剣闘士
チュラン国には闘技場がある
国の管理下で経営される公式な賭博場であり、人の死が簡単に見れる場所でもある。
入場料が必要で、必ず一試合は賭けなければならないという制約があるにも関わらず、常に満員になるほどの熱狂ぶりだ。
剣闘士は犯罪者と一般人の二種類が存在する。
犯罪者の場合――――
この国の犯罪者は全て剣闘士として送られ、罪の深さに応じて生き残るのが困難になっていく。
罪に応じた違い――――
魔物の強さ。与えられる武器。必要勝ち抜き数。時間制限あり(過ぎたら試合終了)。
罪が消えるまでの必要試合回数(時間切れは含まれない)。免罪金あり。
重犯罪者の場合――――
集団の犯罪者の場合全員参加。魔物もそれに応じて数が変わる。
魔物の強さは闘技場最強クラス。何回勝とうとも罪が消える事は無い。
与えられる武器はなし。免罪金無し。時間制限あり(過ぎたら試合終了)。
一般人の場合――――
希望者のみ参加可能、通常参加と決闘参加がある。
勝ち抜き数に応じて賞金授与。武器持ち込み可能。棄権可能(ニ度と出場不可に賠償金)。
出場回数に応じて魔物の強さと数が変化。時間制限無し(設ける意味がない)。
決闘――――
お互いの代表者を選出し、勝った方の意見が正しくなる。証人は観戦者。
敗者は一度だけ雪辱の機会を与えられるが、ニ度続けて負ければそれ以上の再戦は不可。
賭けについて――――
賭けられた額に応じて賭け率は変化する。
賭ける内容は単純明快。どちらが勝つか、もしくは時間切れか。
(時間切れは1倍~1,1倍)
国の政策は巧妙で、冒険者への依頼で魔物を捕獲している為魔物の数には困らず、ギルドの運営も円滑に進む。八百長がほぼ困難なシステム、剣闘士は不足することは無い。
消えていく魔物と剣闘士の命に反して巨額の財産が一日で築かれる。
そしてここは闘技場内牢獄・・・・
「・・・そんな場所に、何故俺はいるんだ?」
沢山の仲間(重犯罪者)に囲まれ俺は呟く・・・一人の男が人懐こい笑みを浮かべておれの傍に来る。髪は短く背は低い、体格は小さいが隙は無く、身は引き締まっている・・・デキルな。
男は囁くように俺に聞いてくる。
「あんた結構ヤルみたいだが何やらかしたんだ?」
「ああ・・・」
本当に、何やらかしたんだ?・・・・
一時間前―――――
俺はリッチに関して皆と口裏合わせをした次の日の朝、チュランの城下街にきていた。
貴族の家の周囲を探ろうとしての事だ。高い家柄は例外なくでかい屋敷に住んでいる、見付けるのは容易だ。後は屋敷の住人の数を把握し、全員の顔を見る。完璧とは言えないが、今は少しでも手掛かりが欲しいからな。
「っ・・・やめてください!」
ム・・・・屋敷の庭から悲鳴が聞こえるな・・・ハッ!俺は壁を飛び越える・・・シュタッ!
「そこまでだ!」
俺は女性を後ろに庇い相手の男を牽制する。
「何者だ!?」
(名乗る名は無い!)「まもるもはない!」
「何を言ってる!?」
クソッ、噛んだ、大事な決め台詞を・・・カシャッ・・・ん?何で助けた女性に手錠されてんの?
「現行犯逮捕です!そろそろ来る頃だと思ってましたよ・・・テロリスト『守る者は無い』私の狙いどおりです」
「なんだと!?・・・さすが一級捜査官だな、先程の非礼を詫びよう、君の能力は本物のようだなホシミ殿、まさかテロリストが私の命を狙っていたとはな」
「?・・・何の話」
「連行します!」
「待って?話をしよう!人にはそれが出来る筈だ!」
「テロリストに向ける情けはありません!」
そして現在――――
「で、有無を言わさずここに入れられたってわけだ」
意味が分からないと肩を竦める俺に反して男は合点がいった顔をする。
「それはツイてなかったな、そいつは誤認逮捕の鬼と異名を持つホシミ捜査官だな」
「その異名色々可笑しいよ!?なんで首になんないの?つうか俺マトモに話も聞いてくれなかったし、何なのあいつ?何でそんな凶悪な奴放置してんの?」
「それがな・・・奴の誤認逮捕は全て大手柄に変わるのよ、例えばより大きな犯罪を検挙する形になったり、逆に捕まえた人間からお礼を言われる結果になったりな、結果的に良い方向に行くから誰も手が出せないのさ」
「・・・恐ろしい女だな」
次から人助けをする時は少し様子を見よう・・・
「俺たちもテロリスト扱いされてるが実は違うんだ。お前のように誤認逮捕や小さな事で犯罪者扱いされ、闘技場に入れられ家族や友人を失った者達が国に抗議をしようと集まった集団が『守る者は無い』大事な者を失ったという意味さ・・・しかし国の対応は酷いもんだった・・・国に抗議をしただけで重犯罪者扱いで有無を言わさず牢屋行きよ。冒険者出身者が中心になり他の皆を逃がしたからここにいるのは屈強の男女ばかりだがな」
「腐ってるな」
相手が聞く耳一つ持たないのは俺自身実感してる。俺はもう重犯罪者・・・釈明は無理・・・闘技場に勝っても釈放はされない・・・金でも解決出来ない・・・残るは・・・。
「俺たちに出来るのは一つだけだ・・・魔物から逃げ切って一日命を引き延ばす事だけだ」
「いや、もう一つある」
「何だ?」
「ここから脱走する事だ」
俺の発言を聞いて男はニヤリと笑う。
「俺たちのリーダーの話を聞いて欲しい」
俺の傍に一人の女性が近づいていた。
蒼い髪を後ろに縛り、綺麗な顔立ちに強気な瞳が俺を真っ直ぐ見詰めている。
スラリとした引き締まった体が強さと美しさを見事に調和させている。
「あたしは『守る者は無い』のリーダーのリン、よろしくね!」
彼女達は一つの作戦を立てていた。
そして俺は彼女達の作戦に乗っかる事にした。
一回限りのデスORエスケープ
失敗は許されない




