令和の陰陽師もどきは、相談される
昭和幽霊のユー子は、クリームパンを食べてご満悦だ。
その横では、レムがごくごくとコーラを飲んでいた。
「ぷっはー!!このしゅわしゅわと、甘さがたまらん!」
「それは、良かったな」
タケルは、明太フランスを食べながら、微笑む。
「心霊スポットってのも、面白いな。他のところも行ってみたい!」
「私、いろいろ知ってるよー!レム行ってみる?」
「おぉ、いいな!行こう!今夜でも行こう!」
「寝れないでも大丈夫って、いいな。お前ら二人だけでも行けるか?ついでに除霊してきてくれると助かるんだが……」
「おぉ!いいぜ!全部喰ってやる!」
「タケル、大丈夫なの?お仕事無くなっちゃうよ?」
胸をとんっと叩いて、ドヤ顔をするレムの横で、ユー子は心配そうにタケルを見つめた。
「大丈夫だよ。依頼もあるし、御守りやパワーストーンの販売もしてるからね。心霊スポットの除霊も俺一人じゃ捌ききれないから、少なくしてくれる方が助かるんだ」
「そうなんだぁ〜タケル、ちゃんと働いているんだね!」
「……ユー子、俺をなんだと思ってたんだ?」
「んー……親切なお兄さん?」
ユー子は、少し考えてからにっこりと笑う。
「ははっ。それは嬉しい評価だな。優先的に行ってほしい所があるんだけど、いいか?」
タケルは、スマホにマップを表示する。
「レムがいれば、大丈夫だと思う。ユー子も霊力が高いし。トンネルほどヤバいところは、そうないから……」
タケルは、三箇所を示した。
湖、高架下、廃団地。
「どこも、電車でいけるし、レムは川越まで行けたんだから大丈夫だろ?」
「おう!スマホで、ピッってしたら乗れた!」
「……アプリ入れてんのかよ。流石だよっ」
タケルは、自分よりスマホを、使いこなしている気がして、少しだけ嫉妬した。
「ユー子は、幽体のままでいればタダだから、現地についてからレムに実体化してもらえよ」
「うん!タダ乗りするー!!」
「ん?猫のまま行けば、我が輩もタダ?」
「……ネットがざわつくから、やめろ」
「……じゃあ、鳥は?」
レムはふわりと両手を広げると、カラス(デカい)に変化した。
「……もう、お前なんでもアリなんだな……」
「カラスなら、飛んでいけるぞ!」
「レム、私は飛べないよ!!」
ユー子は、頬を膨らませながら、レムの羽をいじる。
「じゃあ、電車だな!あれも面白い!」
レムは青年の姿に戻ると、目的地までの乗り換え案内のアプリを立ち上げ情報を確認する。
「……子ども料金。よし!子どもの姿で行こう!」
レムは少年の姿に変化する。
「なんで少しでも節約しようとしてんだよ。お前、ホストククラブで充分稼いだだろ……。それに、レムの子どもの姿も目立つから普通に青年でいけ。危ないから」
「なぜ?」
「そんなキラキラな少年の姿だと、良からぬ大人が寄ってくるかもしれないから!」
「日本は安全だろ?」
「……安全だけど、念のため!」
「……タケルは心配性だなぁ〜。でもそれも悪くない。では、行ってくる!」
レムは青年の姿になると、日が暮れ始めた外に出た。
「あっ、レム待って〜」
「現地ついたら、連絡しろよー。除霊したらその度に連絡しろよー」
「うん!タケル、写真付きでメッセージ送るね!行ってきます!」
「いってらっしゃい〜」
(いってらっしゃい……か。言うの何年振りだろう。ばーちゃんが亡くなってから八年……か)
タケルは、静かにレムとユー子を見送ると、スマホの通知を開く。
数分前にナオからメッセージが来ていた。
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【nao】
タケルさん、ユー子のことで相談があるのですが、今日、お宅に伺ってもいいでしょうか?
出来れば、ユー子には聞かれたくないので、お宅で無理そうだったら、駅前のカフェで会って頂けませんか?
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【takeru】
ナオちゃん、何かあった?大丈夫?
今、レムとユー子が出かけたから、家に来ても大丈夫だよ。
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【nao】
分かりました。
今、職場を出たので40分後くらいに着くのですが、大丈夫ですか?
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【takeru】
オッケー!気をつけてね!
お腹空いてる?
俺、ナポリタン得意なんだけど、食べる?
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【nao】
いいんですか?嬉しいです。
何か、デザートになるもの買っていきますね!
