第24節『修行本番』
どうも、もんたです。
胃腸炎?っぽいものにかかり一週間ダウンしていました。
トイレに籠りまくっていたので、ずいぶんと仲良くなりました。
まだまだ寒いシーズンですので、みなさんも体調管理にはお気を付けください。
それでは、どうぞ。
僕がじいちゃんの≪威圧≫を受け、初めて倒れた日からあっという間に数か月が経った。
いまのところ、じいちゃんの上手い調節のおかげでデフィーとの約束通り一度も気絶はしてない。
気絶はしてないだけで、魔力の使い過ぎでちょこちょこふらふらになっていたことは何度もあるけど。
どうしても熱中すると周りの音を完全にシャットアウトしちゃうから呼びかけとかも聞こえないんだよな。
魔力の残量とかも気にせずに作業しちゃうので、「あ、なんかぼーっとしてきたなぁ」で作業をとめたときはピンチだった、なんてこともよくある。
デフィーと契約してからはデフィーが水をかけたり目をふさいだりとあらゆる手を使って止めようとしてくれるので助かってたんだけど、この修行中は自分の限界量を高めることも課題なので、ぎりぎりまで我慢してもらっている。
その代わりにあの日に取り決めた更に追加で条件が付いたのは言うまでもない。
修行開始から数か月経った今、最近は朝おきて食事のしたくをしたらデフィー用のクッキーを焼く、というのがいつもの流れになってきた。
朝食を食べるのは僕だけ。
じいちゃんは朝飲み物だけで食事をとらないし、デフィーは精霊なので食事はそもそも不要。
まぁ、朝起きてこないことの方が多い。
そのため朝は自分の食事分用意できれば終わりなので、余った時間でクッキーを焼いている。
食事は不要といっても実体化すれば身体の機能は人間を再現しているので、味を感じることができる。
『だって人の作るものは美味しいものが多いですから!楽しまないと!!』
と本人談。
だから食べる飲むは問題なくできる、と。
便利なことで。
母さんに焼き方を習っておいてよかったよ本当に。
デフィーも僕が焼いてるのが口に合わないのか、はたまた「そんなに食べてばっかりだと太るよ」とふざけて言ったのが響いたのかわからないけど、食べる量が減ったので、一度焼けば2~3日は持つようになっている。
魔法の修行は一応、順調だとおもう。
この数か月で《威圧》は十分に使えるようになった。
対人間で練習する機会がないので正直どれくらい使えるのかわからないのが少し不安ではあるけれど、魔物相手なら問題ない。
小屋の近くに出てくるオークやゴブリン、フォレストウルフなどは勿論、【竜の尾根】の裾野辺りにいるリザードマンとかも制圧できるようになった。
じいちゃんはリザードマンを制圧できれば人間相手に使う時は手を抜けと言っていたので、大丈夫なんだろう。
リザードマンの魔物としてのランクは単体でCランク、3体以上でBランクと非常に強力な部類に入る。
じいちゃんは、「アホトカゲ」とひどい良いようだけど、それはじいちゃんが本物のドラゴンだから言える台詞で、本来は中堅以上の冒険者が相手取るような魔物だ。
それを制圧出来るのであれば、自衛の手段としては十分というのもわかる。
《威圧》以外にも、竜の魔法もどきをいくつか教わった。
身に着いたものもあるけど、大半は絶賛修行中。
じいちゃんに教わっているのは攻撃用というよりは身を守るために使う魔法が多め。
というか《竜魔法》には攻撃系統のものが少ないらしい。
有名なものだとブレスになるんだけど、さすがにあれは無理。
人間の口からブレスをふこうものなら相当奇異の目で見られるだろうし。
火属性の魔法に手や杖の先から炎を噴射する《フレイム》という魔法があるので、それとごまかすことはできるだろうけど…
じいちゃんのドラゴンは希少な聖属性で、ブレスも聖属性。
これは光属性の上位属性にあたり、高位の神官でもないと本来使えない。
聖属性のフレイムなんて使えば間違いなく大変なことになる。
