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【本編完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
昭和幽霊と乗り越えたい過去

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16/40

海外悪魔は、ホストクラブで無双する

本領発揮と意気込む海外悪魔のレムは、妖艶に微笑みながら、女性のいる席に着いた。


「今日、体験入店のレムさんです。ライトさんがお休みですいません。ユキさんなら、体験入店の人でも受け入れて貰えるんじゃないかなって思って……」


ユーマは、手をもじもじさせながら、ユキと呼んだ女性に上目遣いをした。


「ユーマくん、またライトを怒らせたの?ライトも売り上げかかっているから、そのうち来るわよ。だから私来たんだもの。いいわよ。体験入店……、私は古参だし相手してあげる」


ユキは、ユーマの後ろにいる、頭一つ背の高いレムを見上げた。


「姫、ありがとうございます。そのリップ……いい色ですね。おいしそうだ」


レムは、ユキの前に跪くと手を取り軽く口づけをした。


ユキは、今まで会ったホストたちの決め台詞は覚えている。

目の前のホストも同じような言葉を吐いているのに、背筋がぞくりとした。


それは、美しすぎる顔面のせいなのか、脳に響く色気を含んだ声色のせいなのか、本能が警鐘を鳴らす“おいしそう”なのか……それでも、視線を外せない。


「隣に座っていいですか?」


「えぇ、いいわよ」


レムがユキの隣に座ったのを確認すると、ユーマはタケルを連れて別の席に案内する。


「タケルさん、レムさんって日本語上手ですね。しかももう常連のユキさんまで魅了しちゃってます」


「そうか?魅了って挨拶しただけなのに、逆になんで分かるんだ?」


「勘ですよ!勘!ボーイとしての俺の勘がそう言ってます!」


ユーマが、ふと振り返った視線の先には、レムを見つめるユキの姿があった。


タケルもつられて視線を向けると、レムがシャンパンのボトルをオーダーしていた。


(あいつ、なんで酒のオーダーとか自然にやってんだよ)


「さ、タケル……いえ、ノアさんはこのテーブルについて下さい!」


ユーマが案内したテーブルは、ホスト慣れをしていなそうな若い女性のテーブルだった。


「ノアさんです。一日体験で入店されました。今日はNo.3のシノさんについてもらいます。よろしくお願いします」


紹介されたシノは、穏やかな清潔感のある笑顔が優しい青年だ。


「ノアくんね、よろしく。俺、あまり酒強くないんだけど、ノアくん飲める?」


シノは握手をして挨拶をするかたわら、小声でタケルに伝えた。


「飲めますよ……。俺、ホスト体験初めてなんだけど、何したらいい?」


「ノアさんの雰囲気なら、姫たちの話を聞いて、肯定してあげて、笑っていれば、一日ならなんとかなります」


(……幽霊たちと変わんねーな)


