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竜の薬師  作者: もんた
第1章 始まり
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11/118

第8節『じいちゃんの来訪』

どうも、もんたです。

三連休ですが、少し更新が滞りそうです。

お出かけの連続でして…(´・ω・`)

まぁ、いいか。



それでは、どうぞ。

 **************************

 *****************

 **********

 *****












「……ク……ね……」


 ――声が、聞こえる。








「……ルク……て……!」


 ――なんて言ってるんだろう。何か言ってる。









「……ルク……マルク、マルク!お願い!起きて!マルク!!」


 ――かあさん…?







「んっ…」


「っ!!マルク!!良かった…!」

「か、さん…」

「えぇ、聞こえてる。聞こえているわ、よかった…マルク。あなたたち、悪いんだけれど、そのままこちらに運んでくれるかしら。…そう、いい子ね。」





 母さんの声が聞こえる。

 落ち着く、懐かしいにおいがする。

 ぼんやりとした視界に家の床がうつっている。腕を動かそうとしてるんだけど、反応なし。

 身体の感覚がまるでない。

 なんとか動こうとあがいているうちに、身体がふわっと浮いた。

 持ち上げられたみたい。

 あぁ、母さんの匂いだ。


 …あれ?でもおかしいな。

 僕は森の中にいたはず。

 確か狼とバサラベアを倒し…?

 あ、新しい魔法を試して倒れたんだっけ。

 身体を柔らかいものが包み込む。

 これは僕の布団のにおいだ。

 全然、思考がまとまらず、僕はどこからともなくやってきた眠気に抗えないまま、また意識を手放した。











 結局、僕が起きたのは次の日の朝。

 起きた時、母さんが僕のベッドの横に座って手を握っていた。

 僕が起きたのに気付いた母さんに泣きながら抱きしめられ、直後にものすごい剣幕で怒られた。


 どうやら、バサラベアを無事倒して気絶していた僕は、狼たちに背負われて小屋まで到着。

 僕と魔物の気配を感じて飛び出してきた母さんがそれを目撃。

 一瞬パニックになったものの、なんとか落ち着き、急ぎ僕をベッドに寝かせ、処置をした後、パパ狼と従魔契約を結んで意思疎通を図ることで全容を把握したらしい。

 母さんの聞き取り調査によると、狼たちは実際に家族で、パパ、ママ、息子となっており、なんと【竜の尾根】を越えてきたらしい。



 彼らによれば、人間たちの戦争の影響で本来の生息地が荒らされたため、東へ東へと逃げることになったらしい。

 当然逃げた先には縄張りとしている魔物たちが元々住んでいて落ち着く場を探している間に山を越え、この大森林へと逃げ込んだ、と。

 しかし、この森でも魔物とのたたかいが続き、疲弊していたところにバサラベアとの遭遇。以降は僕との戦闘ということらしい。

 ちなみに狼たちはドルイドウルフと呼ばれる種で、狼系の魔物の中でも知能が高く魔法も使え、上位個体になると高威力の魔法も平気で使えるらしい。

 戦いではパパ狼のみが使用していたが、当然ママ狼も子狼も使えるらしい。

 ところで、何故僕が気絶してしまったかと言うと、母さん曰く、魔力の使い過ぎによる【魔渇症】という病気の一種のせいだったらしい。

 自分の許容範囲以上、もしくはそれに近いだけの魔力を使用することでめまいや頭痛、意識喪失、ひどい時には記憶障害や下手するとそのまま死亡してしまうようなもので、今回の僕はひどいバージョン。

 しかも、本当に魔力が空っぽだったらしくて、もう1~2時間でも処置が遅れれば、何か後遺症が残って最悪魔法が一生使えなくなるところだったって。

 目覚めた時、母さんにすごい怒られたけど、また改めて怒られた。

 しかも、次やったらわざと放置して魔法を使えなくしてやるって脅されました。





「なるほどね…で、この一家?はどうしてまだいるの?」

「マルクに助けられたから恩返しがしたいそうよ。可能なら従魔になりたいとまで言っていたわ。マルクは《従魔術》が使えないから、それは無理だって言っておいたけれど。それを伝えた時、三匹揃って尻尾が垂れ下がったのは可愛かったわ。」

