表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四拍の円舞曲  作者: 石山
PR
7/12

7話 構造体

 その街には、音がなかった。

 正確には、音が消えていた。

 風の音。

 車の音。

 人の声。

 本来なら存在するはずのものが、全て薄れている。

 FOURBEATは車の中から外を見る。

「妙だな」

 NUTCRACKERが煙草を消す。

「何がだ」

「静かすぎる」

 戦場とは、本来騒がしい場所だ。

 銃声。

 爆発。

 怒号。

 死の気配。

 だが、この場所にはそれすらない。

「敵は?」

 NUTCRACKERが聞く。

 FOURBEATは周囲を確認する。

「……いない」

「なら楽じゃねぇか」

「違う」

 FOURBEATは車から降りる。

「いる」

 二人が辿り着いたのは、廃棄された研究施設だった。

 軍の記録から消された場所。

 地図には存在しない区画。

 内部には大量の機械が並んでいた。

 だが、それは兵器ではなかった。

 都市そのものを制御するための装置。

「何だ、ここは」

 NUTCRACKERが周囲を見る。

 壁。

 床。

 天井。

 全てが一つの巨大な機械のように繋がっている。

 その時。

 施設全体が震えた。

 音ではない。

 声でもない。

 何かが、二人の頭の中へ直接響く。

『戦闘記録……確認』

『対象……FOURBEAT』

『対象……NUTCRACKER』

 NUTCRACKERが顔をしかめる。

「喋った?」

「違う」

 FOURBEATが答える。

「解析している」

 壁面の一部が開く。

 そこに映ったのは、巨大な戦場の記録だった。

 無数の戦争。

 無数の兵士。

 無数の死。

 全てが記録されている。

「これを作った奴は」

 NUTCRACKERが呟く。

「戦争が好きなのか?」

 FOURBEATは映像を見る。

「違う」

「じゃあ何だ」

「戦争を管理している」

 その瞬間。

 施設内部から無数の機械兵が現れる。

 敵。

 しかし、今までの敵とは違う。

 動きに感情がない。

 恐怖もない。

 ただ最適な行動だけを繰り返す。

「面倒だな」

 NUTCRACKERが笑う。

「いつもの奴らよりよ」

「学習している」

 FOURBEATは銃を構える。

「なら壊すだけだ」

 戦闘が始まる。

 FOURBEATは正確に敵を撃ち抜く。

 しかし、倒した直後。

 機械兵の動きが変化する。

 次の攻撃を予測されている。

「読まれている」

 FOURBEATが初めて言葉を失う。

 彼の戦闘は、相手の行動を読むことで成立していた。

 だが。

 この敵は。

 彼の戦い方そのものを解析している。

 その時。

 NUTCRACKERが前へ出る。

「なら俺の番だな」

 予測不能な動き。

 無理な角度。

 理屈では説明できない攻撃。

 機械兵の計算が狂う。

「お前の動きは計算できねぇだろ?」

 NUTCRACKERは笑う。

 戦闘後。

 二人は施設の最深部へ到達する。

 そこには、一つの名前が表示されていた。

『SYSTEM ENTITY』

 戦争を記録し。

 戦争を管理し。

 戦争を継続させる存在。

 構造体。

 FOURBEATは画面を見る。

「敵が変わった」

 NUTCRACKERが聞く。

「どういう意味だ」

 FOURBEATは静かに答える。

「今まで俺達が戦っていたのは兵士だ」

 一拍。

「これから戦うのは、戦争そのものだ」

 静寂の中。

 構造体が再び起動する。

 二人の新たな戦場が始まった。

第7話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