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【本編完結】怖がられない昭和幽霊は、海外悪魔とSNSで意気投合する  作者: 小原みん
見られる昭和幽霊と海外悪魔(イケメン)

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11/40

昭和幽霊は、懐中時計の異変に気づく

ちょっと落ち込んでる昭和幽霊のユー子は、風呂上がりのタケルを見上げた。


「おぅ……ユー子どうした?」


「タケル……わたし、何で死んじゃったんだろ?覚えてないの」


「……無理に思い出さなくていいさ。あがりたくなる時が来たら、いつでも手伝うよ」


タケルは優しい。

せめて、何か手伝いができないかな……。


「タケル、私にできることってある?」


「……レムと、観光しておいで。楽しいと思えることをすればいい」


タケルは、ユー子の頭をそっと撫でて微笑んだ。


「俺は寝るけど、ユー子はどうする?外に行くか?それとも寝るのか?」


「……寝れない。寝るフリは出来るかも……」


「じゃあ、レムでも抱きしめて寝ればいい」


「……タケルも、傍にいて欲しい」


込み上げてくる寂しさを隠さずに、ユー子はタケルを見上げた。


タケルは「ふぅ……」と、眉を八の字にして、軽く息を吐いた。


「しょーがねぇーな」


困ったように笑いながら、毛布と枕を持ってくると、レムが眠るソファーに横になる。


「同衾……してみたかったんだよなー」


ふふと笑ってレムを抱きしめる。


レムは、迷惑そうに半目でタケルに視線を向けたが、どうでもよさげにため息をつくと、眠りについた。


「これで寂しくないだろ?」


「……うん。ありがとう。タケル」


ユー子は、部屋の隅っこで膝を抱えたまま、目を瞑った。



*****



翌朝、タケルは肉付きのいい何かに、頬を埋めて目を覚ました。


半分意識を、夢の中に置いたままタケルはぼんやりと目の前の光景を見つめた。


漆黒の艶やかな長い髪。

豊満な胸元は、今にも溢れそうだ。

大きな赤い目は熱を帯びている。


薄い唇が妖艶に微笑んだ。


「タケル、おはよう」


溶けそうな、色っぽい声がタケルの耳をかすめる。


「………」


タケルは、目の前の美女をしらけた顔で見つめた。


「お前、ふざけんな。夢の中の美女とのいちゃいちゃを返せ」


「ほう……我が輩と分かったか」


タケルは、がばっと起き上がると、レム(美女)を押し退ける。


「タケル、我が輩と同衾したいって言ってたじゃないか」


レムは「男の夢だろ?このボディーは」と不思議そうに、首を傾げる。


「猫だからだよ!猫!」


タケルは、けしからんとばかりに、かみつく。


「……なるほど。では、これは?」


レムは、しばし考えてから、ふわりと身体を捻ると、先ほどの美女よりも少し幼くなり、黒い猫耳と尻尾を生やす。


心なしか、猫目になった赤い目を、きゅるんとさせると、丸くした手を頬に寄せる。


「にゃ〜」


可愛らしい声で、鳴き真似をする。


「………」


がっくりと、タケルはうなだれた。


「どストライクだよ!ふざけんなっ。俺の性癖に触れてくんなっ!」


黒い尻尾を、うねうねさせながらレムは、けたけたと笑った。


「ユー子、撮ったか?」


「ばっちりだよ!」


ユー子はスマホを連写する。


「はぁ〜?お前っ……ユー子!写真撮ってたな!」


「うん!眠ってるタケル、レムの胸に埋まるタケル、真っ赤になったタケル、全部取ったよ〜」


ユー子は、悪びれることなく、笑顔で頷いた。


「……消せ!今すぐ消せ!」


タケルがあまりに凄むので、ユー子は口を尖らせながら、データを消すそぶりをした。


「ふふ……ユー子、エロ本探そうぜ。タケルの性癖を深掘りするぞ」


「うん!分かったー!タケル、ベッドどこ?ベッドの下にある?」


ユー子は、うきうきした。


「だー!!一人暮らしでベッドの下に隠すかよっ!お母さんかよ。お前は!」


タケルは、がしがしと金髪の頭を掻く。


「えーじゃあ、どこにあるの〜?」


ユー子は、きょろきょろと辺りを見渡す。


「残念でしたぁ〜。この家にエロ本なんてありません〜。デジタルの時代に置いておくかよ」


タケルは得意げに、ユー子を笑う。


「ほぅ……。デジタル……ユー子!スマホだ!スマホを探せ!」


「……墓穴掘った……。ねぇ、もうこの話題辞めない?」


タケルは、顔を手で覆うと項垂れた。


「はぁ……もう、お前ら外に行って観光でもしてこい。俺は仕事するから」


「んー町に行く?」


「そうだな。買い物もいいな」


レムは、青年の姿になるとにんまりと笑った。


「買い物って、そもそも金あんの?」