「恩返し、ねぇ…ひとまず、森に行くとき護衛としてついてきてもらうことにするよ。意思疎通できないのは不便だけど。」

「そうね。アドラーよりは安心かしら。」




 母さんの言葉を聞いて、おとなしくお座りしている三匹の横にいたアドラーが激しく身体を揺らした。

 きっと抗議してるんだろうな。

 子狼がなだめるようにアドラーを優しく舐めると、少しだけ揺れが小さくなった。





「…あら、アドラー。あなたではダメって言っているんじゃないのよ。あなたに戦闘は向かないってだけ。マルク、狼たちはあなたの言葉は理解できているみたいだから、指示は出せるわよ。」





 あ、やっぱり言葉わかるんだ。で

 も話せないんじゃなぁ…

 《従魔術》が使えないくらいいいやって思ってたけど、まさかこんなところで不便になるとは…






 ―――《従魔術》とは、本来誰にでも使えるような比較的難易度の低い魔法である。


『初級の属性魔法とスライムを従える《従魔術》が使えなければ魔法の才能はない』


 とまで言われるようなレベルの話なのだ。

 自身の持つ魔力を対象となる魔物の魔力と同調させるように制御する。魔物が自身の魔力を受け入れれば、契約は成功。

 その際に名を名付け、更に知性のある魔物に対しては条件を与えることで正式にその魔物を従えることが出来る。


 逆に魔物が自分の魔力を受け入れなければ勿論契約失敗。

 その際、魔物は自分の体内に入ってきた術者の魔力を攻撃とみなすため、契約とは術者の命の危険を伴うのである。

 しかし、現実的には《従魔術》の失敗によって命を落とすケースは少ない。

 《従魔術》の契約練習として危険度の少ないスライムがあてがわれるためである。

 スライム相手に何度も契約の練習を行い、魔力制御を身に付けた後、次の魔物へとステップアップしていく。

 ただ、マルクの場合、産母であるリリーが上位精霊と契約していたことやその残滓によって【星映しの指輪】に宿る精霊の力によって魔物との契約を邪魔されているのが《従魔術》を習得できない理由だということは知る由もないことであるが―――





 う~ん、どうやって意思疎通をしようか。

 文字だって読めないだろうし。

 でも、ドルイドウルフは頭がいいって話だし、言葉を理解できるなら、文字も覚えられるんじゃないか?


 そう思った僕はおもむろに自分の部屋に戻り、小さい時に母さんと文字の練習に使った石板を用意した。

 この国で使われる文字は合計50個で、その組み合わせで単語が作られている。

 そのため、この石板の文字を覚えられればとりあえずは十分というわけ。






「よし、それじゃあ文字を覚えよう。みんな、よろしくね。」

「「「ガウッ!!」」」

「それにいつまでも狼たち、とかじゃなぁ。名前も考えなくっちゃ。」

「「「ガウガウ!!!」」」





 狼たちは声をそろえてブンブンと尻尾を振りながら答えた。

 子狼に至っては我慢できないのかパパママ狼の周りをぐるぐるとまわって興奮を爆発させている。






「ふふ、頑張るのは良いけれど、まずは晩御飯にしましょう。狼さんも一緒にね。」





 母さんはいつもの優しい顔でそういうとキッチンへ向かっていった。

 その後はいつものように夕食を食べ、母さんはアドラーと調合の時間、僕と狼たちは言葉の勉強の時間となった。

 驚くべきことに翌日の昼頃には狼たちはほとんどの文字を覚えてしまった。

 母さんが従魔契約を結んでいたことで知識の共有が多少できたらしく、そのサポートもあってあっと言う間に簡単な意思疎通ができるようになったのである。

 とはいえ、石板に書かれた文字を一つずつ鼻先や前足で指す必要があるので、少々時間はかかるが。

 結局、狼たちの名前は、パパ狼がグラン、ママ狼がシロ、子狼はグリムに決まった。

 ついでに文字だけだと急ぎの用事が伝えられないから、合図のようなものを決めたらどうかとの母さんのアドバイスに従って簡単なものをいくつかグランたちと決めることにした。

