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竜の薬師  作者: もんた
第3章 学園編-中編
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わき道―その11③

どうも、もんたです。

お待たせしました。


それでは、どうぞ。

(今回ちょっと長めです。いつもの二話分くらい?)



「これまで道中もしかと腕前を見せていただいたと感じています。しかし、私たちは同じ班ですから私の従者にも仕事をさせなくてはいけません。ですので、少しだけお仕事を分けていただきたいのです。マルク。」

「はい。」

「これからはいつものようにしてください。魔物がいる場合はドアバル様とサブウェ様にお任せしてかまいません。少し予定よりも遅れているようですから進度は早めに行きましょう。お2人は体力も戻られたということですから心配はいりません。いいですね?」

「かしこまりました。」

「あ、あの…」




 有無を言わさぬとはまさにこのことだったと思います。

 余計な話は聞く気が無いと言わんばかりに、マルクさんはさっそその場を離れて周辺の確認に動き始めました。




 それからはさっきまでの遅々として進まなかったダンジョン攻略が嘘のよう。

 事前に索敵が入るので戦闘に入る魔物は最低限、どうしても回避できず数が多い時はマルクさんが弓矢で牽制し、ソラリア様が魔法で仕留めてしまいます。

 勿論私もお手伝いするのですが、ソラリア様がそれまでの鬱憤を晴らすように高威力で魔法を使われるのであまり目立ちません。

 戦いたいわけではないので良いのですが。

 少しすると疲れたお2人から漏れた魔物が私やソラリア様に近づいてくるのですが、その時は颯爽とダガーで倒してしまいます。


 当然魔物の強襲もありませんし、事前に解除されるため罠にかかることもなくなりました。

 魔力も温存でき、余計な休憩で時間を使うこともありません。

 体感時間としては前回とそれほど変わらないくらいの時間で最後の部屋に到着しました。

 部屋にいるボスを倒してしまえば入口に帰るための魔法陣が起動し、実習も終了となります。





「マルク、お疲れ様でした。無事最後の部屋にたどり着きました。今回のボスは何でしょうか…。マルク、調べてくることは出来ますか?」

「行ってきます。」

「し、心配いりません!この私がいますからどんな魔物でも、ソラリア様に指一本触れることなく倒して見せます!!」

「はい。これまでも十分に発揮していただきましたから。お願いいたしますね。」




 この方はどうしてこんなに自信満々で話せるのでしょうか。

 流石の私もちょっと鬱陶しいなと感じてます。

 ソラリア様は流石侯爵家令嬢と言わんばかりの素晴らしい対応だと思います。

 少し休憩しているとマルクさんが困り顔で戻ってきました。




「ソラリア様、ボスが分かりました。」

「おかえりなさい。…ボスは?」

「どうやらビッグスライムのようです。対処はスライムと同じなので、ここまで来たときと同じで問題ないかとはおもいますが、ちょっと想定外ですね。」

「ビ、ビッグスライムだと…」

「前衛型のお2人には少々…、いえ、お2人は何か魔法が使えますか?」

「え…も、勿論使えますとも!ソラリア様のように高威力な魔法は使えませんが、基本的な魔法であれば修めております!」

「ウドボック様…」

「うるさいぞ!で、ですので盾は言うまでもなく、攻撃もお任せください!!」

「…わかりましたわ。ありがとうございます。」




 満点の愛想笑いですね。

 それに気づかず盛り上がっているお2人には悪いですが。

 にしても先ほどの発言は恐らく見栄を張ったものでしょう。

 なんとも言えない間がありましたし、これまでの戦闘でもスライムにあたった時魔法を使う素振りは一切ありませんでした。

 これはお2人の壁役に期待して私とソラリア様で攻撃するしかなさそうです。

 ビッグスライム、偏にスライムの上位種と言っても攻撃力が増しただけで動きはゆっくりですし、幸いなことに私が適性の高い土属性とソラリア様の火属性の魔法であれば有効にダメージを与えられるはずです。

