第30節『気付き』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それではどうぞ。
合流した場所から小屋までは余裕をもって2時間といったとこかな?
僕一人なら木の上をいくからもっと早く済むけど、ダリアさんたちが一緒だし、何よりシャンドラさんがいるので無理はできない。
そうはいっても道中は恐らくなにもないだろうけど。
斥候役に狼たちを使っているので、ダリアさんが一団を離れる必要がない。
そのため、もし警戒網を越えてきた魔物がいてもダリアさんの魔道具でいち早く見つけることが出来る。
さらに、例え魔物と遭遇しても前衛のレオルドさんとレナさんが注意を引き、パラメさんが魔法でサポートと盤石の布陣だ。
気づけば斥候役の子狼がいつの間にか増えてた。
どうやら近くをうろちょろしてた兄弟を捕まえたみたい。
まぁ警戒の人手(狼手…狼足?)は多くて困らないので放っておく。
いい運動にもなるんじゃないかな。
ずっと警戒しておくのも疲れるし、だからと言って何もしないのも暇なので、ダリアさんたちのことを色々と聞くことが出来た。
「わたしたちのことにゃ?なんでも教えてあげるにゃよ!あ、でも技とかは秘密にゃ!とっておきを残しておくのが冒険者の嗜みってやつにゃ。」
ダリアさんたちのパーティーは、豚人族で双剣使いのレオルドさんをリーダーに盾と剣のオーソドックスな剣士レナさん、狐人族で妖魔師のパラメさん、そして斥候で猫人族のダリアさんの4名で構成されている。
[ボルヘミの双牙]という名前でトーカの街を拠点に活動しているCランクチームだそう。
冒険者としてのランクも4人ともCランクでレオルドさんがそろそろBランクが見えてきた、というレベルらしい。
「冒険者のランク分けはS~Gの8段階に分けられています。登録した初めは誰もがGランク。そこから色々なクエストや依頼、護衛任務なんかを達成していくことで活躍を認められ、ランクが上がるというものです。大体、DやEランク帯が多く、これくらいになればそれなりに生活できると思います。私たちは4人パーティーで装備や宿、食事に各自の荷物にと色々お金がかかりますので、全員Cランクでそこそこ生活が出来てるといった感じでしょうか。」
「別に苦労はしてにゃいからいいにゃ。あんまりランク上げちゃうと次は指名依頼とかで休む暇にゃ~い!って騒ぐことににゃるだろうし。」
「そうだね。勿論例外はあるけど、Aランク以上の冒険者は基本的にいろいろ忙しくなるんだよね。依頼一つとっても面倒な素材集めとか高難易度ダンジョンの探索とか時間とお金がかかるものが増えてくるし。貴族の護衛任務とかもよくあるね。」
シャンドラさんの最後の一言にダリアさんがガッツリとうなだれる。
パラメさんも口を隠しながら笑ってる。
「うへ~。護衛任務なんてアタリハズレが一番大きいし基本的にはやりたくにゃい。シャンドラ様みたいに温厚で優しい人であればいいんにゃけど、欲張りでワガママな商人とか貴族にあたると散々な目にあうにゃ。マルク君は護衛任務につかにゃいことをおススメするにゃ。」
今護衛任務中なんじゃないの?
