昭和幽霊は、スクランブル交差点を渡る
さすが、スクランブル交差点……。
人が多い!そして、誰とも視線が合わない。
目の前に顔を覗かせても、見られていない。
みんな、友達とか恋人といる。
いいな〜。
ユー子は、あたりをきょろきょろしながら、スクランブル交差点の人の流れに乗り、渡りきることができた。
幽霊なのだから、別に急いで交差点を渡らなくてもいいハズ……。
『青は進め』
『交差点のど真ん中に立っていたら、車に轢かれる』
生前の習慣がつい、出てしまう。
ユー子は、ハチ公のそばで待ち合わせをしている人の目の前に立ったが、その人はスマホに夢中なのか顔を上げない。
今度は、スマホを見ていない人に、話しかけてみたけど、イヤホンをしているからか、無視される。
なんか……さみしい。
何かのインタビューをしている、TV局のカメラがあったから、写ろうと顔を覗かせたら、カメラが不調らしい。
インタビューがストップしてしまった。
なんか……残念。
渋谷も変わったな〜。
ってか、まだ変わろうとしてんのか〜。
まあ、生前も渋谷なんて来なかったし、平成の時に取り憑いていた子も、渋谷に来なかったな。
そんな事を思いながら、スマホで渋谷の様子を撮る。
え?幽霊がスマホ持っていたら、スマホが宙に浮かぶ……ですって?
ふふ。私ほどの霊力があれば、スマホが認識出来ないようにすることくらい、朝飯前よ!
誰にも聞かれていないのに、ユー子は不敵な笑顔で呟いた。
夜遅くても人が多い。
町の照明も昭和の時と比べたら輝きが違う。
ーーー
【yuu ko】
渋谷なう。
ーーー
あれ?今は、『なう』とか使わないんだっけ?
これは、わざとよ。わざと。
そうゆうネタよ。
渋谷の街並みや人の多さを写真に収め、SNSにアップした。
すぐに、レムからハートがつく
ーーー
【demon since666】
おっ。これが有名な渋谷のスクランブル交差点か!
西洋人も東南アジア系もアフリカ系も、本当に外国人多いな。
これなら、我輩が行っても紛れるな
あ〜早く行きたい!
ーーー
【yuu ko】
おいでよ〜。楽しみに待ってるよ〜。
ーーー
【demon since666】
人に扮装出来ても、パスポートないんだよ。
とれないし。
ーーー
【yuu ko】
それな
ーーー
【demon since666】
昔は船に簡単に忍び込めたが……。
人にも取り憑けないしな……。
人じゃなければいいのか?
ーーー
【yuu ko】
どゆこと?
ーーー
【demon since666】
アイディアが浮かんだ!
とりま、空港にいくわ。
ーーー
【yuu ko】
気をつけてね〜
ーーー
悪魔に『気をつけて』って呼びかけが合っているのか、ユー子は首を90度以上傾げた。
レムのコメントの口調が、人間臭くて調子が狂う。
ユー子は首を傾げたまま、ふふと笑う。
瞬間、一人のギャルとバチっと目が合った。
「あっ……あの人、私のこと……みた」
ユー子は、首を元に戻すのを忘れて、スキップをしながら近づく。
ギャルは、目を細めると盛大に舌打ちをした。
「きもっ」
そう、一言吐き出すと、ギャルは踵を返して駅に向かって行った。
きもっ……?
キモいって略だよね。
気持ち悪い?怖いじゃなくて?
えっ。悪口言われた!
しかも、思いっきり舌打ちされた!
ギャル……こわい。
ユー子は、とぼとぼと歩き出す。
華やかな場所……こわい。
人混み……こわい。
やっぱり、廃墟の方が落ち着くな……。
そう思っていたら、これから肝試しに某トンネルに向かう若者たちの声が聞こえてきた。
ユー子は、俯いたままその車の後部座席に、そっと座った。
このまま、トンネルまで連れて行ってもらおう。
ここよりは落ち着くはずだ。
大丈夫。
運転中は、危ないから大人しくしてるね。
心霊スポット行く前から、静かに同乗しているよ。
誰も気付いてないけどね……。
ユー子は、ちょっと落ち込んでいるので、大人しくしてます。
なんなら、車に乗ったら寝るタイプです。
だから、運転中は安全(?)です




