二律背反
(ここまでか・・・)
手の感覚は無く剣を握っているのかすら分からない
魔物の数は幾万に及ぶ
霞む眼を凝らし目前の敵に向かい剣を振るう
「大旋風剣!」
衝撃波を放ち魔物を切り刻む
倒れそうになる体を剣を地に突き立て杖代わりにする事で保つ
「 !」
燃やされた魂が体に火を付ける、腕に力が湧いてくる
眼に再び光が宿る、俺の後ろには誰一人
「通・・・さない」
「ケ・・イジ様」
「・・・ん?・・・レアか」
俺は目を開き、レアにぞんざいな返事をする。
何か恐ろしい夢を見ていた気がするが思い出せない・・・む~~!
イライラしてベッドの上で足をバタバタさせる。
「俺は何の夢を見てたんだ~~!」
(ふふ、こういうとこは子供よね)
「ほほほ、お邪魔でしたか?後ほどお伺いしましょうか」
「・・・いや、大丈夫だ、少し夢見が悪くてな」
「どんな夢でしょう?」
「思い出せないが妙にリアルな夢だった気がする、遥か彼方の出来事を見ているような」
「・・・詳しく聞かせて貰えませんか」
「まっったく思い出せない」
「あらあら」
「思い出したら話すよ、調べはついたのか?」
「はい、アムネジアは偽名です。本名はコーワ・サボエラです」
「男みたいな名前だな」
「アトリちゃんが躍起になっていた貴族ですね」
「は!?・・・そいつは男だろ?」
「男と言う事になっていますね」
「妙な言い回しをする・・・どういう意味だ?」
「跡取りが他にいない為、女として生を受けたのに男として育てられたと言う事ですね」
「腕輪に食いついたのはそれもあるのか?」
「いえ、腕輪は件のロラン君に差し上げたようですね、命を狙われない為の配慮でしょう」
「今回の件にコーワは乗り気じゃないって事か」
「そこは間違いないですね、これでケイジ様の懸念していた案件は解決しましたね」
俺の懸念していた案件とは、ロランとアルトの身の安全の事だ。
お節介かもしれないが、貴族に関わる事は命を賭けるようなもんだからな、レアに頼んで情報収集と二人のお守りを頼み、万全を期したのだ!・・・アルトの交渉の下手さと俺の間抜けで台無しになるとこだったが。
「ああ、根本の解決にまでは至って無いが上出来だ」
俺の言葉を聞き、レアは笑みを深くする・・・嫌な予感しかしない。
「ほほほ、腕輪が人手に渡ったぐらいですか」
「悪かったよ」
「謝るだけなら誰でもできますよ?誠意を見せて欲しいですね~」
昔、家に取り立てに来ていた借金取りを思い出させるじゃねえか・・・レア、恐ろしい子!
「埋め合わせはするよ」
「具体的にお願いします!」
ぐっ!・・・ふ~~・・・落ち着け俺、ここで乗っかってはレアの思い通りだ。
(考えろ!さすれば道は開かれん・・・!!)
「何でも言う事聞いてやんよ!但し出来る範囲でな」
「では私の実験に付き合って下さい」
「結論早っ!・・・出来る範囲だぞ」
レアはガクッと膝を落とし、泣き崩れる――――え?
「何でそこで泣く!?」
「・・・私がケイジ様に危害を及ぼす行為をすると思われてる事を知り悲しくなって」
「思ってないよ!う、うわー実験楽しみだな、何でも付き合うぞ!」
「ほほほ、ありがとうございます」
(嘘泣きかよっ!)
・・・女って怖い