 マルクさんも難易度の高い氷魔法を使われていましたし、土属性は得意だったはず。

 道中のように落ち着いて対処が出来ればよいのですが…








*******************





「ソラリア様はもう少し下がって!!アイナは土の壁を自分たちの前に張って!小さくていいから!!」

「でも!!」

「ソラリア様危険ですお下がりください!――我、希わくば守りの力。大地の精霊よ、大いなる力で我らを守りたまえ…≪アースウォール≫!」





 一体どうしてこのようなことになってしまったのでしょう。

 まぁ、言うまでもなく、お2人…いえ、あの人たちが悪いのですが。





*******************






 作戦はこうでした。

 まずはあの人たちが道中と同じように盾役として注意を引き、隙をみてマルクさんが弓矢や魔法で牽制、詠唱が終わり次第私とソラリア様で魔法を放つ、の繰り返しです。

 特に難しいことなどなく――強いて言えば2メートルと少しある大きさのビッグスライムの攻撃をすぐ近くで受けるか避けるかしないといけないあの人たちやマルクさんが大変なくらいですが――慎重にやれば多少時間をかけて倒せるくらいの魔物です。




「ふ、ふん!でかいだけのビッグスライムなど雑魚同然!ソラリア様、この私の魔法をご覧あれ!サブウェきちんとヘイトを取れよ!」

「そ、そんなウドボック様!?」




 開幕、そんな言葉を吐き出して勝手に詠唱に入り始めたのです。

 これには私たち3人呆然としてしまいました。

 挙句の果てには…




『わっ、我、希う、灼熱の力!火の精霊よ!我にその力を貸し与え、敵を燃やし尽くせ!≪ファイアボール≫!』


…っわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??

「あぶない!?≪ミスト≫!!」




 ドアバルさんが意気揚々と唱えた初級魔法は魔力制御を誤って目の前で誤爆。

 少し離れた場所から見ていた私たちはマルクさんの霧を出す魔法でなんとか守っていただけました。

 ドアバルさんは爆風で地面にたたきつけられ気絶してしまったのか、それとも魔力切れで気を失ったのか…

 少なくともまさかの1名脱落です。




「ウ、ウドボックさまぁ!?」

「サブウェさん前を見て!スライムが来てます!!」

「えっ、うぶっ!!」





 最前線で盾を構えていたサブウェさんは後方で起きた出来事に完全に気を取られていたようでした。

 マルクさんの注意も間に合わず、ビッグスライムの身体から伸びた触手で横殴りされてこちらも気絶。

 そしてお2人とも光の粒となって残念ながら退場となりました。



 このダンジョンは学園長お手製の魔道具となっているので、色々と工夫がされているんだそうです。

 その一つが先ほどの光景となっていて、命にかかわるような危険を身に受けた時、もしくは気絶したり麻痺したりして動けなくなった時に強制的に学園の医務室に転送されるようになっているんだそうです。

 つまりあの人たちはそんな感じで今頃医務室で寝ていることでしょう。

 中衛(後衛?遊撃だから何とも言えませんね)のマルクさんと完璧に後衛の私とソラリア様を置いて。

 一応私は護身術として杖術を学んではいますが、あくまで対人用です。

 スライムにそれが通用するかと言われるとなかなか難しく…

 困っていたところに先ほどのマルクさんの台詞が届いたのでした。





 マルクさんの指示に従って腰の辺りまでの土壁を作りました。

 これで多少は安心できるでしょうか。





「ア、アイナ!前に出てマルクを援護しないと!」

「ダメです!私たちが前に出たらマルクさんは私たちを守りながら戦わないといけないんです!きついと思いますが今ああやって注意を引き付けてくれてるんですから!」




 そう言っている間にもマルクさんはビッグスライムの周辺を駆け回りながら攻撃を一手に引き受けてくださっています。

 時々、分身しているように見えるあれは…魔法でしょうか?

 アッ!と思ってみるとマルクさんの身体をスライムの触手が通り抜けていって、少し離れた場所から攻撃しているんです。

 はて…?





