第18節『パーティーの終わり』
どうも、もんたです。
お待たせしました。
それではどうぞ。
「え?あ、ちょっと待って!」
そのあとは…もう滅茶苦茶だった。
元々の予定では、挨拶は済ませているから簡単な話だけで済むっていうはずだったのに、流石にあの発表の後じゃそういうわけにもいかない。
話す人の全てに根掘り葉掘り聞かれたのにはびっくりした。
生まれはどこでどんな経緯で2人と出会ったのか、どこに住んでたのかなんてのは定番で他にはどんな女の子がタイプかとか、年齢はいくつくらいがいいかとか…
基本的にははぐらかしながら答えてたんだけど、女の子に関係する質問が来るたび、横にいるソラリアの笑顔が冷たくなっていくのを感じて、正直本当に怖かった。
恐らく合間合間でシャンドラさんや母さんが邪魔しに来てくれなかったら結構危なかったと思う。
こういう時の切り抜け方をきちんとシャンドラさんに教わった方がいいんだろうか…
それに、ソラリアが言ったようにこれから貴族になるのなら礼儀作法をもう一度勉強しなおした方がいいかもしれない。
従者として仕えると決まった時、基本の礼儀作法に関してはセバスさんからみっちり仕込まれたけど、あくまで従者としてのものだし、限られたパターンのものだった。
今なんとなくやれているのは学園の貴族コースの授業を眺めてたおかげだと思う。
こんな状況になって今更だけど、もっとちゃんと授業聞いておけばよかった。
「ご歓談中失礼いたします。お嬢様、マルク様、旦那様がお呼びです。席へお戻りくださいませ。」
同じような質問を受け続けて、僕もソラリアも疲れを通りこしてどうしようもなくなってきたくらいでセバスさんが割り込んできた。
話し相手に断りをいれ、セバスさんの後を追う。
シャンドラさんは…と探すと、どうやらセバスさんの嘘だったようだ。
立ちっぱなし話しっぱなしに加えてもみくちゃにされてのをみて、流石に、と思ったらしい。
ホールの一番奥、主賓の座る席の裏に作られた隠しスペースに腰掛ける。
ここは急に体調が悪くなったり、内緒話をしたりと少人数になる必要があるときに使われるスペースでホールからは見えなくなってる。
防音の魔法とかもかけてあるし、ゆっくりするのには確かに最適かもしれない。
外の音も聞こえないので不便なこともあるけど。
「はぁ…疲れた…」
「何言ってるの?今日くらいの規模のパーティーなんてあちこちであるんだからこんなのでへこたれてちゃだめよ。」
「そうは言っても、あの質問攻めはちょっと…」
「まぁ…あれは確かに疲れたわ。でもあれもこれっきりでしょう?…多分。」
「…多分なの?」
「マルクだってわかってると思うけど、たいてい貴族って噂話好きだからここにいる参加者はわたしたちのことあちこちで言いふらすわ。そこではい、おしまいってなるところもあるだろうけど、うちの領内か近場の貴族は本当かどうか確かめるだろうし、今日みたいに直接聞きに来るかもしれないもの。その時は今日ほどではなくても色々質問責めにあうと思うわ。」
「うわぁ…」
さっきの光景を思い出して、またあれをするのかと思うと今から疲れてしまう。
ぐったりと背もたれに身体を預けた僕をみてソラリアは不安そうに首を傾げた。
「やっぱり貴族って面倒よね…。嫌になっちゃった…?」
「だ、大丈夫だよ。慣れちゃえばソラリアみたいに平気なんでしょ?」
「そうなんだけど…」
「こんなことで嫌ですなんていったらじいちゃんと母さんに怒られちゃうよ。」
「…ふふ。確かにそうかも。オルガ様に怒られたことあるの?」
「そりゃたくさん怒られたよ。例えば――」
そうやって休憩もかねて昔の話をしていると、セバスさんが静かに部屋に入ってきた。
「ふふふ。あら、セバス。」
「楽しそうで何よりです。そろそろ閉会の時間となりますので表の席に移動いただけますかな。マルクもお嬢様の隣に座るように。」
「僕も?いいんでしょうか?」
「開始のタイミングでは従者としてだったが、今はお嬢様の婚約者だ。婚約者を後ろに立たせることなど前代未聞だろう。北方諸国にある女傑が治める国は夫が立って側に控えているらしいが…わが国では相当に例外だ。今後は我々もマルクをお嬢様と同様に扱うことになるだろうからこういうところから慣れていきなさい。」
「なんだか不思議な感じですね…」
「マルクが特にかしこまる必要はない。我ら使用人側が変わるだけだからな。本来なら私も口調を改めるべきではあるのだが…」
「いえ、僕はそのままで構わないです。」
「そういうと思ったがな。まぁこういった身内だけの場所であれば誰も何も言うまい。ただし、人の目がある時はそういかないのでね。私は当然だが、マルクも気を付けるように。外では私のことは旦那様たちと同じようにセバスと呼ぶように。」
「えぇ…」
「慣れちゃえばどうってことないわ。ねぇセバス。」
「仰る通りでございます。それではお2人ともこちらへ。」
ホールに出ると既に料理のあったテーブルは片付けられていて、随分ホールが広く見えた。
僕らが席に着いたことを確認すると、シャンドラさんの締めの言葉を受けてパーティーはそのまま閉会となった。
位の高い貴族や比較的遠くから来ているお客はそのまま屋敷の客室へと案内されて戻っていく。
それ以外のお客様たちも多分みんな街中の宿屋か仮の屋敷に帰っていくんだろう。
中にはこの後も自分の屋敷でパーティーを開く人もいるらしいけどね。
屋敷に戻って執務室で母さんたちと話していると、ライオネルさんがやってきた。
「旦那様。よろしいでしょうか。」
「珍しいね。どうしたんだい?」
「私たちは席を外した方がよろしいでしょうか。」
「いや、のちに家族になるお2人だ。お気遣いは不要ですよ。それで?」
「はい。デーザン商会のモロゾ会長がお越しです。どうしてもお話したいことがあると。」
「ふむ。こんな遅い時間にどうしたんだろうか。」
「日を改めるようお伝えしましたが、お時間はとらせない、なんとか今日のうちに、とのことでしたので…」
「…わかった。そのままここに案内してもらえるかい?」
「かしこまりました。」
「シャン坊。仕事の話ならなおのこと儂らは聞かん方が良いのではないか?」
「いえ、先ほども言いましたがお2人であれば問題はありません。特に聞いて何かする、といったこともないでしょうし。それに…」
「なんじゃ、嬉しそうな顔をしよって。」
「…バレましたか。マルク君も関係のある話でしょうから是非とも皆で聞きましょう。」
「僕…ですか?」
シャンドラさんのこの笑顔はきっと何か企んでる時の表情に違いない。
ほんの少し前パーティーで発表した時と同じ顔だ。
母さんもそれに気づいたのか苦笑交じりに話をつづけている。
追及をのらりくらりとシャンドラさんが躱しているとドアがノックされた。
お読みいただきありがとうございます。
自粛の日々をゲームと書き溜めで過ごしています。
皆様もゆるゆるとお過ごしでしょうか?
体調には十分お気をつけを。




