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竜の薬師  作者: もんた
第3章 学園編-中編
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わき道ーその11

どうも、もんたです。

お待たせしました。


それでは、どうぞ。



 サドニア王国、王都サルドニアから南西方面へ約3日程馬車で駆けた先にあるシャンドラ侯爵様の治める街トーカ。

 私はここにある学園に通うために王都から引っ越してきました。

 本来であれば王都にある本校に通うことになると思っていたのですが、どうやらお父様のお仕事の都合で分校であるこちらに行くことになったらしいのです。

 お母様は少し遅れていらっしゃるのだとか。

 お父様がいない間商会を切り盛りしているのですし、引継ぎや各所への説明などきっとお忙しいのだと思います。

 …そうはいっても家族団らんの時間を必ず用意していただけるので寂しくはありませんが。

 というか本店である王都のお店を任せっきりにしてあちこち飛び回っているお父様が良くない気がします。





 王都にはそれなりに知り合いもいましたし、()()と伝手もあったので名残惜しくもありますけど、話によれば同世代にシャンドラ侯爵様のご息女もいらっしゃるのだとか。

 若くして国内有数の広さの領地を治める侯爵様とつながりが持てればきっとお父様のお仕事にも役に立つはずです。

 すぐにとはいかないでしょうが、なんとかお近づきにならなくては。

 なんといってもまずは試験に合格することが第一です。

 きちんとお勉強はしていましたし、商会のお仕事もお手伝いしていますから礼儀作法なんかも問題ないはずです。

 とはいえ油断は禁物。

 しっかりと振り返りをしておきましょう。





 試験に向かう頃の私はそのあとの出会いのことなど全く頭になかったのでした。























 試験は無事終了。

 筆記試験は数問怪しい箇所もありましたが恐らく合格点。

 実技と礼儀作法の試験も特に目立つ結果があるわけではありませんがしっかりと基準はクリアしたはずです。

 お父様とお母様には良い報告が出来そう。

 …試験後に貴族の方々ともっとお話しするべきでしたでしょうか。

 自慢話が多くて疲れるのですよね。


 そんなことをぼんやりと考えながら乗合馬車の待合所で腰掛けていると、周囲の御者の声が気になりました。





「アレ、凄いな。」

「あぁ。確か有名な冒険者の魔法使いが似たようなことをやっているのを見たことがあるけどよ…あの見た目だとまだまだ子供だろう?」

「俺はあの子が学園から出てくるの見てましたよ。きっと入学希望のどっかの貴族さんでは?」

「だとしたらあんなとこにいないだろう。周りに控えてる従者もいないしな。」





 話している人たちの視線の先には見たことのある男の子がいました。

 確か、マルク…さんとか。

 試験で同じ班でしたし、ソラリアお嬢様のお付きの方だったと思います。

 遠当ての試験でとても綺麗な魔法の弓矢を作られていて、試験の結果も全部当たりと試験官の方が驚いていらっしゃいましたので覚えています。


 今も頭の上にいくつもの水の玉を浮かべてくるくると動かし続けています。

 目は閉じていますし、純粋に魔法の制御力だけで動かしていらっしゃるようですね。

 まだまだ未熟な私が見てもあれがすごいことだと思います。

 普段はこんなことしないのですが、ついつい気になって駆け寄って声をかけてしまいました。






「もし?」

「えっ?」













 やはり覚え間違いではありませんでした。

 残念なことに私のことは覚えてらっしゃいませんでした。

 申し訳なさそうな表情に胸がちくっとします。

 十何人もいた試験組の中で、面と向かって挨拶をしたわけではないですし知らなくて当然なのですが…

 魔法の訓練中に声をかけてしまったのでお邪魔かと伺ったところ快くお話をつづけてくださいました。

 こんなことを言うのは問題ですが、貴族の方は勿論、時折従者の方でも随分と、その、偉ぶるような方が多いので、後からそわそわしてしまったのですが、マルクさんはとってもお優しい方でした。


 それにとっても好奇心旺盛なようです。

 マルクさんのお話を聞こうかと思っていたのですが、私の故郷でもあるラゴア王国や商会について色々とご質問を受けました。

 時々、貴族の従者であれば当然知っているはずだろうことも質問されていたのは一体どういうことなのでしょう?





「まぁ!それではマルクさんは複数の属性の魔法が使えるのですね!氷属性が一番お得意なのですか?」

「ん~。氷属性っていうより、水属性の方が得意かな。アイナは土属性って言ってたっけ?」

「はい。ラゴア王国の民はほとんどが土属性か火属性に適性を持っています。私も例にもれず、土属性の適性が強くって。初めの水晶もまっ黄色でしたよ。わたしの父はどちらかと言うと火属性の方が適性強いのですけどね。」

「そうなんだ。そういうのってやっぱり遺伝するものなのかな?」

「そうでもないみたいですよ?私の友人も両親のものとは全く違う適性を持っていると言っていましたし。その友人はマルクさんと同じで水属性が一番適性あるのですけど、お父様は火属性、お母さまは風属性に適性がある方だったはずです。」

「へぇ…。どうやって決まるんだろう。」

「どうなんでしょうか。性格にかかわるとか、生まれによって変わるとかいろいろと説はあるみたいですけど。ちなみにマルクさんのご両親の魔法適性は?」

「さぁ…。なんだろう?」

「ご存じないのですか?」




 あれだけ魔法が自由に使えるのであればきっとご両親も高名な魔法使いの方かと思ったのですが…




「うん。大きくなったときにはもう両親とも死んじゃっててさ。」




 えっ!