ーーーー
「ユー子の相談って、何があったんだろ?」
タケルは、サラダとナポリタンスパゲッティの準備を始めた。
五十分後、インターフォンが鳴る。
「いらっしゃい」
タケルが扉を開けると、コンビニの袋を下げたナオが控えめに立っていた。
「ナオちゃん、お疲れ様。どうぞ、入って」
「すいません。突然メールして。お邪魔します」
ナオがリビングに入ると、ケチャップの美味しそうな香りがふわりと漂っていた。
「洗面所とトイレは廊下を出て左にあるから、自由に使ってね」
「はい……ありがとうございます。手を洗ってきますね」
タケルはナオが手を洗っている間に、ナポリタンの盛り付けをして、冷蔵庫からサラダを出すとテーブルに並べた。
「わー。美味しそう!タケルさん、お料理得意なんですか?」
ナオは、丁寧に盛り付けされたサラダとナポリタンスパゲッティを見つめた。
「まぁ、一人暮らしも長いからねー。ってか、ナオちゃん、一人暮らしの男の家に入って大丈夫?」
「大丈夫です。タケルさんは下心なさそうだし、彼氏もいないので、変に誤解されても困ることないですから……。むしろ、タケルさんも彼女さんに誤解されたりしないですか?」
「いや……俺、彼女いないし……」
「……そうなんですね」
なんとも言えない微妙な空気が流れる。
「じゃあ、まずは食べようか!座って」
「はい!ありがとうございます。あ、あと、シュークリーム買ってきたので良かったら」
タケルはナオから袋を受け取ると、シュークリームが四個入っていた。
「レムとユー子の分も買ってきてくれたんだ。ありがとな。これは冷蔵庫に入れておくね」
ふふとタケルは笑いながら、冷蔵庫にシュークリームを入れた。
「タケルさん、このナポリタン美味しいです!」
ナオは、ナポリタンを一口食べると、驚いたように目を丸くした。
「ほんと?良かった!ウスターソースと、少しのハチミツが隠し味なんだ」
タケルは、少し得意げに笑った。
「私、料理あまりしないから尊敬します!」
目を輝かせてナオは、ナポリタンを食べ続けた。
「ナオちゃん、サラダに何かける?マヨネーズと胡麻ドレならあるんだけど……」
「ごま油とお塩ってありますか?今、ハマってて……」
「あるけど、サラダにごま油と塩をかけるの?……なんか、美味そうだな」
タケルはキッチンから、ごま油と食卓塩を持ってくるとナオに渡す。
「どれくらいかけるの?」
「ごま油は、薄くひと回しくらいで、塩は全体的にさらっとかける感じですかね。完全に好みですけど……」
「俺もやってみよ〜」
タケルは、ナオと同じくらいのごま油と塩をかけるとサラダを頬張る。
「美味い!ナオちゃんこれ、美味いな。ドレッシング要らないかも!」
「ですよね!私も、職場の仲の良い、管理栄養士さんに教えて貰ってから、ハマっちゃって!」
「へぇー栄養士さんのオススメかー。栄養的にも効果がありそうだね」
「あはは。それ、私も聞いたんですけど、塩分も油分も調整出来るからいいって言ってました。栄養については、説明めんどいから、ググれって言ってて……ふふふ」
「はは。説明雑!面白い栄養士さんだね」
「はい、結局調べてないんですけどね。ふふふ」
ナオは、タケルの受け答えに安心感を覚えた。
「あの、ユー子とレムさんはどちらに出掛けられたんですか?」
「あぁ、あの二人なら心霊スポット巡りしてくるって言ってたから、ついでに除霊をお願いしたんだ」
なんて事ないと、タケルは飄々と答えた。
「えっ?除霊ですか?幽霊なのに?」
ナオは首を傾げる。
「あぁ、レムは悪魔でな。画像も見せてもらってたと思うけど、あの姿で悪霊の塊を喰ってしまったんだ。俺、準備してたのに」
「あれ、本当の姿だったんですか?冗談かと思ってました!」
ちょっとだけ拗ねたタケルが、かわいいかもとナオは内心思いながら、目を丸くした。
「そう思うよなー。俺も思った。けど、俺の守護霊たちも昔から悪さしてたって言っててな」
「守護霊さんが?」
「あぁ、ナオちゃんなら視えるかな?」
タケルは手を、ぱんっと叩いて何かをつぶやくと、背後に烏帽子を被った青年と、薄紅色の衣を着た女性が現れる。
「……わー、きれいな人」
ナオは、背後の二人に視線を合わせた。
『ほぅ……我らが視えるのか』
『きれいとな……見る目あるじゃないか』
守護の二人は、まじまじとナオを見つめた。
「ナオちゃん、後ろを見てごらん」
ナオが後ろに視線を移すと、戦にでも行きそうな甲冑を身につけた武将と、白と赤の衣装を着た巫女が、ナオをみて微笑んでいた。
「その方達が、ナオちゃんを守ってくれているんだよ」
『ふふふ、話をするのは初めてね』
『悪いものは、わしが全て薙ぎ払っておる。安心せぃ』
武将は、手にした薙刀をナオに見せた。
「守護霊さん、私の傍に居てくれてたんだ。ありがとう……変なもの視えてても、悪いことは起きなかった。守ってくれていたんですね」
『……そうだな。視えないようにはしていたんだが……』
『あれは、あなたが猫に気をとられてたからでしょ?』
『……かたじけない』
『視たくないときは、言うのよ。私が目隠しをしてあげるから』
そう言うと、巫女は袖でナオの目を隠す。
不思議と、タケルの顔は視えるのに、タケルの守護霊は視えなくなった。
『たまに、不意打ちを喰らって視えてしまうことはあるかも知れないけれど、襲われることはないから安心して』
「えっ?じゃあ、あの男の子の時は?」
『不意打ちだったのよ〜。ごめんなさいね』
巫女が袖を除くと、タケルの守護霊が再び視えるようになった。
『タケル……この女子、良い子じゃないか』
『そうね、この子と……』
ぱちんっ。
タケルが手を叩くと、タケルとナオの守護霊たちは、消えていった。
「……タケルさん?」
「あぁ、あいつらが余計なこと言いそうだったからな。はは。んで、ナオちゃん、ユー子の事で相談って何があったの?」
ナオは、空になった皿を見つめた。
「私、ユー子のお母さんと、妹さんに会ったかも知れません」
思いがけない言葉に、タケルは表情が固まった。
ごま油と塩、おススメです。
ドレッシングの甘さが苦手な方は特にオススメ!
ちょっと高めのごま油だと、風味が増しますよー。
どんな野菜にも合います。
栄養効果は、説明めんどいのでググってください。笑。




