第18節『ゆったりとした日々』
どうも、もんたです。
おまたせしました。
それでは、どうぞ。
「それにしても…この小屋もずいぶんと賑やかになったわね。」
そういってかあさんは嬉しそうにほほ笑む。
「そうだね。僕とかあさんの二人だったのに。今では僕の魔力とクッキーを延々と食べ続けている水精霊とグランたち、それにこれからはグリムもきっと子どもが出来るしね。」
『むぅ…なんか最近マルクから発せられる言葉の棘が痛いです…』
頬を膨らませながら反論してくるデフィー。
しかし、右手にはクッキー。
「それはね、デフィー。誰かさんがそういうことばっかりしてるからだよ。そういえば、デフィーは良いとして、かあさん、ヴァールトは実体化させないの?」
「ええ。ヴァルはそんなに実体化が好きじゃないから。この前みたいに呼べばすんなり出てきてくれるんだけど。それに彼はいつもこの辺りの森を管理してくれているから忙しいのよ。」
「管理?たしかデフィーと契約する時にそんなこと話してたような気がする。でもその時、他にも森を管理する精霊がいるってのも言ってなかったっけ?」
『よく覚えていましたね。もぐもぐ…この付近の森にはビビアという森の精霊がいます。私より数百年程後に生まれた精霊ですね。根っからの怠け者で自分の住処にしている洞からはほとんど出ませんし、管理もスタンピートが起きないようにとか植物が全滅しないようにとか最低限のことしかしません。まぁ、ありのまま、といえば聞こえはいいですけど。』
なるほどね…
森の中で暮らしているだけだと精霊の加護だとか管理だとか言われても正直わからないけど、デフィーが言うほど簡単じゃないと思うんだよなー。
歴史の本とかでも魔物の大量発生で滅んだ国があるとか書いてあるくらいだし、管理も一歩間違えば危ないんだと思う。
そんなことを考えているといつの間にか母さんがいなくなってた。台所を遠目でのぞいてみても姿は見えないし、調合室かな?補充しないととか言っていたし。
そういえば、歴史で思い出したけど、デフィーっていくつくら……
―――なんだ殺気!?
背筋がぞくっとした…
『どうしました?マルク?』
「う、ううん。何でもないよ。そっ、それで、そのビビアって精霊はヴァールトの力を借りて、森の管理をしてるってこと?」
『もぐ…細かく言うと少し違うのですが、今はその認識でいいです。まぁ、精霊として一言言うのであれば、割と管理者となるような精霊は数多くないので一つのエリアに2体とかいてほしくはないんですけどね~。』
「それ自分にも言えることなんじゃない…?」
『ごくっ…はぁ…ふふふ、そこはぬかりありませんよ。先日きちんと管理者としての力を引き継いできました。引き継いだといってもこの森の水源を管理するような力とかなので別に弱体化したりはしませんのでご安心を。
新しい子に力がなじむまでの数か月間は少し水場が荒れるかもしれませんが、森の環境が変わるとか危険なことにはならないのでこっちも問題ないです。もぐもぐ…』
デフィー、クッキー食べすぎなんだけど。
喋りながらもすきを見ては口に運び、手が空けばすぐにクッキーを取りに手を伸ばす。
おかげでテーブルの中央に置いてあるクッキーの山は既に半分以下にまで減っている。
デフィーが我が家に来てからというもの、大量にクッキーを食べるので、毎日のようにかあさんがこれでもかと作り置きをしている。
作ったはしから食べているので作り置きになってない。
材料は元々大量に備蓄していた分があるので、当分心配はいらないはずだけど、、、
この調子でクッキーを消費するのならどこかのタイミングで買い足しておいた方がいい気がするんだよね。
デフィーの大量消費と、かあさんの大量生産のおかげで昼間家の中はクッキーの焼ける甘い匂いが充満してて、夕方くらいからは地下に行けば薬草の匂いが、と少々鼻の利く生き物には住みずらい環境となっている。
シロは気にせずに家の中にいるけれど、グランとグリムはやはりイマイチしっくりこないようで家の外にいることが多くなった。
僕とかあさんはヴァールトの力を借りて、小屋の横に狼たち向けのちょっとした犬小屋(狼小屋?)を用意した。
ヴァールトに比較的熱に強い木を教えてもらい、それをかあさんと魔法で加工し、アドラーとイズマ(スライムね)たちの体液を接着剤として調合したものを使って組み立てた。
風魔法で浮かせたり、土魔法で壁を作ったりと子どもと女性で作ったとは言えないようななかなかの出来になったと思う。
「建てた」とは言えないな。
本職の職人さんたちに怒られるよ。
完成した小屋の中には乾燥させた草や使わなくなった布なんかを敷いているので、フェーレが出産する時はこの小屋になるかな?