 だいたいの合図も決まり、合図の確認をしたり、じゃれ合ったりしていると狼たちの耳がぴくっと動いた。グランが左足を座っていた僕の太ももに当てる。何か近づいた時の合図だ。





「ガウッ」

「ん?誰か来たね。」

「大丈夫、ドラコニア様よ。」

「えっ?あ、ほんとだ、じいちゃんの気配だね。みんな、大丈夫だよ。僕のじいちゃんだから。」





 そういうと立ち上がっていた三匹は警戒を解いた様子で大人しく伏せて待つことにしたみたい。

 尻尾を身体にぴったりとつけて縮こまっている。

 グリムだけはイマイチ分かってなかったみたいで、玄関の前まで走っていこうとしたけど、シロに首を咥えられて、観念していた。






「久しぶりじゃのぅ、オルガ、マルク。ん?それに…ドルイドウルフか?ずいぶん珍しい魔物を連れておるな。この辺りにはおらんかったと思うが?」

「おかえりなさいませ、ドラコニア様。はい、西国から逃げてきたようです。マルクが森でバサラベアとドルイドウルフたちが戦っていたのを助けたらしく、なついてしまって。」

「ふむ、あの国か…飽きもせずくだらん小競り合いを続けておるからの。お前たちも災難じゃったな。まぁ、山に近づけば強い魔物もおるがこの辺りには大した魔物はおらんからの、お前たちならば問題なかろう。ところでマルク、バサラベアと戦ったのか?」

「え、あ、うん。戦ったって言っても、グランたちがひきつけてる間に魔法で援護してたくらいだよ。最後は魔法で壁を作ってぶつけて気絶させられたからなんとかなっただけで、そのまま僕も気絶しちゃったから。グランたちがいなかったら危なかったし、最後の魔法が効かなかったら死んじゃってたかも。」

「本当に、危ないことだけはしないでと耳にタコができるまで言ったはずだったんですが…ドラコニア様からも言っていただけますか。【魔渇症】にまでかかって肝を冷やしたんですから。」






 くっ、、かあさんの小言が傷をえぐる。反省してちょっとしょげている一方で、グランたちを見ると、「そんなことない、マルクも頑張った!」と言わんばかりにひと吠えして尻尾を振り振りしている。

 可愛い。狼だから顔はりりしいし、サイズも大きいから可愛さのんだけど。





「グラン…?あぁ、その狼の名前か。それより、壁を作って気絶させた、と言ったかの?ヤツらはそれなりに頑丈であるし、初級の防御魔法では爪で粉々になってしまうじゃろう。」

「うん。だから、《アースシェル》とオリジナル魔法の《アースホール》ってやつを合体させて《ダマスカスシェル》って防御魔法をつくったんだ。調合室の壁をイメージしたんだよ。おかげでものすごく頑丈な壁が出来たみたいで、バサラベアの突進も受け止められたんだ。ね、グラン。」

「ガウッ!」






 そういってグランの方を見れば、さっきよりも勢いを増して尻尾が振られている。

 グリムの目が輝いて見えるのは気のせいだろうか。

 すごかったよ、と言ってくれてるみたいで嬉しい。

 駆け寄ってきた三匹とひとしきりじゃれたあと、じいちゃんの方をみたら、目を見開いてフリーズしてる。母さんに至っては顔に手を当ててため息ついてるし。



 …あれ、僕なにか変なことしたかな。





お読みいただきありがとうございました。


少し長めになりました。

ガンガンぶっつづけで書いているので切れ目が少し不自然な場所があります。

申し訳ないですが、その代わり、続編を期待していただけるってことにします。


…いいですよね?

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