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52.セデルアース

 夜になってもミールは不思議な体験をする。

 先ずは食事である。

 肉は先日4人が仕留めた魔獣などを栗山が解体し、素材のところだけを残して食料としているため、肉には困らない。次は野菜だが、これは栗山が召喚した野菜使っている。最近は料理本などを読んで、レパートリーを増やしているが、それはまた別の機会にでも語ろう。


 ここからはミールの感想となる。

 町では見ないような食べ物ばかりで、味付けも絶妙なバランスで、兎に角美味しいとしか言えない。

 そして、最近王宮でも取り入れだしたガラス製品が普通に使用しているし、銀細工であしらわれたナイフやフォークが使われている。

 また、小さいけれど風呂が設置されており、高級品石鹸が当たり前のように置かれている。それにシャンプーと名の、髪を洗う石鹸は良い匂いがして、髪がゴワゴワにならない。トイレは不思議な造りとなっていて、お尻を拭くにも柔らかい紙が使用できる。まるでどこかの豪邸で扱われる代物ばかりが当たり前のように置かれている。

 準男爵のはずなのに、それ程の資産があるとでも言うのだろうか?

 最後に明かりである。クリヤマ殿はデンキと言っていたが、ボタン押すだけで灯りが灯るなんてどのような魔法と言うのだろうか?


――――――


 リビングで寛ぎながら本を読んでいると、チヒがこちらの世界では見慣れない物を持ってやってきた。


「ねぇ、チアキさん。これっていつ使うの?」


 そう言って見せてきたのは無線機。王都で渡したのをすっかり忘れていた栗山。あの日は色々とあったからである。

 取り敢えず無線機を受け取ると、チヒは栗山に質問をする。


「あの鉱山で鉄は本当に採れるの?」


 鉄の成分が検出されただけで、鉄その物が出てきた訳では無い。幾度となく栗山が説明をしたのでそこまでは把握したチヒ。


「大丈夫だよ。すでに手は打ってある」


 そう言って栗山は再び本を読み始めるのだった。これ以上聞いても答えてくれないと分かったチヒは、自分の部屋へと戻っていくことにした。

 どうしてそこまで大丈夫と言い切れるのか。それは鉱山の素という、巫山戯た物が召喚できたからである。鉱山の素は、鉱山を人工で作り出せるのであった。これが有れば、資源の無いセデルアース王国も、資源大国になるが、それは全て栗山次第であった。


