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【完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
番外編

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レム先生の特別講義と選考会

真面目に最前列を確保していたユー子は、信じられないと目を丸くしながら、レムを見つめた。


死神と取っ組み合いをしながら、消えていったレムが、目の前にいる。


しかも、ユー子の知っているレムの姿ではなかった。

煌びやかな正装なのに、何故か白衣を羽織り、知的な眼鏡をかけている。


どこぞの貴公子か、はたまた怪しい保健医か。


隣にいるアンは、目を輝かせながら「これは攻め……と見せかけた受け……」とつぶやき、ニヤついている。


「おう!ユー子元気か?」


レムは、何事もなかった様に笑う。


「お二人は知り合いですか?」


ハナは意外そうに、ユー子とレムを交互に見つめた。


「あぁ。一緒にコーラを飲んだ仲だぞ」


レムの答えに、ハナは困惑した。


「……そうですか」


そして、思考を放棄した。


「では、殿下、授業をお願いします。私は壁際におりますので、何かありましたらお呼びください」


ハナが壁際に移動すると、レムは受講生を見渡した。


「レム、何で白衣着てるの?実習?実験するの?」


ユー子は、周りの張り詰めた空気などお構いなしに、思ったことをそのまま口にした。


「おう!似合ってるだろ?かっこいいなって思ってな」


殿下と聞いて緊張をしていた受講生たちは、レムの気さくな受け答えに、ゆっくりと体の力が抜けていく。


「……やっぱり、受け……」


アンだけは、ブレなかった。

少しだけ鼻息が荒い。


「じゃあ、講義を始めるぞ」


意外にも、レムの講義は真面目だった。


全ての世界の性質やルール、礼儀作法。

相手との距離の縮め方や会話術。

外交の駆け引きについて、事例を含めながら説明をしていく。


資料はなく、口頭だけで説明するレムの話術は凄かった。


(レム、本当に王子様なんだ……。しかも秀才……たらふく食べてお腹ぱんぱんにしてたのに)


「悪魔は恐怖や嫉妬、怒りなどの負の感情を糧にしているが、時代によって感情の中身や質は変化している。その繰り返しだな。守護につく魂の恐怖が、自分達の世代の恐怖と違うことを、念頭に置けばいいだろう。もちろん、根本的な恐怖は変わらない。が、表現と感じ方も価値観は違うケースがあるから、そこを意識するといいだろう」


レムの伏せた瞳は、どこか哀愁が漂っている。


「今の魂たちは、何を恐れているんですか?」


受講生は、レムに質問を投げた。


「……うむ。戦争、地震、税金らしい」


「なるほど、戦に地震、厳しい年貢。時代は変わっても変わらないものもあるんですね」


着物を着た、中年の男性が納得したように、頷いた。


「まぁ、税金に関しては、似たような仕組みは、死神界や神界にもあるから理解は出来るけどな」


受講生たちに、どよめきが広がる。


「殿下は何故、外交を?何故、外界に対してそんなに詳しいんでしょうか」


「ああ、王子の役割もあるが、何処に行っても気に入られる事が多くてな。死神界や、神界の評議会にも席が用意されているし、自ずと詳しくなったな」


「で……では、殿下は神に近い存在……と?」


「まあ、そうなるな。神界でも、他の神々と変わらぬ扱いを受けている。興味はないがな」


「れ、レムってそんなに偉い存在だったの?」


ユー子は、普段のレムを知っているだけに、驚きを隠せなかった。


(どんちゃん騒ぎをして、濡れ衣で酒の池にしずめられてたのに……)


「ああ、我が輩は、偉いんだぞ!」


レムは、ユー子に向かって、にかっと笑った。


講義は無事に終わり、他の受講生を押しのけて、ユー子はレムに駆け寄った。


「レム!怪我大丈夫なの?心配したんだよ!」


「大丈夫だぞ!姉ちゃんが治してくれたけど、そもそも大した怪我じゃなかったしな」


レムは、ぐっとちからこぶを作って見せた。


「お姉さんいるんだ……あの死神さんは、どうなったの?」


「あぁ、あいつは、姉ちゃんに任せたら、……うん。……いい子になったぞ」


「……いい子」


ユー子は、急に寒気を覚えて、それ以上は聞かない事にした。


「ユー子、守護霊になるんだな。頑張れよ」


レムは、ユー子の頭をぽんっと軽く撫でると、他の受講生たちの質問に応じていく。


(うん。レム、私頑張るよ)


