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【完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
番外編

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海外悪魔の本職

第三王子のレムは、怒っていた。


この怒りはいつからだろう。


そんなに遠い過去ではない。


暇つぶしに……そう、野良猫に餌をやるような気分で女の魂と、過ごしていた時期があった。


本当に暇つぶしだった。

それでも、愛おしいと思える存在は、初めてだった。

毎日が輝いてみえた。

欲望も嫉妬も興味をなくすほどに、愛でていた。


けれど、シルクハットを被った、ふざけた死神に狩られてしまった。

ほんの僅かな隙に。


狩られてしまったら、輪廻も霊魂として残ることもできない。


成仏も出来たはずだし、彼女がそばにいてくれるなら、国を捨ててもいいとさえ、思っていた。


それを、やつは自分の出世のためと狩った。

失う恐怖を、俺は知った。


そいつが、また、俺のお気に入りを狩ろうとする。


気付いたら、俺は………。



ザシュ!!


死神の銀のステッキが大鎌へ変化し、レムの腹を斬りつける。


レムは腹の傷に意識を向けずに、ただ死神の首を狙って爪を伸ばす。


死神は身を逸らして一撃を躱し、大鎌を逆手に取ってレムに斬りつける。


レムは、一歩下がり身を翻し、死神の攻撃を躱すと、片足を軸にして回転する。


その勢いのまま、長い脚を高く上げて死神の首に巻きつける。


レムの脚は、死神の首に蛇の如く巻きつき、容赦ない力でぎしぎしと音を立てて締め上げた。


レムの鋭い爪が、死神の頬に食い込む。


死神は、首に絡まったレムの脚に爪を立てて抵抗した。


レムの脚からは、血が吹き出したが、効果はなく、ただ力が増すだけだった。


「くはっ」


(せめて、あの魂を狩って私の力に……)


公園の外に向かって走るユー子の長い黒髪に視線を向ける。


「させるかよ」


低く唸ったレムの声に死神は、初めて恐怖を覚える。


怒らせてはいけない存在ーー。


まさか……。

悪魔の名持ちは、王族……。

死神に絶望がよぎる。

いや、しかし……。


突如として現れた漆黒の空間が、冷たく広がり死神は驚愕した。


連れ込まれる!!


死神は声をあげる間もなく、悪魔の領域へと呑み込まれていった。



*****



悪魔の領域は、重力が人間界と比べて数倍も重い。


ずしりとかかる重さに、死神は唸ることしか出来ない。


レムは真の姿に変わり、死神を踏みつける。


「ぐぐぐ……」


死神は、指先一つ動かすことすら叶わない。


「……お前を、冥府議会に連行する」


「はっ……議会……だと?」


悪魔と冥府議会が繋がっている?

なぜ?


レムは本当にやつの名前なのか?

勝手に人間に呼ばせているだけの、ただの悪魔じゃなかったのか?


名持ちは、王族。

しかし、レムという名前は聞いた事がない。


重たい瞼を懸命に開けて、目をきょろきょろとさせていると、首を大きな手が覆う。


レムは、死神の首を乱暴にひと掴みすると、ずるずると引き摺った。


「ぐぇっ……」


情けない声を出しながらも、抗うことのできない身体は人形のようだった。


レムは無言で死神を一瞥する。

そして、異空間から銀色の鍵を取り出した。


(銀色の……鍵?)


レムは人差し指を立てると、複雑な紋様を空間に描く。


(一体何を……)


その中心には小さな鍵穴が出現した。


レムがその鍵穴に、銀色の鍵を差し込むと豪絢爛な巨大な扉が出現した。


「この先が冥府議会だ」


「………は?」


扉の中に、レムは死神を思いっきり投げ捨てた。


「ぐへっ」


死神の世界は、人間界と同じ重力だ。

一気に軽くなった身体は、思いの外大きく跳ねた。


ごろごろごろ〜。


「あられれれ」


無様な格好で転がり、ピタリと止まった。


死神が顔を上げると、冥府議会、主議長と目が合った。

絵画でしか見たことのない、トップオブトップ。


死神なのに、悪魔かと思うほど厳つい顔。

それが自分を睨みつけている(ように見える)


死神の顔から血の気が一気に引いた。


意味も状況も全く理解出来ないまま、死神は姿勢を正し立ち上がる。


しかし足がもつれて、そのまま座り込んでしまった。


主議長は、視線を死神に向けたまま、大きくため息をついた。


「お入り下さい。レイルメフィム殿下」


死神は一気に青ざめた。

レイルメフィム……殿下?


悪魔界の第三王子。

人間界、霊界、死神界との外交を担当。

死神の番人も兼任していると噂もあった。


まさか、ほんとに……。


主議長の言葉を聞いてから、レムは一礼をしてから扉を潜った。


艶めく黒髪。

左右対称の赤い瞳。

形のいい唇が、弓形に上がる。


美しい青年の姿は、先程の化け物のような姿から想像出来ない。


人間界で見た青年の姿ともまた、少し違う。

煌びやかで形容し難い美しさがあった。


目を逸らしたいのに、逸らせない。


死神の身体は、かたかたと勝手に震えだす。


「議長、久しいな」


「レイルメフィム殿下におかれましては……」


「あぁ〜よい!堅苦しい。こやつの処分、俺に任せてもらってもいいか」


主議長は、ぎろりと死神を睨みつける。


「ひぇ……」


死神は小さく縮こまった。


「……殿下にお任せします。死神界にいても消滅させるしかありませんから。そんな労力すら惜しい」


主議長は、首を大きく振った。


「いつも面倒をかけてしまい、申し訳ございません。どうぞ、煮るなり焼くなり好きにしてください。私どもも、こやつの不正には手を焼いていたので……」


死神は、目を見開いて、主議長とレムを何度も往復しながら顔色を伺う。


「えっ、えっ、えっ?」


「だってよ!」


レムは、死神に微笑みかける。

恐ろしい程、美しいその顔で。


「えっ、えっ、ぎ、ぎちょさ……」


死神は、主議長に震える手を伸ばす。


「行ってこい!」


「さぁ、行こうか!議長の許可は得た!」


がしりと死神の肩を組む。


「お前には個人的な恨みもあってな……誰に任せようかなー、今から考えるのも楽しみだ……」


「あっ、えっ、まっ……」


レムに背中を押されながら、扉へ向かっていく。


死神は顔だけ振り向いて主議長を見たが、手を振られただけだった。


「そうそう、我が輩んところの時間、くっそなげーから死神の時間感覚だと地獄らしいぞ。知らんけど」


「ひぇっ……ごめ、ごめんなさい」


死神は涙目になりながら、レムを見上げた。


「ごめんで済んだら、俺はいらねーんだよ。黙ってついてこいやっ」


レムの頭に角が生える。


「…………」


レムは、鼻歌を歌いながら(処刑及び更生に関する項目)上機嫌で、悪魔界に死神を連れていった。


重力2.6倍〜♪

時間は266倍〜

処刑、勉強、処刑、勉強

休憩なっしんぐ〜♪

いい子になるんだぞ〜♡



やっぱりドタバタになっちゃうんだよな。

レムにも真剣に恋愛をした時期もありました。


次回、悪魔城での我儘レム(末っ子)について




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