元々、この修行は攻撃魔法を訓練するためだったけど、そちらは通常の魔法の訓練で習得中。
じいちゃんは魔法の適性が広く、ほとんどに適性があるって言ってる。
ずるい。
ただ、運が良いことに氷系統の魔法が使い慣れているってことで僕としてはありがたかった。
水と土に適性のある僕は氷系統の魔法が使えるし、デフィーの魔力も相まって今後よく使う魔法になるのは間違いないからだ。
氷の矢に盾は勿論、剣やナイフを造形、それで切りつけたり投げたりと。
氷を地面に這わせて足場を悪くしたり、足そのものを凍らせて動きを封じたり。
空気中の気温を下げて相手を凍えさせるなどなど色んな戦い方を教えてもらった。
正直、近接戦闘よりも魔法や弓矢を使った中遠距離戦の方が得意なので、相性もいい。
「さてさてマルクよ。そろそろ修行も終盤じゃ。進度としては想定の範囲内というところじゃから可もなく、不可もなくといったところか。ただまぁ、世の中の同世代の魔法使いと比べれば十分に力を持っておるから自信を持ってよいぞ。ただし――」
「いばっていいわけではない、でしょ?」
言葉を重ねるように答えをいうと、じいちゃんは満足そうに頷いて、淹れたばかりで少々熱いカップを傾けた。
あ、これかあさんの茶葉だな。
「うむ。わかっておるならばよい。何度となく言ってはおるがの。魔法も道具も、各々が身に付ける技術もすべて、人の倫理、理性の上にあってこそ初めて価値があるものになる。自衛のために身に付けた剣術も己の快楽や怒りにまかせてふるえば、愚かな凶刃へと変わってしまうからの。
いつの時代も悪いのは技術や知恵「そのもの」ではなく、使う人間じゃ。どうやって使うのか、どう応用するのかはすべて人間の手にかかっておる。
魔法も元は暮らしを少しでもよくしようとすることから始まったそんな「技術」の一つ。普通に使うものならばよし。わしらの生活をより円滑に回してくれるじゃろう。
しかし、力の向け先をひとたび誤れば、指先一つ、杖の一振りで幾万の人間の命を奪う兵器に成り下がる。それを悪いこととは言わんが、少なくともそんな使い方をしなくてはいけないような世の中にはなってほしくはない。」
じいちゃんはうつむきがちに話を続ける。
「マルクも知っておる通り、わしももうすでに数百年ほど生きておる。勿論、街中に暮らしておったこともあるからの、人間同士の争いも魔物とも争いも経験した。なまじ知恵がある分、人同士の争いのほうがよっぽど質が悪い。広域殲滅魔法は一瞬で何の罪もない人々の命を刈り取る。普段はその魔法が人の命を紡いでいるというのに。
初めの頃は止めようと躍起になった。使えるコネや伝手を頼ってできるだけ争いが起きないようにと。しかし無駄じゃった。一度くすぶった火種はそう簡単には消えない。消したつもりでも小さな火種は燃え続け、広がり、それに気付いた時には炎に囲まれておった。それを幾度となく繰り返し、人は学ばないのだと悟った。そしてわしは街を離れこの小屋に流れ着いた。」
「そこでかあさんと出会ったんだっけ?」
「いや、オルガと会ったのはもっと前じゃ。わしが元居た国から【竜の尾根】を越えてこちらの国にきたばかりの頃じゃったかな。一緒に街でくらしておったし、街を出る時に着いてきてくれての、今もこうしてご近所様じゃ。昔から面倒見の良い性格じゃったからわしもずいぶん手間をかけさせたかの?わっはっは!!」
昔のことを思い出したのか思い切り笑い出したじいちゃん。
じいちゃんは、ぬるくなってしまったお茶を一気に飲み干して立ち上がった。
「さぁて、しみったれた話はこれで終いじゃ!マルクよ、今日も今日とて修行を始めようか!」
「うん!」
お読みいただきありがとうございます。
体調は回復し、しっかりと忘年会を楽しむことが出来ております。
今年ももうあと少し、やり残したことをきちっとやっておきたい所存です。
こんごも、よろしくお願いします。




