49.恐竜みたいな生き物
村を見て回って分かったこと、それは水の確保である。近くにある畑と言っても、村からかなり離れた場所にある川の近くに作っており、そこまで行くに小一時間ほど歩かなければならない。
「先ずは水か……」
いくらインチキな力を持っているからといって、水を作り出すことはできないだろうとカミュは思いながら、悩んでいる栗山を見つめる。
「この川の水を、村の方に引っ張るしかないな」
栗山が導き出した答えに、4人は「どうやって引っ張って来ると言うんだよ」と、心の中で呟く。
「まず、村の周りに水路を作るか」
「で、ですけど……どうやって水路を作るって言うんです? スコップ一つも無いのに……。王都へ戻り、道具を変えるだけ買うんですか?」
コレットが困った顔をしながら質問する。
「いや、シャベルカーを使って作業するつもり。これは俺一人ではできないから、全員で行う」
「「「「喋るか?」」」」
初めて聞く言葉に、4人が声を揃えて口にした。
「シャベル。言葉を発する喋るじゃなく……まぁ、取り敢えずは見ててくれ」
そう言って袋からシャベルカーを取り出すように召喚をすると、4人は見慣れない物体に口をあんぐりさせ、見つめていた。
栗山はシャベルカーに乗り込み、説明書を読みながら動かし始める。
説明書を読みながら動かしているから、動きはぎこちないが、栗山は穴を掘り始め一通り動かし、栗山はシャベルから降りて4人のもとへ行く。
「動かし方は俺が教えるから、お前たちは道水路となる道を作ってくれ」
ようやく固まっていた4人が、我を取り戻し声を上げた。
「あ、あれは化け物ですか!」
「あれに乗っても良いの!」
「どういう仕組みで動いてんのよ!」
「あれも魔導具なんですか!」
同時に喋り出すので、何を言われているのか分からない栗山。
「同時に喋るな、何を言っているのか分からん」
そう言うのだが、4人は我先にと喋るので、栗山は耳を塞いで空を見上げた。それから暫くして、4人は落ち着きを取り戻した。
「それで、あれで穴を掘り進めるのは分かったけど、どうやって木を切るの?」
カルミが質問をしてくる。
「それは、『これ』を使って切る」
そう言って取り出したかのように召喚したのは、チェーンソーだった。
目の前にある大木に切れ目を入れ、シャベルに乗り込み木を倒すと、再び4人はあんぐりと口を開けるのであった。
取り敢えず4人が怪我をしないよう、十分と注意を与え、チェーンソーの使い方と、シャベルの操縦方法をレクチャーし、今日は運転や操作に慣れてもらうことにした。
夜は村の人を集めて食事を振る舞い、その後、明日に備えてキャンピングカーでゆっくりと休む。
翌朝から轟音を響かせ、木を切り倒して道を切り拓く。二人一組となって作業をして行き、夜は村人全員に食事を振る舞って、一週間後には村総出で水路を作っていた。
初めは貴族の道楽と思われていたようだったが、4人が道を切り拓いているとき、栗山はバラックのような家を改築していき、皆が住みやすい家を作っていった。
それに感謝をしない者はいない。子供から大人までが一つの作業に力を入れ、半月もしないうちに水路は完成したのであった。
「まずは水の確保ができたな。次は畑か」
流石に、畑は桑で耕すしか方法が無いだろうと思っている4人。栗山は畑となる場所を選び、線を引いていく。
「流石にシャベルで耕すのは難しいよね」
遠目で栗山の動きを観察しながらカミュが呟く。
「でも、水路ができた事で、村の人達はヤル気を出してるじゃん」
チヒが言う。
「だけどさぁ、ゼロから畑を作るのは大変だよ? それこそ私らも桑を手にして働かなきゃじゃん」
カルミがチヒに言うと、ちょうど線を描き終えた栗山が戻って来た。
「ねぇーチアキさん、畑はどうやって作るつもりなの? 今度こそ道具が無いよ?」
「耕耘機で耕すから大丈夫」
再び意味の分からない単語が飛び出し、4人は声を揃える。
「「「「こうんき?」」」」
「畑を耕す機械だよ。取り敢えず、黙って見ててくれ」
言われるがまま、4人と村人たちは離れた場所から栗山を見つめていると、栗山は耕耘機を召喚して、説明書を読み始める。シャベル等とは違い、何やら小さい。
そして、スイッチを入れ動かし始めると、土は耕されていく。途中、大きな岩にぶち当たると、シャベルを使って岩を動かし、あっという間に畑が耕されてしまう。
『あんれま、あっという間に畑が出来ちまった……』
『領主様は妖術使いなんだべか?』
などと、村人たちは声を上げながら喜ぶ。栗山は耕耘機の使い方を村人に教え、一家族一台耕耘機を与えた。
「畑の問題もこれで解決だな。次は村に家をたくさん作り、人を呼び込むか?」