ユー子は残りの研修時間を、霊力の向上と勉強に費やすことを決めて、トレーニング室へ向かった。


トレーニング室で、走り込みを行う。

ステータスを確認すると、霊力がS+にランクアップしていた。


「やった!あがった!他の能力も上がってる!」


うきうきで、シャワーを浴びてから、部屋に戻ると、黒猫がベッドを占領していた。


「……レム?」


「おぉ!ユー子おかえり!腹減った!何かない?」


「夜食頼む?いろいろあるけど……ラーメン?おにぎり?アイス?」


「全部!!あと、コーラ!」


ユー子は、タブレットから夜食を一気に注文する。

ハナから「食べ過ぎです」とメッセージが届いたが、無視をした。


レムが青年の姿になり、夜食を食べ尽くす姿を見ながら、ユー子は、勉強を続けた。


「ユー子、頑張ってるな〜。少しは休めよ〜」


「だって、絶対に守りたい魂がいるの!少しでも成績上げなきゃ!」


レムは手を止め、ラーメン丼ぶりから視線をあげる。


「……タケルの子か?」


「レム、知ってるの?」


「まぁ、我が輩クラスになるとな。少し先の未来くらいは見通せるさ。タケルとナオが話しているところを見たら、だいたい読めたな」


「そうだったんだ〜。私、霊界にくるまで分からなかったよ」


「ユー子は、その子だけじゃなくて、タケルやナオも見守りたいんだろ?」


「……うん。そうかも。でも二人には優秀な守護霊がついてるし」


「まぁ、そうだな。だからこそ、ユー子がタケルの子に付くのはいいんじゃないか?タケルもナオも、知っているユー子がそばに居てくれたら安心すると思うぞ」


いつの間にか、夜食は全て空になっていた。


レムは黒猫に姿を変え、毛繕いをしながらユー子を見つめた。


お腹をぱんぱんに膨らませ、ベッドにヘソ天で横たわると、大きくあくびをした。


にょろりと伸びをすると、しっぽでベッドをぽんぽんと叩いた。


「ユー子、休め!先のことをあまり考え過ぎるな。もう寝ようぜ」


レムの誘惑に負け、ユー子はそろそろとレムに近づいた。


「もふもふ……レムたん」


ぽつりとつぶやいて、レムのお腹に顔を埋める。


「レムたんは辞めてくれ、姉ちゃんを思い出す……あと、吸わないで〜。何かが減る〜」


「すぅー………」


ユー子は、そのまま眠り込んでしまった。



*****


ユー子が目覚めると、レムの姿はなかった。


タブレットに、『頑張れよ』と付箋が貼ってある。


「レム、ありがとう……」


ユー子は、静かにつぶやくと、再び勉強を始めた。



研修期間を終え、残りはテストのみとなっていた。


ユー子は、ステータスを確認する。


ーーーー


霊力 S+

意欲 S+

表現力 A

受容力 A

理解力 B+

柔軟性 B

客観性 B


【総合評価】

霊力、意欲は申し分なし。


性格については、実直。

周りを気にせず目的に向かって真っ直ぐに集中できる。

一方で、周囲への配慮や状況判断については、成長の余地あり。

客観性、柔軟性の能力も上がっており、大いに期待出来る。


ーーーー


「やった!よくなってる!」


ーーーー


【重点科目】


霊力量分析・配分学

守護技術総論

魂指導論


ーーーー


「やっぱり、計算が……」


ーーーー


【コメント】


よくがんばりました。

自分の力に過信せず、休息と霊力配分を充分に行うこと


ーーーー


【守護霊ランク】


3位(127名中)