「ふ、2人とも!見てないで攻撃して!?」

「「あっ。」」




 完全にぼーっと眺めるだけでした。

 申し訳ありませんマルクさん。



 マルクさんの声で戦闘中だと思いだした私とソラリア様で遠距離から攻撃を始めます。

 攻撃が追加されたことでビッグスライムもダメージが多くなってきたようで少しずつ身体が小さくなっていきました。

 スライム種は核となる部分を除いて、ぷよぷよしたもので身体が作られています。

 長い間研究されているようですが、あれが魔力なのか水のような液体なのかは分かっていません。

 分かっているのはビッグスライム以上の巨大な種類はダメージを受け続けると少しずつ身体が縮んでいくということだけです。

 一定の大きさまで縮むと動きは弱弱しく、ゆっくりとしたものになるのであとは一方的に倒すことが出来ます。



 私たちも攻撃に加わり、数回魔法を当てたことでビッグスライムも初めより随分ちいさくなりました。

 触手もあまり伸びなくなり、マルクさんも大きく動き回らなくてもよくなっているみたいですし、そろそろ倒しきれそうですね。




「ソラリア様、アイナ、思いっきり魔力を込めたやつをお願いします!それで倒せるはずです!撃ったらすぐ伏せて!!」

「わかったわ!」

「はい!」





『――我、希う、灼熱の力!!』




 ソラリア様は試験でも披露していた中級魔法を使うようです。

 凛としたな声に思わず聞きほれてしまいそうです。

 あの時よりも丁寧に魔力を込めていく様子はこの後の結果を裏切らないことでしょう。

 私も力不足ではありますが、お力添えしなくてはいけません。




『大地の精霊よ、民の声に応えよ!』




『赤熱の力!灼熱の双球!我が魔を以ってして焼き払い、撃滅せよ!≪ジェミファイア≫!!』

『大いなる大地よ!豊穣の化身!我が魔を以ってして万物を貫き、撃ち払え!≪ガイアチャージ≫!!』





 私たちの詠唱で生まれた巨大な火球と土の槍は勢いそのままにビッグスライムにぶつかり、立っていられないような爆風が部屋中に広がりました。

 マルクさんの指示もなく、そのまま棒立ちしていたら吹き飛ばされてしまったでしょう。

 揺れと土煙がおさまり、目を開けるとビッグスライムがいた場所には核だけが残り、地面は真っ黒に焼け焦げていました。

 部屋もところどころ罅が入ってしまい、私たちが入ってきた扉はゆがんでしまったのか半分開きっぱなしになっています。

 …これ、壊したからと怒られたりしないでしょうか。





「ソラリア様!アイナ!怪我は!?」

「私は平気よ…アイナは大丈夫?」

「私も何ともありません。マルクさんはご無事ですか?」

「何とかね。それにしても凄い威力だな…。もうちょっとで巻き込まれるところだったよ。」

「だ、だって思いっきりってマルクが言ったじゃない!」

「そうですけど、まさかこれほどとは。アイナもすごかった。」

「お褒めに預かり光栄ですわ。それにしても――「グギャッ!!」きゃあっ!!!」

「アイナ!?」

「あっ!…このっ!!」




 ボスを倒して気が緩んでしまっていました。

 どうやら扉から顔をだしたゴブリンアーチャーの弓が足を掠めたようです。

 マルクさんが気づいてすぐ倒してくださいましたが。

 幸い傷は浅いので大丈夫だと思いますけど…




「ソラリア様どいてください!アイナ、傷口を見せて!」



 マルクさんが焦った様子で駆け寄ってきました。




「…足に当たったんだね。深くはないようだけどすぐ処置しよう。」

「だ、大丈夫です。これくらいそのままでも…」

「ダメだ!ゴブリンの矢には毒が塗られてることだってあるし、そうじゃなくても汚い。錆たもので付けられた傷は悪いものがくっついてて、後からひどくなったりするって母さんも言ってたからね。応急処置にはなるけどすぐ綺麗にしておかないと。ソラリア様、僕の荷物から布を取ってもらえますか?」

「わかったわ!」

「え、あ、あの!」

「大丈夫。すぐだから。」





 ち、違うのです。

 そ、その殿方に脚を見せるのは…


 私がおろおろとしている間にもマルクさんは素早く動き始めました。

 ズボンの裾を短剣で切り開き、傷口を真剣な顔でじっとみてらっしゃいます。

 す、すごく恥ずかしい…




「今から解毒薬をかけるんだけど…。ごめん。ちょっと染みるかも。」

「…ふぇ、あ、へ、平気です!」




 自慢ではないですが小さい頃は何度も擦り傷作って、その度にお父様に怒られてましたから。

 マルクさんはポーチから解毒薬の入った瓶を取り出し、ゆっくりと傷口にかけ始めました。

 染みるのも気にならないくらい、薬の透明度に目を奪われてしまいます。

 本当ならもっと濁っていたり色味がくすんでいたりするのですけど…?




