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【本編完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
見られる昭和幽霊と海外悪魔(イケメン)

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昭和幽霊は、ショッピングを楽しむ

幽霊が視える昭和幽霊のユー子は、レムとタケルと一緒に換金店に来ていた。


タケルが換金している様子を、レムと共に見守る。


店員は、煌びやかな三人に圧倒されながらも仕事をこなす。


「アンティークの金の懐中時計……かなり古いものですね」


店員は真剣に査定を行う。


「スイス製……1800年代の18金……装飾にダイヤモンド……動作確認出来ず。チェーンも金ですね」


店員は、懐中時計から視線を外すと、感嘆するように大きく溜息をついた。


「即金をご希望でしたね。こちらの価格でいかがでしょうか」


店員が差し出した電卓には、1,870,000と表示されていた。


ユー子は、電卓を覗き込むと、「一、十、百、千……」とゼロを数えていく。


「ひゃくはちじゅうなな、まん!!」


思わず目をひん剥いて驚く。


「レム!すごい!大金!!」


「そうなのか?ちゃんと査定……出来てんのか?」


レムが店員をちらりと見ると、店員は冷や汗をかく。


「……ご納得頂けないでしょうか……で、ではこちらで……」


電卓を震える手で叩くと、電卓をタケルに差し出す。


そこには、2,160,000と表示されていた。


「おぉ……ふえた!」


ユー子は電卓をまじまじと見つめた。


「……そ、それでお願いします」


タケルは、横目でレムを見ると、レムは至って普通の顔で電卓を見ている。


決して圧力はかけていない。

……はず。


(いや、顔面の破壊力がぱねぇんだよな)