腕を組んで考えるていると、4人が近寄ってきて、発展させる案を考える。
「村の開拓するのなら、もっと人が必要だと思うよ」
チヒが人を集める必要があると言うと、コレットが「資源回収が目的なんですから、そちらも調査する必要があります」と言う。
4人は栗山の代わりに村人たちへ資源について聞いてみると、山の麓で鉄鉱山があるということだが、その鉱山はカーディナル王国の領土らしく、山に踏み入れることができないらしい。
「なんだよ、そんなの駄目じゃんか。どうやって資源を採取しろって言うんだよ」
村人の話を聞いたカミュが呟く。
「けど、森の方を調査した訳じゃない。もしかしたら森の方に何かあるかも知れないでしょ」
愚痴るカミュの代わりにコレットが言い、ドローンを栗山から借りて、それを使って、何かないかと上空から探していると、大森林の奥に洞窟のような物を発見する。
「あれって洞窟かしら?」
モニターを覗きながらコレットが言う。
「近づいてみればわかるじゃん」
周囲を警戒していたチヒが言う。
「これ以上は近づけないみたいなのよ。私たちが行ってみるしか方法がないわ」
チヒの言葉にコレットが言う。機械担当はコレットの役目である。
「でもさ、勝手に調査へ出かけたら、チアキさんに怒られちゃうよ?」
人一倍警戒心が強いカミルが言うと、カミュが「バレなきゃ良いんだよ」と言い、3人は顔を合わして考える。
「行ってみる?」
「帰ってこれる距離?」
「バカ、報告でバレるでしょ」
冷静なカルミの言葉でバレることを理解し、4人は先へ進むことを諦め、分かる範囲で報告しに戻ることにした。
家に戻り、栗山に調査した結果を報告する。4人が調査しに行っているあいだ、栗山は村人たちと共に畑に植える種について話し合っていたり、植えるための種を配っていたりしていたのであった。
「調査した結果、大森林の奥に洞窟らしき物があるのが分かりましたが、本当に洞窟なのか分かりませんでした。明日にでも調査へ行こうと思うのですが、許可をいただけますか?」
椅子に座って録画したデータを観ている栗山にコレットがいう。
「……調査って4人で?」
「はい、4人でです」
こういった話をする時は、必ずコレットが話す。
「うーん……。洞窟の調査するよりも、先ずは大森林の調査が必要じゃないか? その洞窟まで行くにも、どのような生き物が出てくるか分からないだろ」
たしかにと呟く4人。
「では、明日は大森林の調査を行なっても良いでしょうか?」
「俺もついて行きたいけど、明日も種に関して話し合いが行われるから……」
申し訳なさそうな声で栗山が言うと、カミュが「大丈夫だよ、4人で行動するから」と、意味の分からない自信をみせる。
それが心配と栗山は思いながら、4人に任せることにした。
翌日……。
「チヒ、右に回った奴を始末して……」
音を拾いながら、双眼鏡で相手を見てつつカミュはチヒに指示を出す。
「了解っ!」
スコープに獲物が入ってトリガーを引く。
「カルミは?」
もう一匹の獲物を狙っていたカルミに聞く。コレットはドローンを使って探索をしており、狩りは3人で行なっている。
「言われなくても仕留めたわよ」
覗いていたスコープから目を離し、一息つくカルミ。
「コレット、何か分かったことがある?」
カミュがコレットに問い掛ける。
「うーん、もうちょっと近寄らないと分からないかな」
空から探索していたコレット。そろそろバッテリーがヤバいことに気が付き、ドローンを戻らせる。
「これの体力が保たないから、一度戻らなきゃ駄目ね」
コレットはドローンを回収し、戻ることを提案する。
「仕留めた奴を回収してから……シッ! 何か良くない音がする」
カミュがみんなを黙らせ、音がする方向に双眼鏡で覗いてみると、恐竜のような生き物が闊歩しており、先ほど仕留めた獲物を回収せずに急いで4人は村へと逃げ帰った。
村へ逃げ帰り、カミュは興奮しながら大森林で遭遇した魔獣たちについて栗山に報告する。
「口で言っても分からん、何か映像に残してないのか?」
「――すごい大きい奴だったの! 前にブルネリアの町を襲った奴みたいに」
「町を襲った奴って、古代竜のことか? そんな奴を相手になんかできやしないだろ」
「そうだけど、そうじゃないんだって! こうやって歩きながらさぁ――」
「そんな危険な奴が居るのなら、調査は終了だな」
そう言うと、4人は不満そうな声を上げた。
「だって危険なんだろ? そんな奴らがいるような場所に、お前たちを行かせる訳にはいかない」
コレットが飛ばしたドローンの映像を、モニターで確認しながら栗山が言うと、それでも納得ができない4人は不満の声を上げるのだった。