小屋の一角にはデフィーが作った魔道具を取り付けて、いつでも水が飲めるようになっている。
空気中になる水分を魔法の力で集めて、水として吐き出すというとっても便利な代物で、朝方に魔力を込めれば一日くらいは十分水が飲める。
ただし、僕くらいの大きさの物でも狼基準の水量でしかなく、人間用となると装置の大きさも必要になる魔力も大きく増えるので気軽に使えるようなものではなさそうだった。
まぁ、水が欲しくなったら魔法で出せばいいんだけど。
「食べすぎだよ…デフィー。太るよ?」
『もごっ!?ゴホッゴホッ!!』
「ちょっ!お茶!お茶飲んで!」
『ゴホゴホッ…はぁ。乙女にいきなりなんてこというんですか!』
「いやいや、一人でどんだけ食べるのさ。もう少ししたらお昼の時間だよ?魔法を使う時以外はほとんどクッキーとか食べてる気がするんだけど…」
『仕方ないのです!オルガの作るクッキーが美味しいのがいけないのです!ほんのりかおるバターに甘さ控えめ、歯ごたえも丁度良く口の中でほろっとくずれる。そこに合わせるこちらのお茶はレモンやオレンジといった柑橘系の香りをうつしてあって、まったりしがちな口の中をリセットしてくれる爽快感!そうなるとまたっ口の中を満たしたくなるという完璧な循環が出来上がっているのです。マルクにはそれがわかりませんか!?』
いきなり立ち上がって熱く語りだした。いや、言いたいことはわかるし、味の感想も正解なんだけど、なんでこうも興奮しているんだろうか。
かあさん、まんざらでもないって顔しないで。
まぁ、立ち上がってもクッキー手放さないから、クッキーへの途方もない愛を感じる。
ただ、いきなり立ち上がるもんだから服の上にのっていた食べかすがぽろぽろと床に落ちているよ、デフィー。
イズマが掃除してくれるからいいとはいえ、お行儀悪いってかあさんに怒られるぞ。
「う、うん。デフィーがかあさんのクッキーを大好きだっているのはわかった。わかったけど、突然立ち上がるとほこりが舞うし、食べかすが床に落ちるから落ち着いて。イズマにお礼を言ってね。」
『あら、イズマちゃん、ごめんなさいね。イズマちゃんもオルガのクッキー美味しいと思いますよね~?これを我慢しろ、なんて言うマルクはひどいと思いませんか?』
なんとイズマを味方にしようとしているのか。
イズマもぷるぷる反応するんじゃない。
というかイズマ性別女の子だったのか?
「イズマちゃん」って呼んでるし。
僕は魔物と話せないからわかんないんだよなぁ。
そうなるとアドラーの性別も気になるけど、もう10年も一緒にいて今さらってなるから聞きにくい。
「相変わらずここは賑やかじゃのう。」
聞きなれた声にふり返るとじいちゃんがにこにこしながら入ってきた。
後ろにはグリムとフェーレが付き添っている。
「じいちゃん。いらっしゃい。今日は早めに来たんだね?」
「うむ。今日はちといつもと違う場所で魔法の訓練をしようと思っての。オルガは台所かの?」
「ううん、今は調合室にいるよ。この前シャンドラさんに結構な数売ったから減った分補充しとくって言ってた。そろそろ上がってくるんじゃないかな?」
「そうか。それなら急かすのも良くないしここで待たせてもらおうかの。マルク、お茶をもらっても良いか?」
「うん。」
お読みいただきありがとうございます。
本日はまったり日常回。
書いててほっこりします。笑