目の前に積まれた大金を震える手でタケルが受け取るのを、ユー子は笑顔で見つめた。


「良かったね!」


「……怖い……大金が怖い……。こんなに簡単に手に入るのが怖い」


「ほぅ……現代人は大金が怖いのか」


レムは、ふむふむと頷きながら、大金が入ったバッグを抱えて前屈みになるタケルを不思議そうに見つめた。


慌てて車に乗ったタケルに続き、レムとユー子も車に乗り込む。


「レム、この金そのまま持つのは危険だ。……いや、お前なら大丈夫か……。そのまま渡すか?それとも一度家に戻るか?」


「これで何が買える?」


「ちょっとした観光で飲み食いするなら、ユー子と二人でも五万もあれば充分だが……」


タケルは、しばらく考える。


「服とかバッグとか買うか?」


「タケル、そのダサいシャツ変えた方がいいと思う!」


ユー子は悪気なく提案する。


「……俺、泣いていい?」


タケルは、ド派手なシャツを引っ張ると俯いて、ため息をついた。


「俺はいいんだよ。これはレムの金だ」


「タケルは妙に真面目だな。換金はタケルがいなければ出来なかったと言うのに」


レムは、真顔でタケルを見据える。


「まぁ、宿代だ。皆で買い物に行けばいいじゃないか……。タケル、店に連れて行け」


「……俺、仕事が……」


「仕事あるの?」


もじもじと躊躇うタケルに、ユー子は寂しそうに見上げた。


「……依頼はないけど……」


「じゃあ、いこーよ!みんなでショッピングして、ご飯を食べるの!楽しそう!」


無邪気に喜ぶユー子に、タケルはノーとは言えなかった。



*****



三人は大型ショッピングモールに来ていた。


「わ〜!!お店がいっぱい!」


ユー子は、辺りを見渡しながらくるりと回った。

レムのおかげで実体でお店を周れることに、ユー子は嬉しさをそのままに、ふわりと笑う。


平日の昼間は、家族連ればかりで人も少なめだ。

これなら、人酔いせずに楽しめそうだと、ユー子は鼻歌混じりに店を眺める。


「あっ、あのお店レムっぽい」


ユー子が指を指したショップは、黒を基調としたシックなメンズショップだった。


「いらっしゃいませ〜」


店員の明るい声が響く。


店員は、目立つ三人を見てぎょっとした。


「ど、どうぞ、ごゆっくりごらんくださいませ〜」


店員はそそくさと、店内を案内をする。


「ご試着もどうぞ〜」


レムは服を眺めると、黒のダメージジーンズに、黒のジャケット、ハイネックのグレーのシャツを選ぶと試着をした。


カーテンがするりと開く。


「レム!かっこいい!」


ユー子は、レムを頭からつま先まで見ると、目を輝かせた。


「……丈が足りん」


よく見ると、ジーンズの丈が足りず、くるぶしが出ている。


「はっ?お前、どんだけ脚がなげーんだよ。ムカつくな」


タケルは、半目でレムの脚をみた。


「あ、あの、こちらの丈が長いものもございます」


店員は、サイズ違いのジーンズを差し出す。


「ジーンズって丈を切るもんなんじゃねーの?それか、ジャストサイズだろ」


タケルがつぶやくと、店員は「海外の方は脚が長いですね〜」と曖昧に笑った。


丈の長いサイズに履き替えたレムが、再び試着室から出てくると、満足そうに頷いた。


「うむ……まあまあだな」


長めの丈といっても僅かに短く見えるが、レムのスタイルのよさから、『そうゆうファッション』と説得力のあるコーディネートになっていた。


「くっそぉ〜。水虫になればいいのに」


タケルは、奥歯を噛み締めながら呟いた。


会計を済ませて店を出ると、レムは気に入った様子で、試着したコーディネートのまま歩き出した。


「さて、次はタケルだな。この店にしよう」


レムはうきうきと店に入っていくと、並んだ服をざっと見る。


「タケルは……、これと、これと、これ」


適当に手に取って、タケルに押し付ける。


白シャツに、ピンクのカーディガン、黒のスラックス。


「ぴ、ぴんく!」


少しくすんだ、落ち着いたくすみピンクのカーディガンをみて、ユー子は驚いた。


「レム、タケルは男の子だよ!ピンクは女の子の色だよ!」


「三十路の男に男の子っていうなよ……」


タケルのつぶやきは、レムの声にかき消される。


「男がピンクを着てもいいじゃないか。色に性別は関係ないさ。タケルは、この色が似合う」


(ユー子の価値観はやっぱり昭和なんだな……)


そんなことを考えているタケルを置いて、コーディネートが完成していく。


「あとは、そうだな……キャメルの革靴だな。店員、試着だ」


レムは雑に店員を呼び寄せると、タケルを試着室に押し込んだ。


腕組みをして、仁王立ちするレムと、店内のソファーでくつろぐユー子の前に、試着を終えたタケルが、ひょこっと顔を出す。


「タケル、どうした」


「ど、どうかな?」


少し照れながら、試着室から出てきたタケルを見て、ユー子はぴょんぴょん跳ねた。


「タケル!似合ってる!ピンクいいねっ!」


「タケル……腕を少し捲れ……そう、カーディガンの袖から白シャツが覗くように……」


店員は、小さく拍手をしながら「お似合いです!そのコーディネート、参考にさせていただきます」と頷いた。


「良い!では、このまま会計だ。タケル、支払いだ」


タケルは、嬉しいような、申し訳ないような、微妙な顔をして支払いを済ませる。


「いやー、マネージャーさんもイケメンさんですね」


「……?」


店員は、レムとユー子を芸能人か何かと思っているのか、こっそりと二人に視線を向けた。


「あのお二人がおキレイだから、そちらに目がいってしまいますけど、お客様も整ってらっしゃる」


「………」


(だれがマネージャーだ、ボケェ!)


タケルは、心の中で盛大に毒付く。


「ははっ……ありがとうございます」と、

とりあえず、曖昧に笑う。

タケルは、“大人の対応をした自分を褒めたい”と、ため息をついた。


「よし!次はユー子だ!」


レムは、勢いにそのままに闊歩する。


「えっ?私も?私、何もしてないよ?」


ユー子は、きょとんとしながら、次の店へと意気込むレムの服の裾を、つんつんと引っ張る。


「ユー子が、我が輩を日本に行きたいと思わせた。それでいいんだ。タケルとも引き合わせたのは、ユー子だ。だから、何もしていない訳じゃない」


さも当然かのように、レムは断言した。


「レムがいいって言ってるし、結局レムは買い物が好きなんだよ……きっと。だから楽しもう」


タケルがそっと囁くと、ユー子は、こくりと頷いた。


しばらく店をまわると、ユー子はピタリと足を止めた。


ショーウィンドウのガラスに映る自分。

大好きな二人と並ぶ自分は、楽しそうに見えた。


(ファッション……買い物。楽しい)


「靴が気になるの?」


ショーウィンドウの中には、ボルドーのハイヒール、ベージュのパンプス、黒のメリージェンが並んでいた。


「へっ?」


タケルの呼びかけに、ユー子は振り返った。


レムは、黒のメリージェンを眺めると、ユー子を連れて店内に入る。


「店員!この靴を試着させてくれ」


戸惑うユー子をソファーに座らせると、店員が取り出した靴をそっと履かせた。


(うぉ〜まじ絵になるな〜。ってか、なんで店員は顔を赤くしてんだよ)