僕の様子をみて何を言いたいのか察したのか、シャンドラ様が苦笑いしながら声をかける。
「ははは、非常に耳が痛いな。まぁ意地っ張りが多いことは認めるよ。実際多いし、こういってはなんだけれど時折目につくからね。」
そういったシャンドラさんは顔を背けてたけど、一瞬、少しだけ雰囲気が変わっていた。
「同じ貴族として恥ずかしい限りなんだけれど、そんな彼らからすれば僕のようにこうして歩いたリ、気軽に市井の民と話すことの方が信じられないらしいから。僕にはその感覚はわからないし、今後もわかるつもりはないから、無視してるけど。それより、ダリア、護衛任務、次から出すのやめようか?」
ニコニコ(いや、ニヤニヤかな)しながらダリアさんに問いかけるシャンドラさんの顔は輝いてみえた。
「ち、ちがうにゃ!シャンドラ様は別って言ったにゃ!!マルク君、パラメも聞いたにゃ!?」
必死に助けを求めるダリアさん。どうしようかと困っているとパラメさんと目が合った。
(マルク君、ここは助けてはだめです。)
(えっ、でも…)
(放っておいて大丈夫。その方がおもし…んんっ、彼女の反省にもなるでしょう。迂闊なことをあまり言うものではありませんから。)
(はぁ…)
このやり取りが視線を交わすだけで行われたのである。
「ねっ?マルク君!」
「え、えっと…どうでしたっけ、パラメさん…?」
「はて…ただ護衛任務が嫌だと言っていただけではありませんでしたか?今自分が護衛任務中で、更に護衛対象かつ依頼主であるシャンドラ様が目の前にいるのに。」
「にゃ!!!」
頼みの綱も残念ながら寝返りがおき、孤立無援となったダリアさんが必死で言い訳するのをシャンドラさんがのらりくらりとかわすのをパラメさんとしばし見ているのだった。
…ダリアさん、ごめん…
「マルク君、うちのダリアがすまないな…いつもあんな感じなので許してくれ。」
ぎゃいぎゃい騒ぎをながめていると、レオさんが話しかけてきた。
「あ、いえ、大丈夫です。普段こんなに多くの人に囲まれることが無いので少しびっくりしてて…」
「そうなのか。オリビア氏…本当の名前はオルガ氏だったか。…あぁ、このことは決して言わないので安心してくれ。そのオルガ氏の小屋では二人で?」
「はい。あ、えっとかあさんの使い魔であるスライムとか、一緒にいた狼の家族とかがいるので賑やかなのは間違いないですけど。」
「人としてはいないということだものな。であれば俺が豚人族なのに驚いたのもうなずける。亜人を見たのはダリアが初めてなんだっけか。」
「そうですね。たまに小屋に行商で人がくるんですけど、その時もエルフばかりなので。」
レオさんが思案顔になる。
「行商ねぇ…大森林をうろうろするなら、確かにエルフみたいな森に精通している種族でないと厳しいか。行商人はオルガ氏の回復薬を買っていく感じかい?」
「そうです。基本はかあさんの回復薬で、後は狩りの時にとっておいた魔物や動物の毛皮みたいな素材とか保存食とかです。ここ2~3年は僕の作った回復薬も買って行ってくれますけど。」
「ほぉ。マルク君も調合を?どんな薬が作れるんだ?」
「基本的な薬は問題ないです。回復薬に強壮薬、解毒、解麻痺類の薬も作れますし、品質も通常~高品質くらいで完成させられるので、しっかり買い取ってもらえてます。相場っていうんですかね、分からないですけど、かあさんが何も言わないしいいのかなって。」
品質の話でレオさんの目がテンになる。
この人表情豊かだな。
「…マ、マルク君、高品質の回復薬が作れるのか…?」
「確率的にはだいたい3割位ですし、まだまだです。かあさんの場合6割は安定して高品質、そこから最高品質とか作ったりするのでどうやったらそこまでいけるのかって色々研究中なんです。今のところ触媒代わりに普通の水ではなくて魔力をたっぷりと込めた水を使えば、比較的品質の高い薬が出来ることはわかって来たんですけど…って、すいませんこんな話をしてもわからないですよね。」
「お、おう…」
ついつい熱が入りかけてしまった。
レオさんも反応に困ってるし。
やってしまった。
「マルク君、レオが困ってるのはマルク君が暴走しかけたことじゃにゃいにゃ。」
「えっ?」
いつのまにか言い争いを終えていたダリアさんが肩をたたきながら話しかけてきた。
「レオがびっくりしたのは、マルク君が高品質の回復薬を作れるって言ったからにゃよ。」
「えっ…?」
高品質の薬ってそんなに驚かれるようなもの?
かあさんはばんばん作っているので、正直全く有難みがない。
「マルク君、高品質の回復薬を作ることが出来る薬師は街なかでも10数年の経験を積んだような人ばかりなんだよ。トーカの街には数人しかいない。ついでに年齢も高い。トーカ一の腕と呼ばれてる人でやっと5割程度って言ってるんだ。それに比べてマルク君は成人前で既に3割。そのスキルの高さが際立ってるのがわかるかな?比べる相手がオルガさんだからまだまだだって感じていると思うけど、一般的には大人顔負けレベルさ。」
そんな風にシャンドラさんがフォローを入れてくる。
「と、言うわけで、マルク君は簡単に言うととってもすごいにゃ!」
「いや…まぁ、その、なんだ。「すごい」じゃ済まない位にはびっくりなんだが。」
ふわっとしたダリアさんに苦笑で返すレオさん。
あら、僕って実は「普通」じゃない??
お読みいただきありがとうございます。
ついに気づきました。主人公。
そう、君は少し優秀が過ぎています。
今後もおたのしみに!




