わき道ーその11②
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それではどうぞ。
「以上、質問もないようなので早速始めよう。各班に分かれて集まっておけ。自由にしておいて構わないが、余り遠くへは行きないように。」
「「「はい!」」」
先生の言葉を皮切りに、集まっていた生徒たちは各々広がっていきました。
王立アバロン学園トーカ分校に入学してあっという間に数ヶ月が経ちました。
今日は3度目…4度目でしたっけ?
…まぁそれくらいのダンジョン実習です。
学園に設置してある擬似ダンジョンを使った訓練で、ほぼ全ての生徒が受ける講義となっています。
“ほぼ”というのは希望制となっているため。
戦闘が苦手な方も居ますし、そもそもそういったことを必要としない方もいます。
私も正直受ける予定ではなかったのですが…
「アイナ、こんなところにいたのね。」
そんな風に気さくに声をかけてくる方は多くありません。
振り向くとソラリア様が綺麗な金色の髪を揺らしながら近づいてきました。
後ろには少し疲れた様子のマルクさんがいらっしゃいます。
「すいません。少し考え事をしていて…。それよりマルクさんどうかなさいましたか?お疲れの様ですが…」
「え…あぁ。いつものことだよ。」
「あぁ。」
マルクさんが小さくため息を吐きながら向けた視線の先には本日の私たちの班員が。
「やぁやぁソラリアお嬢様にアイナ嬢、ご機嫌麗しゅう。本日は良いダンジョン攻略日和だね!一番乗りで課題をクリアしようじゃないか!なに、剣の名家ドアバル子爵家が長男であるこの僕が付いているから心配は要らないよ!僕たちに向かってくる敵は全て僕と優秀な従者であるサブウェが蹴散らして見せるさ!」
「私が出る幕などありません。ウドボック様のお力が有れば問題ありませんとも。」
「それもそうだな!」
はぁ…
この方々は苦手です。
ソラリア様もマルクさんも同じようでなんとも言えない顔をされています。
「お噂はかねがね。ドアバル様、本日はよろしくお願いします。」
「えぇ、よろしくお願いいたします。」
「おおっ、ソラリア様、そのように堅苦しい呼び名はご容赦ください。将来そうなるとは言え、今は当主でもなんでもありません。是非ウドボックとお呼びください。アイナ嬢も是非に。」
「「え、えぇ…。」」
「これを機に交友を深めていきましょう!」
是非交流は深めたくないですね…
「そうだ!もし宜しければ今夜お食事でもご一緒しませんかな?屋敷で準備をしせますし、この機会に私の父にもーー」
「ウドボック様、宜しいでしょうか。」
「なんだ!今僕が話しているのに邪魔をするな!」
「大変失礼しました。ソラリア様の従者であるマルクと申しますので、以後お見知り置きを。」
どうしようもなく疲れていたところにマルクさんが割り込んでくださいました。
ドアバルさんは気付いていなかったのか驚いた表情です。
従者のサブウェさんは流石に気付いていたようですけど特に警戒された様子はありません。
普通主人に知らない人間が近づいたら何かしら動くべきだと思うのですが…
「なっ…!?いつのまに!ど、どこの家の者だ!」
「私は貴族ではありません。」
「平民がなぜーー「ですが縁あって従者としてお仕えしております。何かあれば当家筆頭執事であるセバスにお問い合わせいただければ。」ーーチッ。」
「ウドボック様、あの【賢人】様となると…」
「わかっている!全くお父様ももっと真剣に陳情を出してくれていれば良かったものを…。良いか!今日はこの私とサブウェが前衛で魔物どもを蹴散らす!くれぐれも余計なことはするなよ!」
「はい。そのように。」
「なっ…軟弱な!貴様の――「ドアバル様?」うっ!」
あら…ソラリア様が大変お怒りですわ。
「あまり私の従者をいじめないでくださいませ。まだ従者として日も浅くそちらのサブウェ様のように優秀ではなくお目に着くこともあるかとは思いますが、どうかご容赦を。ねぇ、マルク?」
「…精進いたします。」
よっぽどの剣幕です。
余計な火を注がないようにひとまず黙っておいて後程フォローすることにしましょう。
お2人も流石に察しておられるようで、さっきまでの勢い無く気まずそうにされています。
…こんな状況でダンジョンに行っても良いのでしょうか。
「良し。それじゃ、次の班!入場しなさい!」
悩む暇もなく、私たちの班のようです。
失態を取り返そうと必死な商人のようにお2人が先頭を切って入っていかれます。
マルクさんは助けを求めるように私を見ていますが、主人のご機嫌を整えるのも従者の仕事だと思います。
難易度の低いダンジョンではありますが…とっても不安です。
私の不安をよそに、ダンジョン探索はサクサクと進んでいきます。
学園に設置されているダンジョンは曰く、学園長であるリリアンテーヌ様が魔道具や魔法を駆使して作成したものらしく、入るたびに中の構造が変わるようになっています。
そのため何度挑戦しても暗記して試験を突破するということが出来ないようになっているそうです。
今回も勿論、前回と全く異なる構造となっていたのですが…
マルクさんのおかげで大きく迷うことなく進めています。
ソラリア様の従者になる前は狩人として過ごされていたようですから、冒険者としては斥候にあたるのでしょう。
途中から的確な指示があるおかげでとっても楽をさせていただいています。
…そう、途中から。
ダンジョン入場後はドアバルさんとサブウェさんが先頭を進んでいました。
出会う魔物魔物(そうはいってもスライムやゴブリンといった弱い魔物ですが)をしっかり倒しておられたのですが、それほど周囲に目を配られないので隠れていた魔物に横から襲われたり、道に迷ったり…
怪我はソラリア様がいるので大きな問題はありません。
ソラリア様は≪ヒール≫を覚えておられたので軽度な傷はすぐに治していただけます。
初めは良かったものの途中からげんなりされてましたけど。
問題は迷子です。
万が一を考えてそれぞれ2~3日分の物資は持っていますが、あくまで予測不可能な事態が起きた時、というレベルの万が一です。
それこそ魔道具が不調で出てくる魔物や罠が想定外のものになってしまったとか、脱出できなくなったとか。
初心者用の、しかも安全に配慮された学園のダンジョンで迷子だなんて後世の笑われ者でしょう。
来た道を戻る、という繰り返しを5回か6回ほどした時、ついに我慢できなくなったソラリア様がお2人を呼び止めたのでした。
「これから先、マルクに先導してもらいませんか?彼は狩人として腕を磨いていますのでそういったことに優れています。お2人の武勇は優れていますから、こういったことはマルクに任せてしまってお力を温存されてはいかがでしょう。」
にっこりと女神のような微笑みですが中に含まれる棘は相当なものでした。
…ウドボックさんは察せなかったようですが。
「そっ、そんなことありませんともソラリア様!そ、そう!疲れが溜まっていたのかもしれません!今休憩も取りましたので十分に回復しました!」
「ウドボック様――」
「ええいうるさい!というわけですので、何も問題ありません!力を取り戻した私がいれば――「ドアバル様。」は、はいっ!」
「ご自信があることは十分にわかりました。」
私に言われているわけではないのですが、背筋がヒヤッとしました。
お読みいただきありがとうございました。
ちょっと書いていたら盛り上がってしまってもう一話、アイナ視点でのわき道話となります。
本編にはその次から戻ります。