「マルクさん、その解毒薬は一体…?」

「ん?これは僕が作った薬だよ。ちゃんと鑑定して効果があるのは分かってるから安心して。」




 やはりマルクさんお手製の物だったのですね。

 薬師ギルドに所属されているのは知っていますので、そういった知識があるとは思っていましたが、腕前もすごいようです。

 商会で取り扱う薬の良い方の品でもなかなかあれほどの透明度があるものは無いです。

 うちの商会に卸してもらえたりしないでしょうか。


 なんて余計なことを考えていた間にマルクさんは処置をおえてしまったようです。

 傷口は綺麗な布でしっかりと締められています。

 まるで治療師様のようですね。

 真剣な表情も素敵でした。

 思い出すと少し顔が赤くなってしまいます。

 もっとちゃんと見ておくべきでした…




「よし…ひとまずは大丈夫だと思う。もどったらすぐ医務室に行ってきちんと治療してもらおう。」

「は、はい…」

「それじゃあマルクはアイナを医務室まで連れていって頂戴。私が先生に報告しておくから。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「ソラリア様!だ、大丈夫です。一人で歩けますから…」

「ダメよ。怪我した女の子を一人で歩かせるなんてしたら私が怒られるし、マルクが悪口言われちゃうもの。それにマルクがさっき言ってたみたいに悪いもの?が付いてるなら尚更きちんと治療しないと。歩けなくなったりしたら大変よ?」

「そうかもしれませんけど…」

「それに…」




 ソラリア様がニコニコ、いえニヤニヤしながら耳元に近づいてきます。




「私はもうお姫様だっこしてもらってるから、平気よ。」

「おっ…!?」

「こんな機会じゃないとおんぶなんてしてもらえないわよ。」

「どっ、どうして!」

「同じ女の子だもん。ふふふ。マルク!準備出来た?」

「はい。」

「それじゃ、マルクはアイナをおんぶしてね。その荷物は仕方ないから私が持ってあげる。」

「え?これくらい持てますよ?」

「女の子をおんぶしてるんだからきちんと運びなさい!」




 マルクさんは杖でたたかれた頭をさすりながら私を軽々とせ、背負ってしまいました。



「ちょっと汗臭いかもしれないけど、我慢してね。」

「ぜ、全然良いにおいです!?」

「えっ?」

「ぷっ…あははは!!」

「ソラリア様!!!」





 は、恥ずかしかったです。

 ダンジョン内だけならまだしも、背負われたまま学園を歩くことになるなんて。

 ダンジョン内では終始ニヤニヤとソラリア様に見られていましたし、学園内では顔見知りの子何人かにすれ違ってしましました。

 ううっ…






 でも…その、見ていたより大きな背中は、すごくあんしんできました。






 ちなみに、私たちが医務室に入ったころにはあの人たちはおらず、先生の話だと起きてすぐわいわいと騒ぎ立ててどこかへ行ってしまったとか。

 ダンジョンの入り口にもいませんでしたし何処へ行ったのでしょう。

 まぁ、興味ないですけど。


 あと、故郷のラゴア王国では、女性は男性に素肌、特に腰より下は不用意に見せてはいけないことになっています。

 砂漠の土地では足腰はとっても重要ですから、大切な身体の一部を不用意に晒さないという意味もあるのですけど。

 …片足のふくらはぎの辺りだけとはいえ、しっかり見られてしまいました。

 勝手に足を見た男性はその女性のことを…

 いえいえ!マルクさんはソラリア様の従者ですからまさかそんなことは出来ません!

 …でももしかしたら……




お読みいただきありがとうございました。

アイナ編一旦終了です。

本当はもっと細かく書きたいんですけど、それは外伝とかなんとか名前つけて別口で書こうかな…?と迷い中です。

需要があれば?



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