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竜の薬師  作者: もんた
第2章 学園編-前編
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第6節『心配したんだから』

どうも、もんたです。

 


 ********

 *****





『マルク。』

「ん?」




 目を覚ますと目の前にデフィーがいた。

 ただ、ここはさっきまで僕が寝ていた部屋じゃない。




「デフィー?いつの間に実体化して…それにここは…?」

 僕の問いに表情を変えずにデフィーは淡々と答える。




『ここはマルクの夢の中。ちょっとだけ精霊の力を使わせてもらったの。』

「夢の…中…?」

『そうよ。だからつねってもいたくないの。』




 デフィーは言い終わるや否や僕の頬をぎゅっとひねった。





「ちょっと!いた…くない?」

『だから夢の中って言ったでしょう?信じてくれなかったの?』





 いたずらが成功して喜ぶデフィー。





「い、いや、そうじゃないんだけどさ…。それに精霊の力って?初めて聞いたよ。」

『だって言ってないから。これはちょっと特殊な力だからいつでも何でも使えるわけじゃないしね。あまり教える意味はないもの。そんなことより!』





 横で寝ころんでいたデフィーが起き上がり、僕に馬乗りになる。

 あれ…?



「デフィー?怒ってる?」









 ――プチッ。







 そんな音が聞こえた気がした。

 実際に聞こえたわけじゃない。

 でも、デフィーの雰囲気が何となく変わったのを感じた。




『怒ってるかって?ええそうね、怒ってるわ。とっても。きっとマルクがこれくらいかな~って呑気に思っている以上に怒ってるわよ。自分でもびっくりするくらい。結構長い間生きてきたけどこれほどまでにイライラムカムカするのはいつぶりかしら久しぶりの感覚過ぎて手と魔力制御の感覚が狂っちゃいそう。こんな風に!!』




 満面の笑みを浮かべながら畳みかけるように話し出すデフィー。

 おもむろに僕のおなかをつねるけど、夢の中だし―――








「!!??ちょっ!?い、いたい!痛いよデフィー!待って、なんで!?いたたた!さっき全然痛くなかっ――いたいいたい!」

『痛いわよねーきっと。でもごめんなさいマルクが私がどれくらい怒ってるかわからないように私もマルクがどれくらい痛いのかわからないの。夢の中で痛みとかの感覚がないのもそのせいかしら。あ、この世界って私の魔力で構成されてるから、ちょこっと精密な操作をすれば身体の感覚はつなげるのは出来るんだったわ。ただ、ほんの少し集中して制御しないといけないから感覚が狂ってる今の私には難しいかしら。』




 嘘つけ全力で制御してるよね、コレ。

 話しながらもデフィーは抓ることをやめない。

 抵抗したいんだけど、体が全く動きません。

 恐らく夢の中だからってことでデフィーが動かさないようにしてるんだろう。

 なのに痛みの感覚はあるからたちが悪い。






「いたたたた!!!まって、デフィー!ホントに痛い!抓るのやめて!いぎゃっ!?」




 抓った先をぐりっと捻られへんな声が出た。

 デフィーはにこにことしたまま。

 そのあとも抓る場所をかえ、抓り方を変えと怒りを爆発させたデフィーは、僕が痛すぎでなにも反応できなくなったころにやっと落ち着いた。









『……ねぇ、マルク。』

「はぁ、はぁ……。な、なんですか、デフィー様…」




 息をするのも辛い。

 へその当たりにデフィーがのっているので手の届く範囲はだいたいつねられてきっと赤くなってるはず。あちこちがひりひりしてる。





アレ(・・)はなんだったの?』

「はぁ……。あれって…?」


『ギルドであなたが暴走したときのことよ。何かがあなたの身体を支配して、魔法を使わせようとしてた。』

「何かが…?」

『覚えてないの?』

「うん。その時のことは全く覚えてないんだ。ダリアさんが殴られて、かあさんを馬鹿にされてイラっとして。そのあと気づいたら屋敷のベッドで寝てたんだ。」


『ふぅん…本当に何も覚えてない?思い出そうとしても?』

「そうなんだよね…そこだけ記憶がぽっかりでさ。デフィーは覚えてるの?」

『……』



「デフィー?」





 デフィーは黙りこくってしまった。

 アレ(・・)、って聞いてきたってことは何かしら知ってるんだろうけど…




『覚えていないならいいの。怪我はない?体の具合が悪いとか。』

「起きてすぐは身体がだるかったけど、今は平気かな。あ、抓られたところは今も痛いよ。」




 ここぞとばかりに言い返してみたけれど、どうやら逆効果だったみたい。





『そう…文句を言う余裕があるってことは、まだ反省が足りないのね。こうかしら。』



 ――ギュギュッ!!