タケルは、席にいる女性に自己紹介をすると、そっと隣に座る。


手慣れた手つきで酒を作り、女性に勧めると女性は顔を赤くしながら、おずおずと酒を飲み始めた。


「ノアくん、酒作るの上手いね」


シノは酒を作るタケルを、じっと見守っていたが安心したように、息を小さく吐いた。


「えぇ、二十代の頃バーテンのバイトしてましたから……」


「へぇ……それはすごいや。体験じゃなくてこここでコンスタントに働けばいいのに」


目を丸くして、シノはタケルを見つめた。


「あはは。本業がありますから……」


「本業ってなに?」


やんわりと微笑むタケルを、女性客がそっと尋ねた。


「えっと……困っている人の話を聞いて、次に進むお手伝いとか、ストーカーみたいな奴を追っ払ったり?」


「カウンセラー?警察官?」


「姫、ここで本業は聞いちゃだめだよ。僕を忘れないでね。さあ、姫の悩みをノアに話してみたら?僕より上手く聞いてくれそうだ」


シノは穏やかに微笑むと、女性の髪を撫でる。


タケルは、一瞬シノに惚れそうになりながらも女性に視線を向ける。


「姫、仕事で悩んでる?全てが空回り……。他の人と自分の認識の差に、戸惑ってない?」


ズバリと悩みを言い当てられた女性は、目を丸くする。


「……なんで分かるんですか?良かれと思ってしたことが、他の人には不快に思われているみたいで……」


シノはぽつりと話出した女性と、真剣に話を聞いているタケルを交互に見つめると、安心したように微笑む。


「ノアくん、あとはお願いね。僕は他のテーブルに呼ばれちゃったみたい。姫……僕のことも忘れちゃやだよ。またね」


「シノくん、ありがとう!また指名するね」


そういうと、女性はタケルを見つめて再び話を続けた。


あっという間に二時間が経ち、タケルは別の席に着いていた。


「最近よく眠れてなくて……。寝てても誰かに追われていたり、見張られてる気がして休めないの……」


女性客は、タケルに高い酒を勧めながらうつむきながら涙目でつぶやく。


「それはつらいね……。ちょっとごめんね。背中叩くよ」


タケルは小声で何かを呟きながら、背中を少し強めにさするように叩く。


「姫、最近、彼氏と別れた?貰ったネックレス、手放した方が良さそうだ。それに、職場に親身になってくれる歳上の男性いるでしょ?頼るといいよ」


「ノアくん、なんで分かるの?本業、占い師?」


「あはは……。まあ、似たようなもんだね」


「ねぇ、もっと話を聞いて!シャンパン開けるから!」


女性客は、店の中でも割と高価なシャンパンをボーイのユーマに告げる。


「ノアくん、シャンパン入りまーす!」


ユーマは、高らかに声をあげるとタケルにグッとサインを出した。


タケルは、シャンパンが運ばれてくるのを見ると、視界にレムが入った。


レムも席を移動しながら、次々と女性を魅了しているらしく、ボトルを次々と飲み干していく。


「レム様……」


「レム様……こっちを見て。隣に座って……あの女のところじゃなくて、私のところに来て」


レムが赤い瞳に光を宿すたび、女性たちはレムを崇拝するように見つめていた。


(……あれ、これってやばいやつ?)


タケルの背筋に冷たいものが流れる。


「ふふ……ここは、美味しい。腹が膨れそうだ。もっと、もっと食べさせておくれ」


レムは、最初についた席のユキの顎に手を添えて微笑む。


その時だったーー。


店の中がやけにざわつき始めた。


「ライトさん、今日来ないんじゃなかったんですか?」


ユーマの声を無視しながら、ライトは大股でレムに近づいた。


レムと身長が大して変わらないライトは、白いスーツを着こなし、目鼻立ちのくっきりした顔立ちは、確かにNo.1の風格があった。


「ライト……」


ユキは、浮気現場を見られたような表情でライトを見つめる。


「ユキちゃん、今日突然休んでごめんね?」


捨てられた子犬のように、眉を寄せて微笑むと、ユキに手を伸ばす。


「ライトが元気ならそれでいいわよ?」


ユキは、伸ばされた手に触れず、レムの後ろに立ったままだ。


ライトは店の中の異様や空気に、小さく舌打ちをした。


「君、だれ?新人?」


ライトは穏やかな声のまま、レムを見据える。

表情こそ優しげだが、瞳の奥の感情は、血が煮えたぎっていた。


「この人は、一日体験のレムくんだよ。君が急に休むっていうからユーマがキャッチしてきたんだ」


異様な空気を察知した、店長が二人の間に立つように、穏やかに説明をする。


「ふーん……」


ライトは、ユーマを見つけると、一瞬睨みつけてからすぐに笑顔に戻す。


「店長、遅れてきてすいません。すぐに売り上げ取り戻しますね」


ライトは店長にそっとつぶやく。


「……いや、ライトくん。売り上げは心配しなくて大丈夫だよ。レムくんとノアくん、一日体験の二人で過去最高額を軽く超えちゃってね……。ライトくん、体調が良くないなら休んでいいよ。これまで無理させちゃて悪かったね……」


(うわぁ〜店長さん、それ逆効果!優しく聞こえるけど、ライトさんの、プライド叩き折ってる!)