 翌朝になり、カミュが目を覚ましてリビングに向かうと、すでにミールが栗山の席に座っていた。


「朝が早いんですね」


「これでも俺はお目付け役だからな」


「ちなみに、そこの席はご主人様の席ですよ」


「む、そうなのか? 全体を見渡せる絶好の場所だと思ったんだがな」


 ミールに言われ、初めてその事に気がついたカミュだが、今はそれよりも退いてもらうことが先決であった。

 カミュが退くよう言うと、ミールは断り頑なに席を譲ろうとはしない。あとで栗山に言われても知らないから……と、捨て台詞を吐き、リビングを後にした。

 栗山がランニングから戻り、家の中へ入って行く。普段であればカミュがいるはずだと思いながらリビングに向かうと、そこにはミールの姿があった。


「朝が早いんですね」


 カミュが言った言葉を、復唱するかのように栗山は言う。


「……これでもお目付け役だからな」


 二度も同じ台詞を言うとは思っていなかったが、それ以上の言葉が浮かばなかった。


「それで、結果はいかほどですか?」


 何と答えて良いのか、ミールは言葉に詰まる。そんなミールを尻目に、栗山は朝食を作りに台所へ向かった。

 今日の朝食は、柔らかいパンとインスタントスープ。メーカーさまさまである。

 その後は再び道作りの作業を行う4人。栗山は何処の商人が来ても直ぐに店を構えることができるよう、宿屋や空き店舗などを作り、さらに村を拡張していく。

 鉱山からたくさんの資源が採れるのは確定しているので、人が一気に増えるだろう。

 それから数日が過ぎ、鉱山までの道を塞いでいた木々は取り除かれ、本格的に道を作り始める事になった。

 だが、村人たちは別の仕事があるため、道作りの作業に協力することができず、栗山を含めた5人で作業をするしかない。

 とは言っても、木々が無くなった道を踏み固めるだけで良いので、栗山はロードローラーを召喚し、チヒとコレットの2人で道を踏み固めていく。

 残りの2人は、村から王都までの道を作るために、再び木々や地面に埋まっている岩などを取り除く作業を行っていく。

 その作業をゼロから見ていたミールは、言葉を失っているのは言うまでもないだろうし、初めて見る化け物のような重機に、空いた口が塞がらない日々が続いていたのであった。

 それから更に数日が過ぎた頃、4人は険しい道を歩いている調査隊を発見するのだが、初めて見るブルドーザーやシャベルカーに、調査隊は逃げ惑う。

 4人は慌てて調査隊たちに、これは栗山の召喚獣だと説明したのだが、中々信じてもらう事はできなかったのは言うまでもない。

 王宮騎士である、ミールが説明してようやく落ち着きを取り戻した調査隊。「驚かすな」と、4人に言いながら先へ向かうが、栗山には何も言わないのであった。

 これも奴隷だった時の弊害である。

 気にしても仕方がないので聞き流す4人だったが、これに納得ができないのは栗山である。爆竹を召喚し、調査隊めがけ投げたのであった。

 調査隊がやってきた事で、道の舗装作業は一時中断する事にした栗山たち。不思議な扉を使い、村に戻って出迎える準備を始める。おもてなしの心というやつである。

 翌日の昼頃に調査隊が村に到着し、村人たちは調査隊を出迎え、ゆっくりと休める場所を提供してあげたのであった。


 鉱山が見つかった事で栄えるかもしれない村だが、本当に栄えるのかは分からない。何かしらの目玉が必要だと感じた栗山は、今度は旅の雑誌を召喚して人が集まる何かを探す。

 日本の旅雑誌に必ず載っている温泉に目を付け、どうやって温泉を探すのか調べ始めると、素人では絶対に無理だという事に辿り着いて、絶望感に襲われたのであった。

 ならば、名物料理を作ったらどうだろうかと考えるのだが、そんなに早く作物が育つはずもない。

 鉄鉱石が見つかる事は確定しているので、鍛治を盛とする村にしたらどうだろうかと考えるが、鍛治の知識があるわけでも無いので諦めて夕食を作る準備を始めたのであった。

 翌朝、ランニングをしていても頭の中では何かないかと考えてしまう栗山。一人で考えても埒があかないので4人にも考えてもらおうと声をかける。

 4人はいつもの席に腰をかけるのだが、栗山が座る席にはミールが座っており、栗山は別の席に座って事情を説明する。


「村の目玉になる事……ですか?」


 目玉と言われても、ここまで村が発展しているのだから、過疎化させないで維持する方法を考えた方が良いのではないだろうか……と、4人が答えると、ミールが突然笑い出す。それに対してカミュが不機嫌そうな顔をしながらミールを睨みつけた。


「我々が面白いことでも言いましたか」


 コレットも不機嫌そうな顔をしながらミールに聞く。


「いやいや、君たちは分かっちゃいない。本当にあの山から鉄が採れるとしたら、国が黙っちゃいない。村に人を派遣させるだろうし、君たちはそのその功績を称えられるだろう。まぁ、本当に採れたとしたらの話だがね」


 本当に採れたらの話だ……と、ミールは言う。


「なら、心配する必要はないな。あの山からは、必ず鉄は採れる」


 自信満々に言う栗山。どこからその自信が出てくるのかと思いながら、ミールは栗山を見ていた。

 調査隊が村に到着して数日が経ち、ようやく調査隊は山へ向かうことになったのだが、栗山たちも同行しろと言われてしまい、仕方なしに同行することとなったのである。

 道は4人によって舗装されているため、馬車で一時間ほどの道のりで到着することができた。

 調査隊の中には土魔法を使える者がおり、栗山たちが調査した場所で早速魔法を使ってみると、沢山の鉄鉱石が出てきて、調査隊は驚きの声を上げる。

 鉱山の素を使用しているのだから採れることは確定しているが、ここまで沢山採れるとは思ってもおらず、栗山たちも驚きの声を上げた。

 小一時間ほど調査をしたところで終了し、この山は沢山の鉄鉱石が採れるということが証明される。調査隊の人たちは栗山に「運が良い」と言って、山を下りていく。

 村へ戻った調査隊たちは、直ぐに王都へ戻る準備を始め、翌朝には王都へ戻っていってしまった。

 ミール曰く、早く報告して鉱夫などを派遣しなけれなならないらしい。それよりもこれからが大変だとミールは告げた。


「クリヤマ殿はたしかに鉱山を見つけることができ、村の開拓も平行に行っていた。これは調査隊が陛下に報告されるとなると、クリヤマ殿は再び王都へ戻らされるだろう。そして、今度は新しい爵位を与えられる。間違いなく正式な貴族の仲間入りになるはずだ」


 別に爵位には興味は無いクリヤマだが、4人の待遇が良くなるのならば、その話がきたら受け入れようと思うのだった。

 調査隊が王都へ戻ってから一ヶ月が過ぎると、村にはたくさんの行商人たちがやってくる。その中には村に腰を据えて働こうとする者たちもおり、村はこれ以上もないほど活気づいたのは言うまでもない。

 その行商人一向に紛れてやってきていたのは、王宮からの使いだ。ミールが言ったように、栗山は王宮へ来るよう命じられたのであった。

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