表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四拍の円舞曲  作者: 石山
PR
2/12

2話 追走

 祝勝会の夜から三時間。

 帝都の裏路地は、昼間の華やかさとは別の顔を見せていた。

 雨に濡れた石畳。消えかけた街灯。遠くで響く警報。

 黒い礼装の男――FOURBEATは、一定の歩幅で歩いていた。

 焦りはない。

 追われていることも理解している。

 だが、それは彼にとって問題ではなかった。

「……十二」

 小さく呟く。

 背後から迫る人数。

 足音。  呼吸。  銃器の重さ。

 全て把握している。

 角を曲がった瞬間、FOURBEATは足を止めた。

「止まれ!」

 兵士達が銃を構える。

 しかし、次の瞬間。

 暗闇の中で一度だけ光が走った。

 銃声。

 先頭の兵士が崩れる。

 続けて二発。

 三発。

 敵が引き金を引くより早く、FOURBEATの弾丸が戦場を支配する。

 無駄な動きはない。

 視線。  指先。  引き金。

 それだけ。

 まるで決められた演奏をしているようだった。

「……つまらない」

 FOURBEATは倒れた兵士達を見下ろす。

 彼にとってこれは戦闘ではない。

 処理だった。

 だが。

 十数分後。

 状況は変わった。

 倒しても、倒しても追手が来る。

 軍の精鋭部隊。

 通常なら、一人で相手にする数ではない。

 しかしFOURBEATは表情を変えない。

 銃を確認する。

 残弾。

 距離。

 敵配置。

 全て計算する。

 その時だった。

「おいおい」

 聞き覚えのある声。

 振り返ると、そこには昨日の軍人がいた。

「随分と派手に追われてんな、少尉」

 FOURBEATは冷たく見る。

「なぜいる」

「面白そうだから」

 軍人は笑う。

「それだけだ」

「帰れ」

「嫌だね」

 その瞬間、建物の屋上から狙撃音。

 FOURBEATが動くより早く、軍人が彼を押し退ける。

「危ねぇな」

 銃弾が壁を砕く。

 軍人は周囲を見る。

「……銃だけじゃ足りねぇか」

 そして近くに捨てられていた武器を拾う。

 ショットガン。

「それ、使えるのか」

 FOURBEATが聞く。

 軍人は笑った。

「撃てりゃ十分だろ」

 次の瞬間。

 戦場の空気が変わった。

 FOURBEATの戦いは静かだった。

 だが、この男の戦いは違う。

 踏み込む。

 殴る。

 撃つ。

 倒れた敵の武器を奪う。

 また前へ進む。

 ショットガンを振り回し、近距離で叩き込む。

 兵士達の陣形が崩れる。

「ははっ!」

 軍人は笑っていた。

 まるで戦場そのものを楽しんでいるように。

 FOURBEATはその姿を見ていた。

 荒い。

 無駄だらけ。

 理論から外れている。

 だが。

 強い。

 敵の数が多いほど、この男の価値は上がる。

 FOURBEATは静かに目を細めた。

「……なるほど」

 銃声の中で呟く。

「利用するのも悪くない」

 戦闘が終わった頃。

 路地には静寂が戻っていた。

 FOURBEATは歩き出す。

 その横に、軍人が並ぶ。

「なぁ」

「何だ」

「名前、まだ聞いてなかったな」

 FOURBEATは答えない。

 軍人は笑う。

「まあいい」

 煙草に火をつける。

「そのうち聞くさ」

 死神の隣に、鬼が歩き始める。

 まだ互いを理解してはいない。

 だが、この夜。

 二人の戦い方は初めて重なった。

第2話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