ける。領主の娘だからといって優遇されることはないとここで君たちに宣言しておこう。』
『僕は不正を許さない。もし、万が一、試験で不正を行い、君たちの努力を無駄にしようとするものが現れたのなら、僕が持つ力の全てを使ってでもその者を排除しよう。』
厳しい表情で言い切ったシャンドラさんは会場をぐるっと見渡した。
『と、言うわけでみんなには安心して試験を受けて欲しい。ぜひとも持てる力全てを出し切ってくれ。なお、試験中には当領の守備の要である近衛騎士団を配置しているから、安全面でも心配はいらないよ。以上、君たちの健闘を祈る。』
挨拶を終えたシャンドラさんは拍手の中降壇する。
入れ替わりで上がってきたのは・・・エルフだった。
拍手が一瞬で鳴り止む。
会場全体が息を呑んだ。
聞こえてくるのは風の音と、スピーカーから聞こえる静かな息遣い。
頭の後ろで一縛りにまとめてある長い白髪が光を反射してキラキラと光る。
金糸で意匠の施された淡い緑色のワンピースから伸びる真っ白な手足は作り物のように思えるくらいだった。
「相変わらず、お美しい方ですね・・・。」
「ソラリア様、ご存知なんですか?」
「はい。有名な方ですよ。お名前は――」
『入学希望の皆さん、初めまして。私は当学園の学園長を務めております、リリアンテーヌ・ルイエ・ラムサロメと申します。長い名前ですし、「リリアン学長」と気軽に呼んでくださいまし。』
『ご機嫌はいかがかしら。体調は整えてらっしゃいましたか?本日は皆様が待ちに待った入学試験の日。緊張されているかとは思いますが、シャンドラ様が仰ったように全力で試験に臨んでいただけるよう期待しております。わたくしも時折、試験会場へ足を運ばせていただきますので、その際は皆様の雄姿を是非とも見せてくださいね。』
にこっと笑うと、どこからともなくため息が漏れる。
『そもそも、この学園の存在意義とは、才覚あふれる若者を育成することで、私たちの住むここサドニア王国に更なる発展をもたらそうというものです。実際、今王国、または各領地を治めている人員の多くは学園の卒業生となっています。シャンドラ様も学園の卒業生でいらっしゃいますよ。シャンドラ様のような優秀な人材を育て上げるべく、学園では専門技術に特化した教育体制が整っています。これは他の街にあるどの学園についても同じではありますが。特に、トーカ分校の特色は全コース共通の魔法の授業、こちらに優秀な教員が控えていることです。各人員のことについては入学後のお楽しみ、ということにしておきます。私も一魔法使い、魔道師として自慢できる人員を揃えています。もちろんその人員を集めるのに様々な方のお力添えがあったからだとここで明言しておきましょう。』
『さてさて、あまり長い話をしていると怒られますし、皆さんを疲れさせてしまうだけですので、これくらいにしておきましょう。最後に今日の流れを改めてお伝えいたします。まずはこの後筆記試験。王国の歴史や一般常識などを問う簡単なものです。それが終われば次は実技。魔法や武技の腕前を見せていただきます。それにて試験は終了。二日後にこの広場にて合格者を発表します。なお試験はどのコースを選択されていようと一律の試験ですので、みな一緒に受けることが出来ます。お知り合いがいらっしゃるのであれば、ご一緒に試験を受けられるようにすると良いでしょう。私の挨拶が終わり次第係りの者が案内します。試験中はその者の指示に従ってくださいね。指示に従えない方、不正をした方には、きつーいお仕置きが待っていますのでそのつもりで。それでは皆さん、頑張ってくださいね。』
お読みいただきありがとうございました。
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