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堕天使物語 -サタン誕生-  作者: 平岡春太
 最終章 サタン誕生

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 第九話 宣戦布告

 サタナエルが思案に暮れていると、外からアスタロトとヴェールが入って来てルシフェル達に並んで歩みを止める。


「アスタロトよ、どうしてお前がそちら側に立つ? お前は私の下僕であろう。まさか、裏切った訳ではあるまいな?」

「裏切った? 違うな。裏切ると云うのは信頼する者がその信頼を無下にすると云うもの。しかし俺は元より貴様を信頼などした覚えはない。貴様の下僕になったのも、ずっとこうなるのを待っておったからだ。今日こそ全ての恨み、晴らさせて貰うぞ」


 それを聞いたサタナエルは、吹き出すように笑い出す。


「それで動揺するとでも思ったか? お前が私に忠誠を誓っておらぬ事など最初から分かっておったわ」

「虚勢を張るな」

「虚勢などではない。お前の性格からして私に真に仕える事は皆無に等しかろう。ならば、下僕を殺された恨みから敵を討つべく私に近付こうと曲がりなりにも下僕になれば良いと最初から考えておったのだ。思い通りにお前は下僕と成り、御蔭でそこに居るヴェールの国を落とし、この城を手にした上、更に幾つかの国を手にして国土を広げる事が出来た」


 アスタロトは歯噛みする。


「悔しがるのは早いぞ。もう一つ教えておこう。お前に寝返り、加担しておった者達を私が知らぬと思っておったか?」


 サタナエルの下僕の中には、様々な事でサタナエルに反感を抱く者達が居た。

 アスタロトはその者達を密かに引き込み、サタナエルの不死身の秘密を探らせていた。


「知っていたのか」

「それだけではないぞ。そ奴等を敵情視察に出し、その国の者に殺されたと云っておったのを不思議には思わなかったのか?」

「まさか……!?」

「そうだ。お前に気付かれぬように少しずつ、密かに処刑しておったのだ」

「俺が引き込んだばかりに……貴様」

「怒ったか。それではこの私を殺すか? 笑わせるな。幾ら一国の君主が三匹も雁首を並べた所で、見た所その内の二匹はまともに戦える状態ではない。元より私は不死身だ。貴様らが束になって掛かってこようが殺される事はないのだからな」

「勘違いするな。ここに居るのは観客だ。貴様の相手は我だけだ」


 ルシフェルが数歩前に出て言う。


「待て。幾ら━━」


 アスタロトが前に出ようとするが、ルキフグスが肩を摑んで止める。


「止めておけ。何を云ってもそいつは考えを変えぬぞ」

「今はあ奴の戦いを見るのじゃ。儂等の力が必要な時は、あ奴の方から助けを求めて来るじゃろうて」


 アスタロトは溜息を洩らし、肩を摑むルキフグスのてを数回軽く叩く。

 それを受けてルキフグスは手を放す。

 それを見ていたサタナエルは当然の如く苛立つ。


「確かに先程の戦いぶりからすると初めて会ったあの時より貴様の力は格段に上がっておる事は分かる。しかし、それがどうしたと云うのだ? どれほど強大な力を得たとしても、不死身の私には通じぬ。それを貴様たった一匹で相手をするだと? 図に乗るのもいい加減にしろ!」


 両手で握った肘掛けを激しく叩きつつ、勢い良く立ち上がる。


「図に乗っておるだと? それは貴様であろう!」


 ルシフェルはその場でサタナエルに向かって右手を一振りする。

 それのよって生じた突風が刃と化し、前方に立つサタナエルを襲う。

 サタナエルの体を容赦なく風の刃が切り付けて吹き抜けて行く。


「何だ、これは!?」

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