表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四拍の円舞曲  作者: 石山
PR
8/12

8話 砂戦

 砂煙が舞っていた。

 見渡す限りの荒野。

 かつては軍事基地だった場所も、今では崩れた建物と無数の残骸だけが残っている。

 構造体が支配する区域。

 そこには、通常の戦場とは違う法則が存在していた。

 通信は不安定。

 視界は砂で遮られる。

 機械兵は地形を利用し、完璧な配置で迫ってくる。

「面倒な場所だな」

 NUTCRACKERはハマーのボンネットに座り、煙草に火をつけた。

 砂嵐の中でも、その姿は変わらない。

 黒いモッズコート。

 戦場用に改造された装備。

 そして、楽しそうな表情。

「楽しそうだな」

 FOURBEATが言う。

「戦いやすいからな」

「視界が悪い」

「だからいい」

 NUTCRACKERは笑う。

「見えないなら、感じればいい」

 二人は構造体の中枢へ向かっていた。

 目的は、敵の戦闘データの破壊。

 しかし、砂漠の中央で大量の機械兵が現れる。

 数。

 数。

 また数。

 まるで砂そのものが敵になったようだった。

「俺が前に出る」

 NUTCRACKERが言う。

「非効率だ」

「そうか?」

 彼はショットガンを構える。

「俺には効率より、やりやすさが大事なんでね」

 爆音。

 NUTCRACKERが突撃する。

 砂煙の中へ消える。

 普通なら自殺行為。

 だが。

 彼は戻ってくる。

 一体。

 二体。

 三体。

 敵の数が減っていく。

 銃撃。

 格闘。

 拾った武器。

 その場にある全てを利用する。

 戦い方に型はない。

 しかし、だからこそ読めない。

 一方。

 FOURBEATは後方から戦場を見ていた。

 NUTCRACKERの動き。

 敵の配置。

 砂の流れ。

 全てを分析する。

 そして理解する。

 彼の戦いは無秩序ではない。

 ただ、自分だけの法則で動いている。

「……」

 FOURBEATは少しだけ目を細めた。

 突然。

 砂の中から巨大な機械兵が出現する。

 構造体が作り出した戦闘用個体。

 通常の兵器とは違う。

 巨大な腕。

 高速演算。

 攻撃パターンの予測。

 NUTCRACKERへ向かって拳が振り下ろされる。

「遅いな」

 NUTCRACKERは笑った。

 避ける。

 ではなく。

 踏み込む。

 攻撃の内側へ入り込む。

 そして、巨大な機械の関節へショットガンを叩き込む。

 爆発。

 機体が崩れる。

 戦闘後。

 砂煙が少しずつ晴れていく。

 NUTCRACKERは煙草を咥えたまま立っていた。

 傷だらけ。

 だが、笑っている。

「終わったな」

 FOURBEATが近づく。

「無茶をする」

「お前ほどじゃない」

「俺は計算している」

「俺もしてるさ」

「何を」

 NUTCRACKERは答える。

「生き残れるかどうか」

 ハマーへ戻る二人。

 夕日が砂漠を赤く染める。

 しばらく沈黙が続く。

 やがてFOURBEATが呟いた。

「……意外と悪くない」

 NUTCRACKERが振り返る。

「何が?」

「この戦場だ」

 一瞬の沈黙。

 そして。

 NUTCRACKERは大声で笑った。

「お前、少しだけ人間になったな」

「意味が分からない」

「それでいい」

 ハマーは砂煙の中を進む。

 静かな死神。

 笑う鬼。

 二人の戦い方は、もう完全に一つの形になっていた。

 しかし。

 遠くで構造体は記録していた。

 二人の戦闘。

 二人の関係。

 そして。

 まだ知らない最後の結末を。

第8話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