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竜の薬師  作者: もんた
第1章 始まり
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第7節『人狼連合vs熊』

どうも、もんたです。

少々体調を崩しました…(´・ω・`)

鼻水がとまりません。

せっかくの三連休でしたがしっかり家にこもっていました。

皆さんも体調にはお気を付けください。



それでは、どうぞ。

 



 「はぁ…わかったよ。一緒にヤツを倒そう。あいつの肉、おいしいらしいから。」




 「美味しい」に反応したな。

 ママ狼の尻尾が揺れたのを見逃さなかった。


 ここからは共同戦線。


 とはいっても勝ち目があるとは言い切れない。

 狼&僕の連合軍が勝つためには、《パライズ》の魔法をいかに有効に使えるかにかかってる。

 《パライズ》の魔法に限らず、状態異常を発生させる魔法は繰り返し使用すると効果時間が短くなり、効きにくくなるというデメリットがある。

 そういった耐性は魔物毎に違うけれど、だいたいどの魔物も2、3回は問題ない。

 何故、麻痺魔法に命運がかかっているかというと、僕が攻撃用の魔法をほとんど使えないからなんだけど…



 そもそも今の生活で攻撃用の魔法を使うことなんてないんだよね。

 森に出ても、魔物なんてゴブリンや虫型のものしかいないし、対処は弓で十分。

 近づかれても護身用にとじいちゃんからもらったダガーで倒せる。

 魔法を使うのは水汲みとか掃除とか生活の中でだからなぁ。

 こういう時のために攻撃魔法を覚えた方がいいだろうな。

 さて、バサラベアはあと数秒で完全に麻痺がとける。

 既に亀みたいな速度でこっちに向かってきているし。

 狼たちは準備OKみたい。

 僕も弓矢を構えて、あとは魔法かな。






 ―――戦闘開始だ!





 「いくよっ!《強化魔法、パワーアップ、ガード、ヘイスト》!!」




 狼たちと僕の身体をぼわっと光が包んだ。

 僕らが飛び出すと同時に、バサラベアも動き出す。

 戦いの始まりはまるで振り出しにもどったようだけど、あっちは麻痺が抜けたばかりで、当然解除後すぐに本調子とはいかない。

 こっちも体力は全快していないとはいえ、傷はふさいだし気力も十分。

 魔法もある。

 油断しなければ、勝てるはず!


 凶戦士状態のバサラベアは体毛も硬くなっているから攻撃が通りにくいかと思ったけど、強化魔法をかけた狼たちの攻撃は…


 効いてる!

 硬化している分は、《パワーアップ》の強化魔法で相殺できてる。

 そのおかげで少しずつだけどダメージは入ってるし、子狼が攻撃に参加してる分さっきよりも手数が多くなって翻弄出来てるな。

 パパ狼がバサラベアの注意を惹きつけているところに後ろから子狼が噛みつく。

 それに反応して後ろを向いたらすぐにパパ狼とママ狼が攻撃。

 特にママ狼が風魔法の《ウインドカット》を使って遠距離からサポートしてるおかげで的を絞らせてない。


 僕も負けてられない!





 「《アイシクルアロー》!!」





 突き出した右手の掌から氷の矢を生み出し、そのまま発射!

 氷の塊は本物の矢のような速度で飛んでいき、バサラベアの脇腹に突き刺さった。

 ひと際大声を上げるバサラベア。

 ただ、こんなもんじゃヤツはとまらないはず。

 狼たちが追撃をしようと一斉にとびかかった。

 ナイス連携!






 「ゴアアアァァ!!!!」

 「ギャウッ!!」





 なっ…!

 バサラベアは飛びつこうとした三匹を両腕を振り回して弾き飛ばすと猛スピードでこっちに突っ込んできた。

 狼たちはそれぞれ吹っ飛ばされて木に当たる鈍い音が森に響いた。

 っ!やばい!

 距離を稼ごうにもバサラベアの方が早くて逃げられない。

 もう少し取っておきたかったけど仕方ない!





 《パライズ》!!





