約束
率直に言うと読み書きの練習は楽しさの欠片もない作業でしかなかった。苦痛しかもたらさなかったが、目標の為にここで挫けるつもりはない。俺は一向書き続ける事に没頭していった。徐々に手慣れ、正確になっていく自らの字に少しばかりの達成感を抱きつつ合間に休憩を挟む、これはルウに必ず一時間毎に休憩を三十分挟めと言われた為だ。俺は本棚から適当に本を取り出し読み始める。書き写しが効いたのか大分読めるようになっていた。読めない字はルウから貰った紙に指をあて読み方を調べた。
読んでる内に分からない意味があったので、ルウに聞いてみたら厳しく叱責された。
「これは一度君に教えた言葉だ。何故二回教えなければならない?」
「別にいいじゃん説明はすぐだろ?」
ガツンと拳骨頂きました・・・いやこれは鉄拳と呼ぶべきか?
「いいか?チャンスが二度君の元に訪れると思うな、聞き取る力は生き抜く上で非常に重要だ」
「じゃあメモを取ればいいのか?」
「それも駄目だ。メモを取るのは年を経て頭が鈍ってからでいいんだ。言葉を瞬時に理解し記憶する頭の回転と記憶力を鍛える事が最も重要だ。相手の言葉一つ一つを聞き逃すな、考えろ、緩い思考は今の君には必要ない。今回分からなかった意味は自分で調べたまえ」
「分かった」
この言葉は俺の勉強のスピードに大きな影響を示した。最初は厳しすぎだろと思ったが、ルウの言葉を念頭に勉強を始めて一ヶ月後には素早い理解力と自らで調べる力が身についていた。
ルウの言葉は本にも応用が効いた。字の羅列を瞬時に理解し記憶していく、半年後には俺は書庫にある本を全て読み尽くしていた。
頃合か?・・・俺はルウに切り出してみる。
「もう教えてくれても良いんじゃねえか?」
「君にそんな趣味があったなんて!」
変態!と言いながら一歩下がるルウ
「ねえよ!変な想像すんな」
最初の頃は俺の方が突っ込まれていたが、様々な知識を取り込んでからは逆に俺が突っ込む様になっていた・・・ひねくれた奴だぜ・・・「痛っ」殴られた・・・
「誰がひねくれ者だよ」
何さらっと人の思考読んでんの?魔法か?・・・いや魔力を感じなかった。
俺の思考を分かってますといった呆れ顔でルウが話し出す。
「魔法も使ってないよ、君は顔に出しすぎだ。誰でも分かるよ・・・君が言いたい事は以前した約束の話の事だろ?主語が足りないよ、気をつけたまえ」
「・・・悪かった」
「よろしい」
ルウは、わざとらしく鷹揚に頷くと、にこりと笑う。
「約束通り話すよ、僕の心臓は奇病に冒されていて、少しずつ小さくなっているんだ。誰にも治す事が出来なかったし、原因も分からない。強力な魔法で補っているんだが、治したわけじゃないからね・・・心臓が活動を停止するのが後一年と半年後ってところかな?」
俺は話を聞いて得心する。何故あれだけ苛ついていたのか?何の事はない。
俺は唐突にルウに話を切り出した。
「一つ賭けをしないか?」
「何をだい?」
「俺がその病気を治せたらルウは一生俺の従者だ」
「ふふふっ、いいよ」
「女だったら嫁にすると言いたかったんだがな・・・無念だ」
「へ、へえ・・・ほ、本当は男が良いんじゃないの?時々僕を見る目が怪しいよ?」
「やめれ!」
「ほら顔が赤くなった・・・この変態!」
「馬鹿を言うな俺は・・・騎士だよ!ルウを守る、な」
「え・・・変態騎士?」
「何故変態を付ける!?」
何の事はない・・・俺がルウに死んで欲しくないだけの事だ。
それから俺はあらゆる方法を探し試していた。
先ずは自分の体で異常がないかを確かめ、ルウに処方する。
あらゆる方法は徒労に終わり、最後に俺が縋ったのは伝説・・・
この世界最強のドラゴンに秘められた伝説
俺はドラゴンの血を手に入れ、ルウは摂取した。
成功したのか確認を取れてないが、俺は治ったと確信している。
だが安否は確認しておきたい。
「て訳で情報を得るため俺は学園に入り冒険者を目指しているのさ」
「ほう」「へえ」「はあ」
ジト目で見てくる三人にたじろく俺
「な、なんだよお前等」
「怪しいな」「怪しいです」「ほほ怪しいですね」
「ば、馬鹿、相手は男だぞ!?」
またもジト目で見てくる三人・・・どうしろと!?