 マルクさんは何でもないように話されていますが、きっとお辛いはず…

 私はなんてことをしてしまったのでしょう。

 申し訳ない気持ちが溢れ、つい涙がこぼれそうになってしまいます。





「あっ…あの…。も、申し訳…。」

「ああ、気にしないで。本当に覚えてないから、悲しいとかもほとんどないんだ。」

「そう……なのですか?」

「うん。代わりの人に育てられてね。その人は風属性が得意だったかな。その後ソラリア様のお付きになったんだ。」




 いけません。

 私がこんなことではマルクさんにもっと気を遣わせてしまいます。

 ぐっとこらえてお話をつづけます。




「そうだったのですね…。あの、辛いことを伺ってしまって申し訳ありませんでした。」

「いいのいいの。本当に気にしないで。」

「はい。」




 本当にお優しい方です。




「これは内緒の話なんだけど…。誰にも言わないって約束してくれる?」

「えっ…。も、もちろん約束させていただきますけど、よろしいでしょうか…?」

「アイナは悪い人じゃなさそうだし。じゃあ、約束ね。」





 そういうとマルクさんは小指を伸ばしてこられました。




「これは…なんでしょうか?」

「あれ?しらない?約束する時のおまじないだよ。」

「おまじない、ですか?」

「そう。約束を破らないようにって、小指同士をこう絡めるんだ。それから縦に三回指をふるんだよ。」

「へぇ、初めて聞きました…。こ、これでよろしいでしょうか。」




 同じ年齢なのになんとなくたくましいマルクさんの小指に自分の指を絡ませます。

 少し硬いように感じるのは弓や剣を使って訓練されているからでしょうか。

 お父様や使用人の男性とは違ったほんわりとした温かさが少し恥ずかしいです。

 手が三度動き、すっとマルクさんの指が離れていきます。




「あっ…。」




 名残惜しいなと思いつつ、大人しく手を戻しました。

 さっきまでつながっていた私の小指はまだ少し暖かくて…

 消えたら嫌だなとおもって空いた手でぎゅっと包んでおきます。




「これでよし。今からはなすことは内緒だよ。…どうしたの?アイナ。」

「な、なんでもありません!!あ、さて、えっと、秘密でしたっけ?」

「え?あ、うん。えっとね、僕を育ててくれた人はエルフなんだ。」

「そ、そうなのですか?」




 お話を聞くと小さい時にエルフの女性に拾われ、その方に育てられたんだそうです。

 エルフは種族として魔法の制御や力に非常に優れていると聞きますし、それであれば納得です。


 しかも!

 街に来られてからはトーカの近衛騎士団の方々とも訓練されていたとか!

 【雷弓】と異名を持つサイロウ様とも訓練をご一緒されたらしいです。

 サイロウ様は今ではお年を召していらっしゃいますが、元は王都にある5つの騎士団の一つを率いていらっしゃたほどの実力者。

 常人では引くことすらままならない剛弓を難なく使いこなし、放たれる弓の様子から着いた呼び名が【雷弓】と聞いております。

 もっと話を聞こうと思っていたら、なんとも間が悪い。

 お父様がお迎えにいらっしゃいました。

 軽くお父様を含めお話した後、挨拶をして別れました。

 …もう少し話していたかったです。






「なんだ、随分ご機嫌だなアイナ。試験は上手くいったんだね?」

「え、えぇ。きっと合格してると思います。」

「そうかそうか。良かった。それに良い出会いもあったな。」

「…マルクさんのことですか?」

「それはそうだとも。しかし…あんなにしっかりした従者がいたなんて知らなかったな。それであれば私たちの紹介などいらないはずだ。」

「従者の紹介をしていたんですか?聞いてないです。」

「勿論だとも。内々の話だったから大っぴらには動いていないがね。有難いことにシャンドラ様にはご贔屓にして頂いている。ソラリアお嬢様が学園に入学予定だと聞いて人選を進めていたんだ。初めは話を聞いてくれていたんだが、途中で不要だと断られてしまった。別の商会か伝手に負けてしまったかと悔しんでいたが、どう転んでもマルク君のような優秀な人材は見つからんよ。アイナも仲良くしておくようにな。きっと良い方向に転がることだろう。」

「…勿論です。」





 ちょっぴり学園生活が楽しみになりました。




お読みいただきありがとうございました。

一部読者様に人気があるだろう(筆者調べ)アイナのお話です。

もはや別伝とかってかたちでアイナ主人公でがっつり書こうと思えばかけるんじゃないかくらいですが抑えておきます。

次回も同視点の話の予定です。


まぁなかなか面白いやん?と思っていただけた方。

ありがとうございます。

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大変大変うれしいです!

今後もよろしくお願いします。

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