作戦開始
私がケイジさんに話した相談とは内容は簡単です。
先々日私が助けた男性、ロランさんと言うのですが、彼の抱える問題です。
彼には美しい恋人がおり将来を誓い合っていたそうです。
しかし一人の貴族が彼の恋人を見初めてしまった事で事態は大きく変わります!
娘は貴族の下に嫁にやると恋人の親が言いだし、恋人も仕方が無いと言います。
彼の両親も諦めろと言います・・・貴族が相手ですからね。
相手が貴族なので友に相談する訳にもいかず、自分一人で解決しようと貴族に話し合いに行ったら三人組のボディーガードにリンチにあったというわけです。
犯罪に厳しいこの国で何故このような無体が許されるのでしょうか?
それは法の厳しさは貴族以上の階級には関係無いからです。
貴族は人で、虫が平民、と言えば分かりやすいでしょうか?
人は虫を殺すのに一々許可を取りませんよね?
虫の鳴き声を理解しようともしないでしょう。
人と虫、それが貴族以上とそれ未満の差です。
解決する術を得て相談したら、ケイジさんは言いました。
色んな人の思惑が重なった場合、原因の大元になる部分の思考を変更すれば、問題は収束する。
そのために必要なら力になろう
―――さすがです。
私が得た解決法、それは先日の事です。
ギラギラとした日差しが私を強く照らします。
この蒸し暑い日に私は全身黒のローブに身を包みフードを被り路上に座っています。
一見変質者ですが、机の上の水晶が私の職業を保障してくれる筈・・・です。
私は今占い師に身をやつしています。
皆まで言わないで下さい・・・言いたい事は分かります。
しかし私なりに話を聞いてもらう為に懸命に考えた作戦なのです。
狙いは結婚相手の貴族、噂を聞いて回りましたが平民からの人気も高い為、上手く立ち回れば話しぐらいは出来る筈です。
―――雑談はここまでです!どうやら目当ての相手がきたようです。
「そこの人・・・貴方には不吉な卦が出ていますよ」
・・・無視されました。
しかし
『作戦とは二重三重に網を巡らせれば必ず上手くいくものです』
と私は失敗した場合の策を考えてます!
私は特に気にする事無く次なる作戦に移ります、コードネームはGOD!
私はシルフを使い私と占い露店を通り過ぎた相手の前に移動します。
突然目の前に現れた私に対し、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をされてます。
効果ありかな?
先ずはGです!
「今なら見料無料で構いませんよ!」
まだ!
「お得な占いですよ!」
強引に!
「街の百万人が当たったと言ってます!」
・・・無視ですか・・・ならOです!
「貴方の後ろに霊が見えます」
D!・・・シナを作ってにっこりと。
「お兄さんっ、サービスしますよ」
「いくらだ?」
成功ですかね?・・・あれ・・・何を・・・いやあああああああ!
成功じゃなくて性交されるとこでした・・・。
「わわわ、わたし男ですよ?」
「何だ知ってて近づいたんじゃないのか、僕は男だろうが女だろうがイケル口なんだ」
―――これは衝撃です。
一瞬頭が白くなり思考が停止しますが、これは一つの前進と言えるのではないでしょうか?私の考えた作戦は全て失敗と言えますが、ここは臨機応変にいきましょう。
「私はですね」
「やらないか?」
・・・(変態です!)下半身を露出した相手に叫び出したいのを堪え、会話を続けます。
「貴方の様な美しい方なら既に美しいお相手がいるんじゃないですか?」
「相手は沢山いるが、今は結婚を控えていてね?あまり無茶は出来ないんだ」
(そう思うなら下半身をしまってください!)
