脱走
皆明日の作戦に備え寝静まっている・・・。
話をしてみたが皆気持ちの良い人間だ。国の過剰な対応は間違いないだろう。こういう状態は普通何人か、やさぐれるモノだが、そういった様子も感じられない。これはリンのリーダーとしての資質に依るモノが大きいのだろう。
俺は突然起きた天災のような出来事をすんなり受け入れていた。
元々何時死ぬか分からない生活を繰り返してきた。こういう事もあるんだろう。(ねえよ)
ん?・・・まあいい、俺は明日の脱走計画について考える。
闘技場の内部は完全な密室となっており出口は存在しない。あるのは上にある小さな空気穴だけである。食事も空気穴を通じ支給される。扉は完全に機械仕掛けになっており、結界を張られている為魔法は一切使えない。外に続く道はただ一つ、円形の戦闘フィールドから見える観客席のみ。
脱出のチャンスは戦闘の開始直前、こちらのゲートが開いた直後。
魔物のゲートが開く前に観客席から脱出する・・・か。
俺は鉄格子に触れて流れる魔力の流れを操作し内に取りこみ鋭い刃のようにした魔力を固定させ鉄格子の上下を切り裂く。逆手で切り取った鉄棒を束ねていく・・・よし問題ない。
俺は皆に声を掛ける。
「すまんが俺は今逃げるわ、短い間だが俺達は仲間だったぜ!」
ビシッと親指を上げて華麗にその場を後に・・ギュッ・・・。
「リン、離してくれないと逃げれないんだが?」
「ちょちょ、ちょっと待って、あんた今何したの?あたし達と逃げるんじゃなかったの!?」
「計画について考えたんだけどさ、上手く行きそうにないから自力で逃げようかなと」
「はあ!?なら計画は変更!あたし達はあんたに付いていく、それでいい?」
「いいけど・・・俺はリン達と違って無計画だぞ?」
「元々一か八かの賭けだったの、ならより分のある方に賭けるだけよ」
「何故俺に付いてきた方が分があると?」
リンは俺の手にある格子を指差す。
「今の状況を見れば一目了然でしょ?」
「・・・責任は持たないぞ」
「上等!ガク、スケル、サン、ラギリ、もう起きてるわね!?逃げるわよ!」
「「おお」」
皆は何の疑問も無くリンに付いていく・・・カリスマだね。
連行される時に道筋は覚えている、俺達は迷う事無く観客席へ続くゲート前に来る。
俺は鉄格子と同じ要領でゲートを切り裂き円形のフィールドに出る。
俺は壁に魔力を張りつかせスイスイ登って観客席に。
「信じらんない、ケイシあんた何者?」
「気にするな、それよりリン達にこの壁を越える方法はあんのか?」
上手く偽名が思いつかないのでケイシと上手く捻ってみた(上手くない)ん?
「もちろんよ!ガク、スケル、サン、見せつけておやりなさい!」
三人は組み体操のように肩の上に乗っていく、見事な人間梯子の出来上がりだ。
やるな~
リン、ラギリと登り、下の人間から登っていく。器用な奴等だ。
ここまで来たら逃げたも同然!俺達は闘技場を脱出した。大した事なかったな
「あんたが異常なだけ!」
さいですか。
「ケイシはこれからどうすんの?」
「詮索は無しだ。お互いここで後腐れなく別れよう」
「・・・行くよ皆!」
結局収穫は無かったし、疲れただけか・・・くそっあの女!
――――隠れ家――――
「リン!よく無事で帰ってきたな」
「ああ、もう帰って来れないと思ってたんだけどね、上手く行ったよ」
あたしは用意された飯を食べながら皆を見渡す。
「あたし達は甘かった。国に対して口で言っても通じない所まで病んでる。今までのやり方じゃ同じ結果になるのは目に見えてる。一度潜る必要があるわね」
「国を出るか?」
「いや、暫く内側から情報集めに専念しよう」
「分かった」
さあ忙しくなるわね。
―――二つの影---
「予定とは違いましたが、彼女達の脱走は成功させました」
「有難う。これが今回の謝礼だ。彼女達と行動を共にして更に情報を送って欲しい」
「へへっ、任せてください」
影の一つは去り、残りは暫しそこに佇む。
「ふふふ、精々僕の手の平で踊ってくれ、君達には期待してるよ」
その場に静寂が戻った時には影も消えていた。




