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【本編完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
昭和幽霊と乗り越えたい過去

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昭和幽霊の、散歩道

昭和幽霊のユー子は、イルカのぬいぐるみを抱きしめながら、心霊スポットの動画を見ていた。


(そういえば、私がいた廃墟って今どうなってるんだろ……)


動画を見ても、対して面白くなかった。

前はあんなに面白かったのに……。


「ユー子、買い物にいくけど、一緒にくるか?」


タケルの呼びかけに、ユー子は首を振る。


「んー……散歩にでも行ってくるよ」


「そうか……気をつけるんだぞ。あと、人を驚かせちゃ駄目だからな」


「……分かってるよ……」


ユー子は、口を尖らせながらタケルを見た。


タケルが心配しているのがわかる。

それが、妙に苦しかった。


ユー子が外に出ると、雨が降っていた。


もちろん、霊力を意識して高めなければ、雨に濡れる事はない。

寒さも感じないし、空腹も感じない。


それが普通だし、むしろ都合が良かった。


ユー子はとぼとぼと道路のど真ん中を歩く。

車なんて気にしない。


どうせすり抜けるんだから。


(そういえば、レムもタケルも道路側を歩いてくれてたな……ふふ、なんだかんだ言っても二人は紳士だ)


不意に車のクラクションが鳴る。


「ひゃっ!!」


慌てて端に寄ると、トラックが走り抜けていった。


(……視えるひとか……)


今までの私だったら、トラックの荷台に張りついてたな。


そんな事を考えていたら、保育園の前にいた。


ちょうど、お迎えの時間らしく、次々と母親に連れられた子どもが、保育園から出てきていた。


ユー子は、園内に吸い込まれるように入っていった。


次々と迎えにくる子どもと、教室にまだ残っている子ども。


「雨の日の迎えは、嫌ね〜。ほら、カッパ着て」


「ママ、お腹すいた〜」


子どもと母親の会話を横目に、ユー子は教室に残る子どもの傍に寄る。


子どもは、絵本を読みながら静かに母親の迎えを待っているようだった。


ユー子は、そっとその横にしゃがんだ。


ふと、子どもがユー子の方を見る。


「おねぇちゃん、だれ?」


「……視えるの?」


「うん!一緒に本読む?おねぇちゃんもママを待ってるの?」


子どもの問いかけに、ユー子は一瞬目を見開いた。


「おねぇちゃんは、大人だからママのお迎えはないんだよ」


子どもは不思議そうに首を傾げる。


「そうなんだ」


そう短く答えて、再び絵本に目を落とした。


「ねぇ、よんで?」


子どもが絵本の文字を指差す。

ユー子は、絵本を覗き込むと文字を追った。


おかあさんは、いつでも、かいとくんのみかたでした

おかあさんは、いつでも、かいとくんが、だいすきでした


おかあさんは、いつでも、おうえんしています

おかあさんは、いつでも、かいとくんのおかあさんです


かいとくんは、おむかえにきた、おかあさんに、とびつきました


おかあさん、だいすき


ゆっくりと、文字を追いながら、ユー子が読み上げる。


「僕もカイトなんだ!お母さん、僕のこと大好きかな?」


「うん!大好きだよ!」


ユー子は、笑顔でカイトを見つめた。


「あ!おねぇちゃん、かわいい!僕と結婚して!」


カイトは、絵本を床に置くと、ユー子の顔を覗く。


突然のプロポーズに、ユー子が目を丸くしていると、教室の扉から保育士の声が響く。


「カイトく〜ん!お母さん、迎えにきたよ〜!」


「ママ〜!!」


カイトは、ぱたぱたと走って扉の外に出る。


「ママ〜遅いよ!!」


涙を浮かべながら母親に駆け寄る。


「ごめんね〜仕事が長引いちゃって」


「……うん、いいよ〜。ママ!可愛いおねぇちゃんが絵本読んでくれたの!僕、おねぇちゃんと結婚する!」


カイトが教室の中を振り返る。


そこには、誰も居なかった。


「あれぇ?おねぇちゃん、居なくなっちゃった……」


「また、怖いこと言って……寂しい思いをさせ過ぎちゃったかしら?」


カイトの母親は、心配そうに首を傾げた。


「この年齢は、よくあることなので、あまり自分を責めたないでくださいね」


保育士の言葉に、カイトの母親は、胸を下ろす。


「カイト、今日はパパも早く帰ってくるって言ってたから、一緒にカレーを作ろうっか!」


「うん!」


ユー子は、カイトと母親が、保育園から出ていく姿を、門の影から、そっと見守った。


「……お迎えかぁ〜。考えたことなかったな〜」


ユー子は、再び、雨の中を歩く。


公園の入り口で、ぴたりと足を止めると、くるりと引き返して走り出す。


幽霊になって、良かったことは苦しくないこと。


どんなに走っても苦しくなかった。


ふと、家の日差しの下で震える小さな黒猫を見つけた。


「猫ちゃん……おいでよ」


ユー子はしゃがんで手を差し伸べる。


「ふしゃー!!」


毛を逆撫でて威嚇する。


「ちぇーっつまんないの」


ユー子は、立ち上がると空を見上げた。


「レム……大丈夫かなぁ……寂しいよ」


道路のど真ん中で佇んでいると、車のクラクションの音に振り返る。


赤いスポーツカーが停まっていた。


「ユー子!ここにいたのか?乗りな」


買い物帰りのタケルが、車の助手席を指差した。


車のドアをすり抜けるように、ユー子は助手席に座った。


「迎えにきてくれたの?」


「あ?……あぁ、そうかもな」


タケルは、にやりと笑うと車のアクセルを踏んだ。


「そうだ、ナオちゃんが来週来てくれるってよ。行きたいところ、考えておきな」


タケルは、前を向いたままユー子に告げる。


「うん!ナオちゃんと会うの楽しみ!どこに行こうかなっ。タケルも一緒に来てくれる?」


「……あぁ、もちろん。好きなところに連れていってやるよ」


変わらずタケルは、前を向いたままだったが、ユー子は嬉しかった。


多分、これが最後のお出かけになる。


そんな予感がしていた。

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