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51.パワーシャベル

 先ほどまで自室にいたはずの栗山が、突然現れたことに驚く4人。


「いつの間に居間へ来たんですか!」


 驚くコレットが栗山に問いかけるが、栗山は喜びを噛み締めており、コレットの言葉が耳に届いていなかった。

 ただ、栗山が喜んでいる姿に4人はホッと息を吐いたのだった。

 遅くなった朝食を食べると、栗山は4人に話があると言って、その場に止まらせた。


「話ってなんですか?」


 4人を代表してコレットが栗山に質問する。王都に関する事だというのは、何となく予想ができていたが、誰が選ばれても断るつもりでいた。


「王都へ行く話だが、全員で行けることとなった」


「「「「……え?」」」」


 4人が声を揃える。何を言われているのか理解が及ばず、「今、何て言ったんですか」と、聞き返すコレット。


「王都には全員で行く。さっさと行って、さっさと戻るぞ」


 その言葉を聞いて4人は歓喜の声を上げたのだが、どうやって行くのだろうと4人は思うのだった。


「さぁ、行く準備を始めるんだ」


 栗山の言葉に4人は返事をして準備する。

 しかし、行く方法は伝えていないため不安が残っているのも確かである。

 リビングに集まった4人は、少し緊張した表情で並ぶ。すでに栗山は準備を終わらせて、『扉』の前に立っている。

 栗山が扉を開けると、不思議な光に包まれて目を瞑る。そして目を開けてみると、そこには王都の広場に立っており、4人はポカンとして辺りを見渡す。

 どうやって一瞬で移動したのか分からず、4人は立ち尽くすのだった。これは魔法と言っても良いだろうと思うのだが、栗山を含め魔法を使える者は誰もいない筈である。


「さぁ、報告をして、さっさと村へ戻るぞ」


 先を歩く栗山の後を追いかける4人は、狐に化かされた気分で王都をの道を歩いて行き、門番が立っている場所まで来て、ことの事情を説明すると、待つように言われたのでしばらく待っていると、別室へ案内された。


 前のように謁見の間ではなく、打ち合わせを行うような場所であった。

 そこのソファーに腰掛けて待っていると、ノックも無しに小太りのオッサンが入ってきた。


「貴様が竜殺しのクリヤマか?」


 挨拶もなく唐突に話し掛けてきて、少しイラッとしたが、癇癪を起こしても仕方がない。これが貴族って奴なんだろうと思いながら自己紹介をしたのだが、目線は栗山の後ろを向いており、話を聞いているようには思えなかった。

 後ろには4人が立っていて、彼女たちを舐めまわすように見ているようで、栗山は咳払いをして自分の方に目を向けさせる。


「それで、鉄鉱山を見つけたと言ってたのはお前か?」


「はい」


「竜殺しの仲間に、土魔法を使える者がいたと言うのか?」


「――へ? 土魔法?」


 もちろん、栗山がこっちの世界でのやり方を知るはずもない。そして、4人も同じく知るはずもなかった。

 男が馬鹿にしながら説明し、初めて魔法を使って調べるやり方を知る。


「鉄鉱山だったら、インゴットの一つでも持ってくるんだな」


 高らかに笑いながら男は言い、栗山たちに帰るよう言ってきた。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 山で採れた鉄で作ったインゴットならあります!」


 立ち上がってインゴットを取り出す栗山。

 袋から取り出すようにインゴットを召喚して、男に見せる。

 いつの間にその様な物を作ったのかと、驚く4人。

 召喚したインゴットを手に取って、品定めをする男。この男は財務大臣であり、鉱山などを管理している男。

 名前はニフティ。

 召喚されたインゴットは物凄い純度の高い鉄であり、不純物が全くと言って良いほど入っていない代物で、この様な純度の高い鉄のインゴットは、どの土魔法使いだとしても作れやしない物であった。品定めをしていたニフティは、驚きながら質問する。


「ほ、本当にこれが採れるのか?」


「え? あ……はい、まぁ……」


 曖昧の様な返事をして、その場を取り繕うとする栗山。信じられないといた顔をするニフティは、慌てて立ち上がって部屋を出ていってしまう。そして、国王の元へ行き、鉄鉱山のことを報告した。