レムは、ユー子をそっと立たせると鏡の前に連れて行く。


「うむ……よく似合っているな。履き心地はどうだ?」


「履きやすいし、歩きやすい!可愛い!」


レムを見上げて、にっこり笑うユー子をみて、店員は小さく拍手をする。


「いい!この間のカップルは、騎士と令嬢って感じだったけど、この方たちは、魔王と姫って感じ……それもまたいい!ヘルプに来て良かった!」


店員のつぶやきを、しっかりと聞いてきたタケルは、横目でじとっと店員を盗み見た。


(この店員大丈夫か?ラノベとか好きだろ……ってか魔王って!ニアピン過ぎない?)


タケルは、店員の観察眼に慄きながらも、靴を購入した。


ユー子は、試着したまま店を出ると、足元を見ながらてくてくと、レムの後をついて行く。


女性服の店が並ぶフロアに移動すると、その場の店員たちが、レムとタケルに目を奪われる。


その中心にいるユー子を見ると、納得したかのように頬を赤らめた。


「いらっしゃいませ〜。どうぞ、ご覧くださ〜い」


店員の声に力が入る。


レムが、店の中から声をかける店員に視線を向けながら妖艶に微笑むと、店員はふらふらとマネキンにしがみついた。


「店員。このマネキンの服はどこだ?」


マネキンにしがみついている店員は、「こっこちらです」と店内を案内する。


「耳が幸せ」という、店員のつぶやきを、またもやタケルは拾ってしまう。


「ふむ……、ユー子はどんなのが着たい?」


レムは足元ばかり見ているユー子の手を引いた。


「う〜ん……わかんない」


ユー子は、並ぶ服を眺めても、どれも可愛くて決められなかった。


(どんな服が似合うかわかんないし、昔は用意されたものを着ていたしな〜)


好きな服も、嫌いな服も無かった。

ただ、用意された服を着るだけ。


自分の好み、希望は押し込んでいるうちに、自分のことが、わからなくなっていった。


(あれ……何か、思い出せそうな気がしてきた……。このもやもやはなんだろう?)


レムは、マネキンが着ていた千鳥格子のジャンバースカートを引き出すとユー子の体に当てる。


「うむ……これがいいな。ユー子、これはどうだ?お前の好みか?」


ユー子は、好みを聞いてくれるレムをじっと見返した。


「うん。かわいい!……でも、レム。なんで好みを聞いてくれるの?タケルには、聞かなかったよ?」


「タケルの好きなものは、独特だからな。好きなものが似合うものとは、限らん」


「……ねぇ、遠回しにダサいって言ってる?わざとだからね、舐められないように派手にしてるだけだからね?」


「タケル、今の格好のほうが、カッコいいよ!似合ってる!派手にしなくても、タケルがすごいのは、ユー子わかってるよ!」


ユー子は、まじまじとタケルを見つめて言い放った。


「そ、そうかなぁ?」


「ああ、そうだとも。タケル、ユー子はどんな服がいいと思う?」


「え〜、ユー子に似合いそうな服……かぁ。

これかな?」


そう言って、ストライプ柄の派手なピンクのシャツと、グレーのフリルがたくさんのワンピースを手に取った。


「……それは、ないかな」


「斬新だな」


二人の反応に、タケルは涙を流した。


結局、控えめなフリルとボウタイがついたブラウスと、千鳥格子のジャンバースカート、ボルドーのタイツに、ベレー帽。


レムのフルコーディネートが採用された。


ユー子は、試着室で着替える。


着替えるのなんて、いつぶり?

新しい服の匂いがする。


『次、優子ちゃん、入ります!』

『さっ、優子ちゃん急いで!』


『あの子、変な子なんでしょ?』

『なんで、あんな気味の悪い子が売れるのよ』


『優子ちゃん、笑って〜』


鏡に映る自分を見て、遠い記憶が瞬間的に蘇る。

ぐらりと視界が揺れた気がした。

タケルは現在、荷物持ち兼マネージャーと化しています。


ちなみに、換金は査定額によって税金がかかる場合もある模様……。

タケル、買い物しすぎるなよ。


靴屋の店員は、完結済み

『崖上小屋で今日もハイヒールを眺めます』

にも登場しています。番外編②です。


よかったら、覗いてみてください。

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