タケルは、唇をわなわなと震わせながら、レムとライトを見つめた。


シノや他のホストたち、姫たちもどうなるのか、そっと見守っている。


そんな中、レムは妖艶に笑っていた。


「ねぇ、店長。レムくんは今日どれくらい売り上げてんの?」


今にも殴りつけそうな空気を出しながらも、ライトは笑顔を貼り付けたまま、店長に尋ねた。


「ライトくん、姫たちの前で聞くことじゃないよ?あとでね」


「いいから教えろよ。すぐに追いついてやるからよ」


苛立ちを隠せなくなってきたライトは、舌打ちをしながら店長を睨みつけた。


「くくっ……」


レムは愉快そうに、楽しそうに笑う。


「何がおかしい!」


ライトは、レムに一歩近づく。


近くのテーブルに置いてあった、シャンパンの泡が静かに弾けた。


「お前、日本に来て一番のごちそうだな」


レムも一歩近づくと、ライトの頬に手を添えて唇を寄せる。


「きゃー!!」

「眼福!眼福!」


静かに進行していたやり取りに、姫達の悲鳴が響く。


姫たちは、スマホを手に取ると、一斉に撮影を始めた。


(……ねぇ、忘れた頃にBL展開になるの、やめてくんない?)


タケルはその様子を、半目で見つめた。


「レムくん、すごいね。ライトさん、キレたらどうしようもなくなるのに……。ライトさん戦意喪失してるよ」


いつの間にか、タケルの横に来ていたシノが、苦笑している。


ライトは、レムの赤い目に吸い込まれるような感覚を覚えた。


恋や愛ではない、もっと深い、崇拝したくなる感情。


独占したい、自分だけを見て貰いたい、ちっぽけな自分に視線を向けてもらえるだけで、天に登れる。


何をしたら、この人は自分に微笑んでくれるのだろう。


売り上げ、人気……全てがどうでも良くなった。


強いていうなら、母の味噌汁が飲みたくなった。


今まであった焦りも、不安も、No.1から転落する恐怖も、目の前の赤い目に吸い込まれていった気がした。


「やはり、美味いな。お前……ごちそうさま」


レムは、ペロリとライトの頬を軽く舐める。


立ち尽くすライトと、レムを見てユキは、声を上げた。


「店長!シャンパンタワー入れて!いいもの見れたわ!」


「私たちも!ユキさん、私たちも出資する!」


「おっけー!じゃあ、店長!シャンパンのランク上げて!今日はお祭りよ!」


「わー!!」


(……カオスだぁ……ってか、みんななんでそんなに金持ってんの?)


タケルの顔が引き攣る。


「これが日常じゃないからね。君たちが異常だっただけだから……」


シノは、困った顔をしながら微笑む。


「まあ、今日の売り上げのトップはレムくんだね。一日体験の子にここまで稼がれたら、僕たち立場ないなぁ〜。ちょっと、実家に帰りたくなってきたよ」


「……顔を見せに行った方がいいですよ。特に妹さん……。すごく疲れているみたいだ」


タケルは、シノにそっと伝える。


「……ノアくん、視える人なんだね。しかも、僕よりもかなり強く……。分かった。すぐに帰ることにするよ」


「シノさん、やっぱり霊感持ちか。背後の護りが強いから、そうじゃねーかなって思ってたよ。護りが強いけど、体調崩すと護りが弱くなるから気をつけてな」


タケルはそっとつぶやくと、シノの背中を摩った。




*****




がちゃり。


玄関の扉が開く音がして、ユー子はナオを連れて玄関に向かう。


「ユー子!何連れてきたんだよ!誰だよあのおっさん!」


扉を開けて、タケルは玄関前の道路を指差す。

その横では、レムは満足げな表情をしながらおじさんを見て笑っている。


二人からは酒と香水の残り香が漂っている。


おじさんは、変わらずに、わきわきと片腕を動かしていた。


ホストクラブのシーンは、完全に想像なので、仕組みとか人間関係とか実際と異なります。あしからず……。


タケルは、どこでもサラッと除霊しちゃうんですよね。

優し過ぎる。


金の換金やホストクラブでの稼ぎ……確定申告大変だね。

ちゃんと計算して金使えよ。

タケル……。

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