運命
僕には選民思想がない
貴族の中でも知識と見識を深めた者にはそんな思考を持つ者も多いらしい
だけど僕の場合は違う
与えられた役割が歪すぎて、選ばれた人間などと思えなかっただけだ
ただ流されるままに生きる偽りの人生
終着点は僕には分からず親が知る
ほんの少しでも本来の自分を取り戻したくて
今日も僕は嘘に嘘を重ねる
―――― 僕 ――――
僕は屋敷へ急ぐ、息が詰まってしょうがない!一刻も早く屋敷に帰りたい。
「そこの人・・・貴方には不吉な卦が出ていますよ」
(僕の人生に吉兆など必要ないんだよ!)無視して屋敷へ急ぐ。
―――っ!
魔力も使わず目の前に飛んできた!?僕は武芸百般に通じている自負がある。
だが僕には今の現象が理解出来ない・・・まさか・・・精霊使い・・か?
僕は無視してると見せかけ慎重に様子を探る・・・
「お兄さんっ、サービスしますよ」
・・・こいつは僕の事を舐めてるな、少し乗っかってやるとするか。
「いくらだ?」
襲う素振りをすると心底怯えた顔で抵抗しようとする・・・なんだ天然か、少し楽しい。
「わわわ、わたし男ですよ?」
僕から見たらどう見ても女にしか見えないが乗っかってあげよう。
「何だ知ってて近づいたんじゃないのか、僕は男だろうが女だろうがイケル口なんだ」
ふふふ、なんて面白い反応をするんだろう!
僕はあらゆる手を使い、とことんからかう事にした。
だけど・・・
「私が一人男の中の男を紹介出来ますよ」
男の中の男という台詞に反感を覚えた。少なくとも僕の周りには腐ったような男しか存在しない。いいだろう、その話に乗っかろうじゃないか!
愚にもつかない男なら君に代償を払って貰うとしよう。僕は敢えて彼女との会話の内容をズラし僕に都合のいい方に内容を変更した。
最後の確認に相手が了承すればそれが真実となる。いい勉強になるだろ?
―――― あたし ――――
僕は着替えて女性の姿に変わる。
貴族には特権があるが、より高い地位を狙うなら醜聞は控えねばならない。
あらゆる意味で僕は常に別の存在になる必要があった。
酒場に行き目当ての男を待つ・・・来た!
―――これは予想を遥かに上回るな、思っていた以上の派手な出で立ちに僕だけでなく様々な人の視線が集中する。
・・・成程、確かにタダ者ではないね、さり気ない立ち居振る舞いから相当の熟練者である事が伺い知れた。
「姉ちゃん俺の奢りだ飲んでくれ!」
観察に集中したかったのに、どうも僕に近づいてきた男がしつこい。いい加減面倒なので飲んでしまうか・・・これは痺れ薬だな。
ニヤニヤしながら僕が飲むのを待っている・・・相手の自由を奪い好き勝手にする男か・・・もっとも僕の嫌う人種だな!
激しい怒りと共に自らの殺気を叩き込む! 僕の実力に気付き顔を青ざめさせる男、だがもう遅い。
僕はお前を許さない!
―――驚いた
僕という事情を考えて動かないと思ってたのに、彼は動きだした。
下心で近づいて来たのかとかとも思ったがそうじゃないみたいだね。
どうでもいい事で子供みたいに顔を真っ赤にして怒り出すし・・・男の中の男が聞いて呆れるよ・・・でも、嫌いじゃない。
飲み比べに僕が負ける事は決してない。貴族は飲みの席が多く酒の強さは一つのステータスだ。薬を入れらようが、飲み比べを挑まれようが対処の方法はいくらでもあるんだから。
悪いね僕の勝ちだ。
―――― 宿 ――――
僕はケイジとの契約を済ましたあと一人感慨にふけっていた。
しばらくすると隣から言い合いが聞こえて来るじゃないか、覚えのある声だと思い、魔法で声を拾う。
―――成程、あの時の精霊使いはこの為か、会話の流れから感じてはいたけどね・・・これこそ運命かもしれないな・・・少し早いが実行に移すか。
隣の部屋から出てきたローラを捕まえ、予定の変更を伝える。
「っ・・・そんな!」
突然の状況の変化に付いていけてないな、だがこれは決定事項だ。
ロランが一人になるのを待ち、暫く様子を見るつもりだったが・・・僕はまた予定を変更して直ぐに部屋を訪ねる事にした・・・あんな悲しい慟哭いつまでも聞いてられないだろ?
扉をノックし、返事を待たずに中に入り、音が外に漏れぬように魔法で遮断する。
「失礼するよ」
「~~~っ・・・貴方は!?・・・ローラまで」
懸命に嗚咽を堪え、取り繕うとする姿に仕方の無い事とは言え心が痛むな。
「君に真実を伝えておこうと思ってね」
「真実?」
「ロキ様!」
会話を切ろうとするローラを視線一つで黙らせる。
「ロキ様?」
僕に気付かないロランに特に訂正の必要も感じないので話を続ける。
「ローラのお腹には君の子供が宿っている」
「え・・・」
「いつか必ず君の下へ二人を返す事を約束しよう」
ロランは混乱して状況が把握できてないみたいだね・・・当然か。
「しかし・・・俺は先程ローラに別れを告げられたのに・・・」
「ああ、それは彼女の偽りない本音さ」
「・・・」
「だって君がこれ以上関われば君は消されるからね」
「は?」
「貴族にとって平民の命はお金より軽いんだよ、邪魔ならすぐに消される」
「・・・」
「彼女は君の事を愛してる。だから心から自分の事を忘れて欲しかった・・・たとえ君から恨まれてもね」
「・・・俺は」
「本当は君の安全を確保出来るまでこの話はするつもりは無かったんだが、偶然にも君の安全を確保する手段を得たんでね・・・君にはローラの為に全てを捨てる覚悟はあるかい?」
「あります!」
「なら話は簡単だ。君にはロランという存在を捨て『マエダ』という存在になってもらう、この腕輪を填めて、だがそれがいいと言ってくれ」
「だがそれがいい・・・これは!?」
「・・・何度見ても凄いな、君の姿は鍵となる言葉を発しない限り解除されない。君はその姿で新しい人生を歩め、僕の直属の部下を使い、君が一人立ち出来るまでサポートしてやる」
「・・・ロランという存在はどうなるのですか?」
「公の場は行方不明、こちら側では私が殺した事にしておく」
「何故こんな事まで・・・」
「貴族の事情など平民には一生分からんよ首は突っ込まないか、先程君が言ってたように貴族にでもなるしかないよ」
「・・・有難うございます」
「礼は必要ない。父の仕業とはいえ悪いのは元々こちらだからね、二人が会えるのは今日を除いたらいつになるか分からないよ、何か言っておく事はないかい?」
「ローラ・・・」
「ロラン・・っ・・ごめんなさい・・・ごめんなさい!私貴方に沢山酷い事」
「いいんだ」
「―――っ」
「返してもらうんじゃない・・・必ず迎えに行く!・・・待っててくれ」
「うん・・・うん!」
あ~~~熱い熱い、この熱が冷めない内に問題を解決したいな・・・。
僕の人生など捨てていた
でも自分のせいで他人が不幸になるのは許せない
父よ、僕は貴方に敵対する
貴族様の事情を書くとぐだぐだになるので省いてます。
今後書くかどうかは迷ってますW




