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四拍の円舞曲  作者: 石山
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5話 拍の認識

 戦場には、音がある。

 銃声。

 爆発。

 足音。

 叫び声。

 普通の兵士なら、それらをただの騒音として聞く。

 だが、FOURBEATにとっては違った。

 全てが規則だった。

 敵の動き。

 味方の位置。

 弾丸の軌道。

 戦場に存在するあらゆる要素が、彼の中では一つの流れとして整理されていた。

 旧市街を抜けた二人は、廃棄された工業区画へ入っていた。

 目的は物資の確保。

 しかし、そこには先回りしていた敵部隊が待ち構えていた。

「囲まれてるな」

 NUTCRACKERが周囲を見る。

「数は?」

「三十以上」

 FOURBEATは即答する。

「少ないな」

 NUTCRACKERは笑う。

「普通は多いって言うんだよ」

 FOURBEATは返事をしない。

 銃を抜く。

 最初の敵が飛び出す。

 一発。

 倒れる。

 次。

 二発目。

 三発目。

 FOURBEATの動きは一定だった。

 まるで時計の針のように正確。

 NUTCRACKERはその横で敵を吹き飛ばしながら、ふと気付く。

「なぁ」

「何だ」

「お前、撃つ順番を決めてるだろ」

 FOURBEATは一瞬だけ視線を向ける。

「……」

「図星か」

 NUTCRACKERは笑う。

「ただ撃ってるんじゃねぇ」

 敵を殴り飛ばす。

「お前は戦場そのものを刻んでる」

 戦闘が終わった後。

 二人は廃工場の中で休息を取っていた。

 FOURBEATは銃の整備をしている。

 NUTCRACKERはそれを眺めていた。

「その銃」

「何だ」

「普通じゃねぇな」

 FOURBEATの手には、古い拳銃があった。

 ベレッタ1915。

 だが、原型とは違う。

 追加された装置。

 刻まれた彫刻。

 持ち主のためだけに改造された一丁。

「名前は?」

 NUTCRACKERが聞く。

「……まだ必要ない」

 FOURBEATは答える。

「そうかよ」

 NUTCRACKERは深追いしなかった。

 だが、確信していた。

 あの銃には意味がある。

 その夜。

 二人は敵の大規模攻撃を受ける。

 今までとは違う。

 数だけではない。

 連携された部隊。

 計算された配置。

 逃げ道を塞ぐような動き。

「こいつら、学習してるな」

 NUTCRACKERが言う。

「違う」

 FOURBEATは敵を見る。

「最初から、この形だった」

「どういう意味だ?」

「戦場には流れがある」

 FOURBEATは銃を構える。

「始まり」

 一発。

「繋がり」

 二発。

「終わり」

 三発。

 敵の動きが崩れる。

 戦闘終了後。

 NUTCRACKERは煙草に火をつけた。

「なぁ」

「何だ」

「お前の戦い方、名前があるのか?」

 FOURBEATは少し沈黙する。

「ある」

「聞いていいか?」

「まだだ」

 NUTCRACKERは笑った。

「いつか聞けるってことだな」

 FOURBEATは答えない。

 だが、その横で。

 NUTCRACKERは確信していた。

 この男の銃には四つの意味がある。

 そして、その四つの意味こそが――

 これから二人を待つ戦場の鍵になる。

第5話 終

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