タケルは、腕を組むと首を傾げる。


「……飛行機もぬいぐるみに入ったんだろ?」


「金?日本円はないが……これ売れば金になるか?」


レムは、ポケットから純金の懐中時計を取り出す。


「……売れば金になるが、それ売っちゃうのか?」


いかにもアンティークっぽい懐中時計をタケルは見つめた。


「……動かないガラクタだし、拾い物だから別に、売っても構わない」


「ふーん……拾い物ねぇ」


ユー子も懐中時計を見つめる。


「レム、これ、悪いやつ。黒いのあるよ!これ付けたら呪われちゃうよ!」


「そうなのか?何も起こらないが……」


レムは、手のひらの懐中時計を握る。


「呪いの懐中時計は売れないだろ。ってか、売るな!被害が出る」


タケルは、首をぶんぶん振る。


「タケルが祓えばいいじゃん」


なんて事ないとばかりに、ユー子はタケルに視線を向けた。


「え?俺が?」


「うん!だって、レムが入ってたぬいぐるみの黒いの祓ってたじゃん」


ユー子は、空港でぬいぐるみを祓っていた事に気付いていた。


「ユー子……ずっと気になっていたけど、生きている時から、変なものとか、黒いのとか、視えていたのか?」


タケルは、目を細めてユー子を見据えた。


「んー……あんま覚えてないけど、“変なことを言う子”とか、“気味が悪い”とかは言われてたかも……」


「そうか……俺と一緒だな」


ユー子は、切なそうに笑うタケルを見つめた。


「一緒?タケルも、友達いなかった?」


「ははっ……そうかもな」


タケルは、穏やかに笑うとユー子の頭を撫でる。


「じゃあ、いっちょ懐中時計の悪いもん、祓いますか」


タケルは、懐中時計をレムから受け取ると、二階へ向かっていった。


少し時間がかかると言って、テレビをつけると某動画投稿サイトに切り替えていった。


「レム、心霊スポットの動画あるよ!」


「おぅ見よう!恐怖の研究だ!」



*****




タケルは、無事(?)懐中時計を祓い終わると、リビングからユー子とレムの話し声を耳を傾けながら、扉を開けた。


「違うよ!そっちじゃないよ!うしろうしろ!」


「こいつら、見えてないのに、怖がってるな。すぐ後ろにいるのに……」


「自分の足音なのに、怖がってる!」


二人は、きゃっきゃっ言いながら、動画に夢中だ。


「楽しそうだな」


ユー子は、リビングに戻ってきたタケルに、「面白いっ」と笑顔で答えた。


「幽霊なんて、その辺にいっぱいいるのに、何でみんな分からないの?」


「視える人、感じる人は少ないからな。視えていても、理解されにくいし、分かった振りして、面白がられるだけさ……。まあ、視えないんだから仕方ないけどな」


タケルは軽く息を吐きながら、肩をすくめた。


「そんなもんなの?」


「そんなもんさ……レム、悪魔崇拝ってあつわたんだろ?どんなもんなんだ?」


「あぁ、今でこそ減ったが昔は盛んだったな」


レムは思い出すように天井を見上げた。


「我が輩は、人間界が面白すぎて、呼び出さなくても直ぐに後ろにいたが、実体を見せないと分かって貰えなかったな〜」


「実体って、あのグロいやつじゃないのか?」


「あぁ……あれも、精神体だから視えないんじゃないか?他の悪魔は知らんけど」


「他にもいるんだ」


「あぁ、破滅、呪いその類が得意なやつはいるな。まあ、呪おうとする人間の方が恐ろしと思うけどなぁ」


にやりとレムは笑った。


「だから、逆に、そいつの魂を頂くのさ。恨みが強ければ強いほど、そいつの顔が歪むのが楽しい」


「……悪魔こぇ〜。悪霊よりこぇ〜」


タケルは腕をさする。


「そうだろ?悪魔は、そうやって長生きするのさ。ただ最近の人間は、空っぽさ。昔と比べて、感情が薄くてな。恐怖も映像で慣れてしまっている。それに、疲れ切った魂には興味ないんでね」


「……なるほどね〜」


タケルは頷くと、レムに懐中時計を渡す。


「ほれ……これを換金して観光してこい」


「おぉ……。ってか、浄化どころか神の匂いがするぞ。ぞわぞわする」


レムの漆黒の髪が静電気を帯びているように膨む。


「そりゃ念入りに浄化したからね。神力が残るのさ」


「タケルすごい!天才!」


ドヤ顔をするタケルに、ユー子は拍手をして褒めた。


「だろ?もっと褒めていいぞ」


「それで、タケル。これ、どうやって換金すればいい?身分証明書もないが……」


「……そうだった……お前、悪魔だった……」


まだ付き合わなきゃ駄目だったと、タケルはその場に膝をついた。


金は高騰中。

いくらになるんだろ……。


美女レムはスタイル抜群!

タケル、いい夢見れたね!

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