遥かな因果
俺は今レアの部屋に来ている。
綺麗に整頓された部屋に幾つか並べられたヌイグルミ、可愛らしい小物類、魔女の部屋と言うより女の子の部屋と言った方がシックリ来る。
よく考えたら女性の部屋に入るのは初めてなんじゃないか?・・なんかドキドキしてきた。
「ケイジ様」
「な、なんだ!」
「ほほほ、まだ警戒されているのですか?大丈夫ですよ」
穏やかな瞳が俺を見つめて来る、その大きな黒い宝石に魅入られて、俺は言葉を失くす。
「―――別に警戒なんかしてねえよっ、女の子の部屋に来るのが初めてだから胸がドキドキしていただけだ!疑ってなんかないんだからな」
俺の言葉を聞いて顔を赤くするレア・・・怒ってんのか?
(基本鈍感なのに、さらっと女の子扱いしてくる困ったツンデレだね)
「こほん、どうぞ腰を掛けてください」
「あ、ああ」
俺は差し出された椅子に腰を掛けた
瞬間
手に、腰に、足に枷が填められていた。
「は!?」
異変は続く、椅子は有ろう事か変形を始め俺は十字の棒に磔にされた形になった。
「腰を掛けてくださいと言っているのに立ち上がるなんてケイジ様は謙虚ですね」
「どの口が言ってんの!?枷填められてんだけど!?俺嵌められてんだけど!」
「あらお上手」
「嬉しくねえ!何のつもりだ!?」
「だから実験の手伝いをして頂こうと」
「・・・普通に出来なかったのか」
「ほほほ、サプライズイベントですよ、より刺激的に、楽しく、危険な実験を楽しんで貰おうと思いまして」
「最後の『危険』ってなんだ!?危害は加えないんじゃないの!?」
「勿論です!危険はあくまで可能性ですから危害とは違いますよ?」
「何その高度な言い訳!?俺出来る範囲でと言ったよね!?」
「その直後に何でも付き合うと仰いました」
「・・・」
口では勝てない、ここは一つアルトを呼ぼう、風の精霊が聞き届けてくれるだろう。
「アルト~!助けてくれ~~~!」
「その切り替えの早さ、思い切りの良さ、流石はご主人様です」
(アルトちゃんへの対策はもう済んでたりするけどね)
「・・・抵抗は無駄のようだな」
「理解が早くて何よりです」
「何をするんだ?」
「その説明をする前に少し私の事を聞いて貰うわ」
「分かった」
「私の本当の名前は『藤野森咲』異世界から飛ばされてきた人間なの」
レアは話しだす
それはとても悲しく辛い物語
俺はただ静かに聞き入っていた
「―――という訳で、私は元の世界に戻る為に因果の研究を続けていたの、そして見付けたのが初心者の迷宮よ」
「?」
「ふふふ、不思議そうな顔をしているわね、あの迷宮には因果の魔力が集中していたの、それはあり得ない事、そして私が欲する物でもあるの、因果を操るには因果を超えなくてはいけない、私はその力の正体を探る為、姿を変えこの学園に潜り込み、迷宮を探ったわ、でも何も見付からないし何も起きない、他の学生に付いていってもそれは変わらなかった」
「俺の時は変な事ばっか起きたけどな」
「そこなの!ケイジ様が迷宮から出た時、因果の魔力はケイジ様と融合していたの、話を聞く限りではケイジ様は魔力操作で因果の魔力を吸収したんじゃないかしら」
「ああ、迷宮の魔力は吸収したな」
「その魔力を手に入れる為に私はケイジ様と同調する必要があった」
「それで使い魔に拘っていたのか」
「ええ、そうよ、ケイジ様が今朝夢の話をした時、因果の魔力の胎動を感じた。今なら実験が上手く行くかもしれない」
「元の世界に飛ぶ実験か?」
「それは最終目標、今回の実験の目的は因果を繋ぐ実験」
「成程な、話は分かった。ひと思いにやってくれ」
「ふふふ、潔いわね・・・私に使い魔として止める様命じる事も出来るのよ?」
「形だけの使い魔が何言ってんだよ、危険には慣れてるしレアの為だ。是非もない」
「―――必ず戻って来れるから心配しないで」
「伝説の魔女様の言う事だ。心配なんかしてない」
「ふふふ、任せて頂戴」
レアは鍵となる言葉を発する
「この世に悪があるとすればそれは人の心だ!」
その言葉を聞いた瞬間目の前が歪み意識を失った。
部屋に残るのは咲一人
後悔はない
必ず帰ってくる
それが叶わないなら私が連れ戻す
私は伝説の魔女なんだから
不可能なんてない