「私が一人男の中の男を紹介出来ますよ」
「何!?・・・条件は何だい」
「先ずは結婚の話を詳しく伺いたいのですが」
「いいよ、これは政略結婚というやつだね、美しい僕と美しい彼女を結婚させて、生まれた子供を良い家柄に養子に出すのさ、僕はより家柄の高い女性を妻にする必要があるので正妻ではなく妾としてだけどね」
「貴方はそれで納得出来るのですか?」
「貴族とはそういうものだ。それに今回の話しは全員乗り気なのだから何も問題はないよ」
「相手の女性には恋人がいたと聞きますが、そこは問題にならないのですか?」
「それは彼女に振られただけだろう?間違いなく彼女は乗り気だ。僕が保障する」
「・・・相手の男性が貴方の屋敷に伺い、暴力にあったと聞いていますが?」
「それは父の仕業だね、平民が意見を言うのが気に障ったのだろう、僕には特に選民思想は無いからね、少しやり過ぎとは思うが、その男が貴族を知らなすぎるな、殺されても文句は言えないぞ?」
「結婚の取り消しに協力して頂けますか?」
「協力してもいいよ、ただし!その前に一度その男の中の男に会わせてもらう、それで僕の眼に適えば良し、駄目なら君に相手してもらうよ?」
「下半身での相手は出来ませんが会話でならお相手しますよ」
「上の口でお相手か・・・いいね」
今何か決定的なズレを感じた気が・・・寒気がします。
「交渉成立です」
私達は握手を交わしました。
男の中の男に関して結果だけ言うと、非常にお気に召されたようです。
私は次の日、ロランさんに会いに行きました。
密談を交わす為に宿の一室をとっています。
「結婚は?」
「破談」
お互いを知る為の合言葉です。ふふふ、一度やってみたかったのです。
「それではロランさん情報交換といきましょう」
「はい、私の方は彼女と話し合おうとしたのですが、どうも避けられてるようで会う事が出来ませんでした」
寂しそうな横顔に先日の話を知る私の心はチクリと痛みます。
「そうですか・・・私の得た情報は二つ、一つは結婚相手は破談に協力してもよいと言っています」
「本当ですか!」
興奮して会話に割り込むロランさんを手で制します・・・問題はこちら。
「もう一つは彼女は結婚に非常に乗り気だそうです」
「そんな・・・俺は一体何の為に!?・・・くそっ」
「どうしますか?このまま諦めますか?」
「・・・ローラの意思を自分自身で確認します・・・ローラの望んだ結婚なら私は喜んで身を引きましょう」
自らの心を理性で抑え込み彼女の幸せを願うロランさんに出来る限り力になりたいと心を新たに思いました。
今、丁度彼女は今一人で買い物中のようです。
私はシルフに礼を言い、ロランさんとの話を一度切り上げローラさんの下に行きました。
「こんばんは、ローラさん少しロランさんの事で話があるので付き合っていただけますか?」
「私には話す事はありません。ロランには私の事は忘れてと言ってください」
そんな訳にはいきません、会話は成り立ちそうにないので有無を言わさず担いで宿に連れ込みました。
「ああ、すまないローラどうしても一度話がしたかったんだ」
「・・・いいのよロラン、でも御免なさい!私にはもう、あの方と結婚するしかないの!私の事は忘れて・・・」
・・・非常に嘘くさいですがロランさんの為に本音で話してもらう必要があります。
私はレアさんから頂いた粉を部屋にばら撒きます。
この粉を吸い込んだ人間は嘘を言えなくなる魔法薬・・・魔女の薬は怖いです。
「貴族の暮らしは平民とは比べ物にならないわ!ロランは好きだけど、コーワ様も素敵だし、私は貴族になりたいの!もう私に構わないで欲しいわ」
「それでも俺は君を愛してる!君を離したくないんだ!君が望むなら俺は貴族になってみせる!俺に付いて来てくれないか!?」
「悪いけど夢見がちな子供に付き合うつもりはないの、次にこんな真似をしたら家族もろとも訴えるわよ」
「・・・そうか」
ロランさんは暫く俯いてから、顔を上げる、そしてとても素敵な笑顔で
「お幸せに」
そう言い切った。
ローラさんは虚を突かれた顔をして、少し寂しそうに
「さようなら」
そう言い切った。
ローラさんが帰った後、私はやり切れない思いでロランさんに謝罪しました。
「力になる事は出来ませんでした。御免なさい」
「そんな事はありません!アルトさんは十分力になって下さいました。本当に有難うございます!このご恩は決して忘れません」
私は何もしていません。
だけどこれ以上掛ける言葉は無く、出来る事は早くこの場を去る事だけです。
宿を出た後、シルフが一人の男の激しい慟哭を伝えてきます。
それは、とても純粋で悲しい音色。
寮に帰って一人黄昏ているとケイジさんがやってきました。
なにやら怖い顔をしていますがなんでしょう?少し半泣きにも見えます。
「アルト・・・話がある」
いい年なのにお尻をペンペンされました。
・・・癖になったらどうしましょう。
感想で面白い話があったので取り入れてみましたW