ーーーー


「三位か……一位だれだろ?」


ユー子は、タブレットをタップする。


一位は、アンだった。


「やっぱり、アンちゃんか!すごい!」


ユー子は、アンの部屋に駆け込む。


「アンちゃん!すごい!一位!おめでとう!」


「ユー子、ありがとう。ユー子だって三位じゃん。私たち、頑張ったよね!」


「うん!アンちゃんがいっぱい教えてくれたからだよ!ありがとう!」


アンは照れながら笑った。


「ふふ、私も勉強になったから、お互い様だよね」


二人で手を取り合いながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「あとはテストだけだけど、テスト前に守護する魂の選考会があるみたいだよ!行こう!」


「そうなの?絶対行く!早く行こ!」


*****


椿の間に入ると、選考会議の異様な緊張感が漂っていた。


選考方法は、至って単純。


守護を希望する魂を、あらかじめタブレットで選択する。


希望がなければ「フリー」を選択すればよい。担当は適性をもとにランダムで決定される。


ユー子は、もちろんタケルの子を希望した。

強めにタップした。


次つぎと呼ばれる魂と、内定していく受講生達。


ついに、タケルとナオの子の番になった。


ドュルルドュルル〜ドドン!!


希望者  成績

マサル  二位

ユー子  三位

レオン  五位

ユリア  八位


「よ、四人もいる!!」


ユー子の顔が青ざめていく。


「それでは、自己アピールをお願いします」


候補者が重なった場合は、自己アピールを行う。


一つの魂に、複数守護が着くが新人は一名のみ。ここの受講生からは一名しか選ばれない。

ここは大事な局面になると、ユー子は鼻息を荒くした。


「では、誰から……」


「はい!!はいはいはい!!!私から!!」


ユー子は勢いよく両手をあげて、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「この子を護ります!いっぱい守られてきた私だから、今度は返したいです!!辛いときも、楽しいときも、寄り添います!困難が訪れたときは、そっと導きます!この子の家族ごと、護りたいです!!」


あまりの勢いに、他の受講生が引いている。


鼻息を荒くして、身振り手振りで、全力で アピールするユー子に、自分の思いよりも、強いものを感じていた。


ここまで熱意のある人に、守護についてほしいとさえ、願ってしまった。


三人は思わずを見合わせた。


「……そこまで想っているなら」


一人が、小さく息を吐き穏やかに微笑んだ。


「私は辞退します」


その言葉に続くように


「私も……この子は、ぜひユー子さんに守ってもらいたいです」


「自分も……この熱意には敵いません」


ハナは三人の様子をみて、優しく微笑む。


「その心意気、守護霊に必要な素質です。三人には、守って頂きたい魂はたくさんあります。では、タケル、ナオの子の魂は、ユー子さんに内定を渡します」


「やったー!! どんな困難があっても、護ります!」


ユー子は辞退した受講生たち一人ひとりと固く握手を交わした。


「ありがとうございます! 絶対に幸せにします!」


そう力強く誓うと、アンのもとへ駆け寄った。


「ユー子、おめでとう。私も決まったよ」


アンはいつの間にか、決まっていたらしい。


「そうなの?」


「うん、ユー子が守護する魂の子と、住んでいる場所が近いから、もしかしたらまた会うかもね。読書好きの女の子だよ」


「希望通り、本好きな子なんだね!おめでとう!」


「ありがとう。残りのテスト、頑張ろうね!」


「……テスト……忘れてた」


テストがクリア出来なかったら、そもそも守護霊になれない。


「テスト前に、休暇があるよ。勉強してもいいし、下界に降りてお腹にいる魂に会いにいけるんだって。ユー子どうする?」


「行く!絶対に行く!」


「ふふふ、そうだよね。そう言うと思った」


ユー子は、頑張った。

アピールも頑張った。

レムも来てくれた。

休暇中に、タケルとナオに会いに行けた。

テストは、理数科目は怪しかったが、何とか合格できた。

もちろん、夜食は全品制覇した。


こうして、ユー子は守護霊となった。


ユー子守護霊修行編ーー完。

ユー子は頑張りました。


アンは、ステータスオープンって言ったら、ステータス出てくるかなと思って、声に出して言いました。


……出てきませんでした。


がっかりしながら、タブレットを開きました。


「これってローファンだよね?ファンタジーだよね?変なところで現実ださないでよね」とつぶやいていたとか、いないとか……。




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