出会いは何時も突然に
どこまでも続く透き通るような青空が一面に広がる
世界には沢山の景色があるのに、今俺の視界に広がるのは空しかない
俺はただ寝転がってるだけ、それだけで容易に世界は一変する
風が優しく頬を撫でる、とても気分が良い
問題があるとしたら一つ
「俺は誰だ?」
まあそんな些事は、今俺に訪れている心地よい静寂に比べれば
『ドドドドド』
・・・時に訪れる大自然の音楽も気持ちが良いもんだ
突然の変化に少しばかり戸惑う俺を風が優しく
『ブオ~~』
・・・俺の周りを駆け抜ける動物さんが勇ましい風に変えちゃったね
だが突然の出会いも良いもんだ
俺は激しい風と駆け抜ける動物の群れにより閉じられた瞼を開く
開かれた視界の先には大きな牙が
「ぎゃあああああ!!」
俺は咄嗟に左に寝たまま転がる。
出会いは好きだが別れは好きじゃない。
色んな記憶が零れ落ちて、今自分を自覚したこの瞬間が俺の誕生日と言っていい。生まれて直ぐ死ぬなんて冗談じゃない。
俺は転がりながら牙が空を食らうのを感じた瞬間に跳ね起きる。
「こいつは・・・でかいな」
動物達はこいつから逃げていたのか、俺は油断なく相手を観察する
体長は4メートルはある・・・何食ったらこんなになるんだ?
二本の足で立ち上がり、顔の少し下にある二本の手は、大きく太い足に比べて極端に小さい。
まあ小さいと言っても鋭い爪だけでも容易く俺の全身を切り裂く程には大きい。
背面には大きな尻尾が生えている。
この生き物が何なのかは分からんが、どうすれば倒せるかは”理解”した。
俺は腰にある剣の柄を握る。記憶は無くとも体が覚えている。
まるで重さを感じさせない動きで鞘から剣を抜き放つ、柄の先には輝かんばかりの青空が
「―――は?」
刃がない・・・刃が無いぞ!?
俺は愕然としたが、考えてる暇はない。
俺は迫りくる爪の早さに合わせ柄で受け止めその力を後ろへの跳躍に変える。
相手との間合いは取れたが、すぐに詰められるのは間違いない。
今の俺には逃げる以外に手は無いがこの広い草原に逃げ場は存在しない。
「武器さえあればな」
「木刀ならあるよ」
投げられた木刀を振り向かずに受け取る。
「力を貸そうか?」
「これで十分だ」
俺は答えると同時に巨大な生き物に向かい走り出す。
右から迫る爪を左に跳躍してかわしつつ、クルリと回転する。
空振りした左手を流れるように木刀が追撃する。
遠心力に力を加えられ、今度は相手がグルリと回転する。
まるで二人で踊っているかのようだな。
俺は場違いな事を思いつつ剣に魔力を鋭く纏わせ固定し、木に刃を付ける。
「おらよっ」
目の前に迫る尻尾に木刀を振り下ろす。
景気のいい音を立て根元から落ちる尻尾と、豪快な音を立て倒れる巨体。
「ありがとよ、お陰で命拾いした」
「まだ死んでないけど大丈夫なの?」
「バランスがまるで取れてない体だからな尻尾を斬り落とされたら自力で起き上がる事も動く事も出来んさ」
「ふ~ん、あんな簡単に恐竜を倒すなんて、あんた凄いじゃない」
「ほう、あれは恐竜と言うのか」
「違うよ、それっぽいから勝手に私が言ってただけ、この辺りの主じゃないかな?」
「主か、確かに声を出さない獣なぞタダ者ではないからな」
「あ、それ私のせい!そいつの咆哮には毎度迷惑しててさ、いい加減腹立ったから音を封じてやったの、静かになっていいでしょ?」
お前の行為がいい迷惑だな・・・と思ったが、些細な事だ。
「突然現れたから驚いたよ」
「ふふふ、そうは見えなかったけど」
「ポーカーフェイスは紳士の嗜みなんだ」
「面白い人ね、名前を聞いてもいいかしら?」
「どうも記憶が曖昧でね、自分の名前すら思い出せない。好きに呼んでくれ」
「ふんふん、本当みたいね、ならゴンベエって呼ぶね!」
「おう、嬢ちゃんの名前は何て言うんだ?」
可愛らしいお嬢さんは、にっこり笑って軽快に答えてくれた。
「私はブレア!よろしくね!」
元気だね~。
「ところで何でゴンベエなんだ?」
「名無しだから」
・・・記憶が無いせいかイマイチ理解出来んな。
まあ、些細な事だ。




