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森の生活

俺は母が見えなくなった後、口に仕込んだ刃物を慎重に股の間に吐き出す。

刃物に土をかけないよう慎重に移動し、後ろ手に縛られた右手に刃物を掴む


「よしっ」


手の縄を切り足の縄は解き、手足の自由を取り戻す。

母は俺の死によって枷から解き放たれた。

街にはもう戻らない、万が一にも母に遭う可能性がある。

俺も新しい自分をここから始めよう。



決して折れない心を


嫌な事を瞬時に解決する力を


自分自身の壁を破壊する覚悟を



ケイジの名の下に誓おう



それはいつか聞いた物語の真似事、されど決して崩れぬ真実の誓い



――――――


ケイジは周囲を観察しながら木々の間を歩き出す。

まずは安全な寝床を探す必要がある、ケイジは一つの大樹に目を付けた

取っ掛りが多く、幹の部分が長く枝が太めなのが視認出来る。

両手両足を器用に使い、蜥蜴のようにくねくね登っていく

滑稽な姿だがケイジは必死だ、枝分かれの根元に辿り着く、何とか寝れそうだ

縄を取り出し、手頃な太さの枝に括り付ける、これで昇り降りが楽になる。


縄を使い木から降りると目を付けていた植物と木の実を採取し、拾っていく。

再び木に登り、採取した植物と木の実を食べる。

運が良い事にケイジの採ってきた植物と木の実は毒性のない物だった。

ケイジは食べ終えた瞬間大きな疲労を感じ、眠りについた。


数日間植物と木の実で過ごし、ひたすら周囲の観察をしながらケイジは

自らの安全領域を広げていく、その日は崖下に洞窟を見つけ、中に美味しそうな

見た事のないキノコを発見した、ケイジが大喜びで採取してたらそれは起きた。

地面が激しく揺れ、耳をつんざく様な爆音と共に目の前が暗くなる、、、


「く・・・閉じ込められた」


ケイジは手探りで出口を探るが、子供の力での脱出は不可能と思えた。

取り敢えず腹ごしらえをしようとキノコを食べるが不運は続く


「う?・・・が!?・ぐああああ!!」


ケイジは世の中に毒がある事を知らない、さもあろう無学な4歳に

分かるはずもない、キノコの毒は腹痛のみであったが、受けた恐怖は

それどころではない、ケイジはそれから2日間飲まず食わずで過ごす。


胃が空っぽになり、意識だけが鋭敏に研ぎ澄まされていく、そして・・・。

ケイジに一つの変化が現れた、自らの内にある「「魔力」」を感じ取ったのだ。

ケイジは自らの意思で魔力を操作出来る事に気がついた、それはこの世において

数人しか使い手の居ない稀有の力、しかし自らの異常なまでの魔力の低さと

極限に研ぎ澄まされた感覚が不可能を可能とした!


ケイジは考える、この力があれば脱出出来るのではないかと

しかし体力はもう無い、残る方法は・・・。


「ぐ!・・・・がああああ!!」


それは極限の恐怖、トラウマと言ってもいい、それでもケイジはキノコを食べる。

生き残るために、ケイジはトラウマを乗り越えた。



数日後、毒キノコはケイジの修行の一つとなっていた。

魔力の体内操作により、毒の早期浄化が可能な事に気づいたのだ。

ケイジはいよいよ出口の突破に取り掛かる、右手に魔力を張り出口を塞ぐ岩

を切るが、少し切り裂いただけだ、これではキリがない・・・より明確に

鋭く薄い魔力の刃を作らないと・・・ナイフを取り出し、魔力を張ろうと

するが上手くいかない、やはり自分の体じゃないと難しいか・・・!!

なら体の一部にしようと思いつき、常にナイフを右手に持ち続けた・・そして・・・。


轟音が再び洞窟を揺らす、ケイジの全身を光が照らす、眩しくて右手で庇うケイジ


「出れた・・・っ!」


倒れそうな体を引きずり木の上に戻るとそのまま意識を失った。



―――――― 一年後 ――――――


ケイジは魔力操作の力で植物と木の実で食べられない物はなくなっていた。

その雑食性により、ケイジの毒に対する免疫力と抵抗力は非常に高くなり、

野生生活により、気配を殺す事と足に魔力を貼る事で物音を消す術を覚えた。


「ひゅっ」


低い吐息と共に小枝を木の幹に投げつける、先に刺さっていた小枝を

真っ二つにし、幹に突き刺さる、既にケイジは魔力操作を極めつつあった。

この森に自分を脅かすものは居ないだろう、ケイジは嬉しくなって笑う


「はははっはぁっはっ!はっ!!!はっ!!!!・・・・あがっ?あががっ!??」


ケイジの顎は外れていた、抜けているのは天然のようだ。


「痛い・・っ・・顎が痛い・・しくしく」


ケイジは一日木の上で泣いた。



その日ケイジは遠出をしていた。


自らの確保した安全領域と違い、森は薄暗く危険な気配を感じる。

しかしケイジは気にしない、自分ならなんとかなるだろうと自信に

満ちた歩みは止まらない、いつもの注意深い「「観察」」もない、、



それは過信



「ぐるるるぅ」 


目の前に狼が現れた。今にも襲いかからんと牙をむき出しにしている。

流石に身構えるケイジ、しかし自信は揺るがない、

自分の力は一振りで相手を切り裂く事が出来る!


目の前の狼を切り裂かんと切りかかるケイジ


「っ!?」


しかし切りつける前にケイジの背中を激しい痛みが襲う

狼は群れの生き物だ、一匹で行動することはまず有り得ない

しかし無学なケイジには分からない、油断していたため気付く事も出来ない。


切り裂かれた傷は深い、木まで戻っている暇はない・・・っ!

頭はフル回転し、周囲の「「観察」」を始める

浮かれたネズミは手負いの虎へ豹変する


ケイジは全魔力を背中の治癒促進に注ぎ込む、血は止まり傷は塞がる

攻撃手段は右手のナイフのみ、ケイジは目を閉じ全神経を魔力の

流れを感じる事に集中する、生物は全て少なからず魔力を纏っている、1匹、2匹

・・・全部で5匹か・・・。


後ろから2匹の狼が襲いかかる


前方の狼はこちらの動きを伺っている


左右の狼は少し遅れて襲いかかってくる、


後ろの狼が飛びかかる寸前で素早く右にステップを踏みつつ首を切り裂く

更に右足で絶命した狼を隣の狼に向け蹴りつける。


怯んだ狼を残し左右前方からくる狼


右から来る狼を無造作にナイフの柄で払う


左から来る狼を2本の指で目を抉りながら怯んでいた狼に向けて払う


正面から来る狼の喉元をナイフで突き上げた


「残り3匹・・・」


目覚めた虎に狼の群れはなすすべがない。




ケイジはこの日群れの恐ろしさをその身に刻み込んだ





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