 バサラベアに向けてかざした手が黄色く光ったすぐ後に、目の前に迫っていたバサラベアの動きが止まった。


 あぶな…

 動きが止まっているのを確認して、すぐに狼たちの元へ駆け寄った。

 どうやら《ガード》の魔法がまだ効いていたみたいで音に比べればダメージは軽そうだ。

 念のため、三匹に回復薬をかけて、ついでに強化魔法もかけなおしておく。




 「ふぅ…狼たち、やっぱり逃げよう。これ勝てないよ。」

 「ガルッ!!」

 「ちょっ!!痛い!痛いったら!」





 やっぱり駄目でした。

 ママ狼によって逃げる案は却下された。

 目が「情けないわよ!男でしょ!」と言ってるようで相変わらず怖い。

 どうして逃げるのだめなんだろうか。


 …そこまでして肉食べたいのかな。

 子狼はわかっているのか、わかってないのかママ狼のまねをして噛みついてくる始末。

 パパ狼に関しては我関せずを通そうとそっぽ向いてるし。

 こいつ…




 動きをとめられたっていう気のゆるみのせいだったと思いたい。

 その時の僕らはバサラベアの動きに全く注意を払えていなかった。

 振り返った時には、バサラベアがすぐそこに迫っていた。





 「ちょっ――」

 「ガアアアアァァァッ!!!!」




 思いっきり横なぎに振るわれた腕は、《ガード》をものともしないまま僕と狼たちをまとめて吹き飛ばした。

 魔法で遮る間もなく、そのままの勢いで木々にぶつかる。

 激しい衝撃と鈍い音が森に広がった。







 「ぐっ!!!……ゴホッ………いった…」








 あぁ、これはやばい。

 視界はぼやけてるし、口から血でてるし…

 身体も上手く動かない。

 回復薬を、と思って腰に手をまわしたけどポーチが見つからない。

 もしかして今の衝撃でどっか飛んでいっちゃったかな。

 少しずつはっきりしてきた視界に頼りながら首を動かして周りを見てみると、狼たちも近くで倒れていた。

 お腹が動いてるみたいだから死んではいないみたいだけど、バサラベアの攻撃を受けながら近くで戦って体力の限界だろうか。

 まぁそもそもあの勢いで硬い木に叩きつけられたらダメージもおっきいよね。



 ん?硬い木?

 硬いものにぶつかると痛いよね?

 それってもちろんバサラベアも同じなわけで…





 「ゴォォウ!!!」





 首を動かせばバサラベアがこっちに走ってくるのが見える。

 やるしかないよね。


 ダメだったら…死んじゃうのか。

 それは…いやだ。





 いまから試すのは、土属性の防御魔法《アースシェル》とオリジナル魔法《アースホール》の合わせ技。《アースシェル》自体はただ土壁を出すだけの単純な魔法でしかない。

 そこに《アースホール》の“土を圧縮する”という特徴を追加することで、土壁をぎゅぎゅっと圧縮してガチガチに固めれば。

 土の壁は簡単に壊せても、硬い金属並の壁ならそれなりに痛いはずだ。






  『魔法とは想像力』






 そうじいちゃんに教わった。

 どれだけ詠唱を完璧に覚えて魔力を高めても、その魔法によって生まれる現象や変化を把握できていなければ、本来の威力や変化を得ることはできない。

 逆に言えば、イメージがしっかりしていれば、詠唱も省略できるし、必要になる魔力も少なくなる。

 ベテランの魔法使いが新人よりも高効率かつ高威力で魔法を行使できるのはこういった理由がある。

 勿論、杖みたいな魔法を補助するアイテムがあれば話は別。

 そして、自分の中で明確なイメージを持つことで新しい魔法を生み出すことだってできる。

 今回イメージするのは調合室の壁。

 母さんがとっても硬いって言っていたダマスカス鋼で出来た壁ならきっと壊れない。






 ――――集中。

 体がギシギシ痛いけど、死ぬよりはマシだ。

 集中して、あの壁をイメージするんだ。

 死なないために。


 薄黒い色、罅もなにもない1枚の綺麗な壁。

 なによりも硬く、硬く磨かれた黒い壁。

 いつも母さんやアドラーと過ごしているあの部屋の壁。

 数々の薬草が煎じられて匂いの沁みついた落ち着く部屋の壁…

 出来上がるのは――――






 「《ダマスカスシェル》」





 呪文を唱えたとたんに急にめまいが襲ってくる。

 膝立ちすらできなくなって、地面にうつ伏せに倒れてしまった。

 なんだ?

 身体中の力が抜けていくこの感覚。

 ぼやけていく視界の中、なんとか首だけ動かして前を見ると、調合室の壁がある。

 あれ、家?

 あ、違う。

 魔法が成功したのか。






 ドン!!!!!!!






 ほっとした直後、すさまじい音とともに壁が揺れた。

 バサラベアがぶつかったのかな?


 壁は壊れない。

 揺れも収まり、あたりから音が消える。

 鳥の声も風の音も何も聞こえない。

 倒せたのかな?

 壁の向こうへ行って確認したいんだけど、もう指すら動かせない。

 もしかして死んじゃうんだろうか。

 やっぱり手出しせず帰っとけばよかったかな。母さんに怒られちゃうよ。



 かあ…さん……







 *******************

 ***************

 ***********

 ********



 マルクはそこで意識が途切れてしまった。

 激しい戦いの跡が残る森の中にただひっそりとマルクを囲った(・・・)黒い壁が静かにたたずんでいた。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

マルク君、大丈夫でしょうか…

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