 取り残された栗山たち。どうして良いのか分からず部屋に残っていると、執事のような格好をした人がやって来て、付いてくるよう命令してきた。

 言われるがまま栗山たちは、執事のような男に付いていくと、また別の部屋に通された。

 そこの部屋にはニフティがおり、ソファーに腰掛けていた。

 栗山たちが部屋に入って、何が起きているのか分からず立っていると、別の扉が開いて国王がやって来る。

 4人は国王を見たことが無いが、王冠を被っているのに気が付き、直ぐに膝立ちして頭を下げる。栗山も合わせるように頭を下げる。


「よい、面を上げよ。ここは公式の場では無い」


 国王が言うと、栗山は直ぐに頭を上げるが、他の者たちは頭を下げたままでいた。


「財務大臣から話は聞いておる。準男爵のクリヤマが鉄鉱山を探し当てたらしいな」


 国王の言葉に栗山は「はい」と答える。国王には言いたいことは山ほどあるが、ここは我慢だと自分に言い聞かせる。


「だが、魔法使いが居ないのにどうやって見つけたのだ?」


「――はい、国王陛下もご存知かと思いますが、地質調査なる作業を行い、発見致しました」


「そうか、地道な調査を行ったというのだな?」


 知らないと思って言ったのだが、国王知っていたようで、逆に驚かされたが、顔に出すわけにはいかないため、ポーカーフェイスで頷いた。


「だが、光を焦る事で村の発展を怠るのは宜しくないな」


「――え?」


「クリヤマが村へ行ったのは一カ月前だ。そんな早く結果を出すということは、村を蔑ろにしてでないと無理であろう……」


「陛下、それは違います」


 栗山の言葉に、国王は怪訝な顔をする。


「村に水路を作り、畑の開拓なども並行に行ったことで、村は活気に溢れてヤル気になっております」


 水路に畑の開拓。この二つを早く行うためには、どうしても土魔法を使える者が必要になる。しかし、地質調査を行い、畑を開拓し、水路まで作ったとまで言っている栗山の元には、魔法使いが一人もいないのを知っている国王。


「そこまで自信を持って言うか……。ならば、村に調査隊を送っても構わぬと言うのだな?」


「構いません」


 国王は「よかろう……」と言って、直ぐに調査隊と、鉱山の調査隊を送るよう指示し、部屋から出ていこうとしたが、直ぐに足を止めた。


「もしも嘘であった場合、貴様は儂に嘘を付いたという大罪を犯したことになる。それを忘れるなよ」


「本当だった場合、どうされますか?」


 栗山の言葉に国王は「何でも言うことを聞いてやろう」と、鼻で笑いながら部屋を後にしたのだった。

 その後、栗山はニフティに怒られたのは言うまでもなかったが、嘘を言ったわけではないので聞き流すのだった。

 そして、栗山が逃げ出さないように、ミールと名乗る騎士が見張り役で行動することとなったのだが、この騎士は4人にちょっかい出そうと、時折下心を覗かせてきて、4人はスタンガンを持ち歩くようになったのは別の時に語ろう。


 ミールとの挨拶もそこそこに、栗山たちは村へ戻ることにし、不思議な扉を召喚して一気に村へと帰ってくるのだが、ミールが騒ぐ騒ぐ。

 4人にどうやって移動したのかとミールは聞くのだが、逆にどうやって移動したのか自分たちが聞きたいと言い返す。

 結論的には栗山が何かをしたのだということで話は終わるが、答えには辿り着くことができないで終わっている。

 村に戻ると、ミールは「村と言うには小さ過ぎるな……」と呟く。そんな事は言われないでも分かっている栗山たちだった。

 栗山はミールに水路を見せたあと、開拓した畑などを案内することにし、その間に4人には山までの道を作るために木の伐採を行い始めてもらった。

 ミールとしては、栗山の案内よりも4人の行動が気になっていたのだが、命令には背けず仕方なしに説明を聞いていた。


「一つ気になるのだが、この村の家は誰が建てたんだ?」


 ミールが村民に尋ねると、村民は準男爵さまが作ってくれたと言いう。


「おいおい、……あの冴えない準男爵が、水路を作って畑を開拓させ、おまけに村の家まで建てたというのかよ?」


『準男爵さまは、鉄の箱でできたヘンテコな獣を操り、唸る鉄馬で畑を耕してくれました』


 正直、村民が何を言っているのか分からないミール。兎に角、栗山が嘘を言っていないことだけは分かっただけで、その他は全く理解ができなかった。

 しばらくすると、離れた場所で何かが唸っているような音が、村中に響き渡る。ミールは剣に手を添え、音がする方を見るが、村民は気にしたような素振りを見せずに自分の仕事へ戻って行った。

 どうしてそんなにも冷静なのかと村民に尋ねると、「準男爵さまが作業をされている」と答える。その栗山を見失ったミールは、慌てて村の中を探すのだが、栗山の姿は無く、仕方なしに音のする方へ向かった。

 音のする方に近づくにつれ、化け物が居たらどうするかと思いながら剣に手を添えて近づいていく。

 すると、そこにはゴーグルを着けた2人が不思議な物を持ちながら木を伐採しており、側には鉄の箱の竜見たいな化け物があり、それに2人が座って何かを動かしていた。

 そばには、栗山が4人に指示を出していた。


「――クリヤマ殿! これは一体何をやっているんです!」


 怒鳴るように言わないと声が届かないため、ミールは大きな声で質問した。


「え? 何って、見ての通り、木を切り倒して、切り株を退けているんですよ」


 チヒとカルミの2人がチェーンソーで切っていき、カミュとコレットが切り株をパワーシャベルで掘り起こして退けていく。

 現代では当たり前の光景だが、魔法が栄えている異世界では、これは異様な光景でしかない。

 目の前で起きていることは、現実なのだろうか……と、ミールは思いながら立ち尽くすのだった。

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