「んんぎゃっ!!??」





 思わぬ不意打ちに変な声が出た。

 デフィーは何も言わないまま、僕の胸に顔を押し付ける。




『心配したんだから…。』

「いたたた…デフィー?」

『心配したの。とっても。』


『呼びかけても何も反応しない。実体化して止めようと思ったけれど、さっきも言っていた何か(・・)に邪魔されてまともに魔力を使うことさえできなかった。』





 胸の当たりがじんわりとあたたかくなる。




『マルクの魔力がドンドン減って…。このままいけば死んじゃうかもって…。』


『なのに何もできなくて…。せめてもの抵抗にずっと治癒魔法をかけてたけど間に合わなくて…。』


『あのセバスって人が来てくれなかったらきっとマルク死んでた。…死んじゃってたんだよ?』




 さっきまでが嘘だったように震える声でぽつぽつと話す。





『…セバスって人がマルクを気絶させた時、マルクをのっとってた何か(・・)もいなくなって、自由に魔法が使えるようになった。でもその時にはマルクの身体には魔力がほんの少ししか残ってなくて…。治癒魔法なんてかけたら周りの人間に私がマルクと契約してるってばれちゃうから。だからペンダント越しにちょっとずつ魔力を注ぐしかなかったの。今の今まで私が出てこれなかったのはマルクの回復のために魔力を空っぽにしてたから。マルクが起きてからまたゆっくり魔力を分けて貰ってて、それなりに魔力が溜まったからこうやって出てきたの。』

「そっか…体が動かせないくらいきつかったのはそのせいもあるのかな?」

『そうかも…。ごめんなさい…。』




 服を掴んでる手がギュッと固くなる。






「謝らないでよ。デフィーは僕を守ってくれてたんでしょ?謝るのはこっちのほうだよ。心配かけてごめんね。」

『私はいいの。マルクが無事なら。』

「デフィーのおかげで生きれてるわけでしょ?ありがとう。」

『ねぇ、マルク。』

「ん?」





 顔を上げたデフィーの目と頬がほんのりと紅く染まっている。

 少し言いずらそうに、口を開く。





『…小屋に、戻ろう?』

「…え?」


『街にいても良いことないわ。また今日みたいなことになるかもしれない。確信はないけれど、次アレが来たらマルクは死んじゃうかもしれない。そんなの嫌…。』

「デフィー。」


『マルクだってオルガのこと悪く言われるのは嫌でしょ?あんなに怒っていたんだもの。だから小屋に戻りましょう?オルガとマルクと私と、ヴァルもいたかしら。それにドラコニアだって。グランたちもいる。またのんびり暮らしましょうよ。』

「デフィー。」



『…朝になったらご飯を食べて、訓練をして。森に行って薬草採取や狩りをして、薬を調合して。たまに来るエルフたちにそれを売って。買った材料でまたお菓子も作ってほしいけど。その合間に子狼たちが育っていくのをのんびりとみていましょ。夜になったら一緒に寝てほしいけれど…グリムたちが部屋に入ってくるからゆっくりは寝られないかしら?ほら、何も心配なく暮らせ――』

「デフィー。」





 少し声を張った呼びかけにビクッと身体を震わせる。

 僕がかあさんに叱られていた時のようにゆっくりと顔を上げるデフィー。

 その顔には不安とか心配とかいろんな感情がはいってるなってなんとなくわかった。





「確かに、これまでみたいに暮らせるのはいいなって思うよ。僕も小屋に戻ってかあさんとまた暮らしたいなって思うし。」

『それなら――』


「でも、それは今じゃない。」

『…』


「じいちゃんと修行してる時にも話し合ったでしょ?僕はもっといろんな世界を見てみたい。小屋の生活も楽しいけど、たまにじいちゃんから聞いた旅の話は凄く楽しかった。レオルドさんたちからも話を聞いて、僕もあちこち行ってみたいって思ったんだ。それに、もう一つの目標もあるし。」

『それって…』

「そ。デフィーには話したよね。…僕は本当のお父さんとお母さんの話を聞いてみたいんだ。手掛かりは形見としてもらった【星映しの指輪】だけ。あとはかあさんが僕を拾ったのがトーカの街よりも北側にある平原だったってことくらい。すごく難しいと思うけど、僕を産んだ人がどんな人か気になるじゃん?」

『マルク…それは――』

「待って。…デフィーはきっと僕の本当の親のこと知ってるんだよね?」


『っ!?な、なんでそれを!』

「ふっふっふ。この前ふと思い出したんだ。デフィーと契約したとき、指輪をみてびっくりしてたでしょ?親の名前は?って聞いてきてたし。だからデフィーは本当のお父さんか、お母さんのことを知ってるんだろうって思ったんだ。そのことを言わないのも何か理由があるんだろうって。」

『そ、それは、えっと。』

「いいんだ。別に怒ってないから。」





 申し訳なさそうにうつむいたデフィーの頭をなでる。





「デフィーに聞いちゃえばいいんだろうけど、せっかくこうやって街まで出てきたんだ。自分で調べてみるよ。何かが分かるかもしれないし、それもすごく時間がかかるかもしれない。それでも、自分でやるって決めたから、しっかりやりたいしね。」

『そう…。』

「どうしようも無くなったらデフィーに聞くことにするよ。…騒いで話して疲れちゃったな。まだ魔力も回復してないしそろそろ寝たいんだけど…どうかな?」





 デフィーは少し迷ってから首を縦に振った。




『目を瞑って。私が力を解けばいいだけだから。おやすみ、マルク。』


「うん。おやすみ、デフィー。」




 言われたとおりに目を瞑る。

 ゆっくりと身体の感覚がなくなっていくみたいで少し怖かったけど、最後に頬にあったかいものを感じてなんとなくほっとしたんだ。







およみいただきありがとうございました。

続き読みたいなと思っていただけたらぜひブックマークをお願いいたします!


もうすぐGW、大連休ですね。

僕は10連休ですので親孝行してきます。

更新滞るかもしれませんが、、、ご了承くださいませ。



それでは、今後もよろしくお願いします!


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