第八話 困惑
一瞬にして飛び上がったルシフェルは、降下して来た二匹のガーゴイルが突き出している槍をそれぞれの手で摑むなり宙に制止し、槍を振り廻す。
槍を摑んでいるガーゴイル達はそのまま振り廻され、堪らずに二匹共に手を放して勢い良く飛ばされ、床に叩き付けられた。
ルシフェルは手に持つ二本の槍を続け様に下方で呆然とルシフェルを見上げているゴブリン達の内の二匹に向かって投げた。
その余りの速さに、ゴブリン達は躱す間もなくその体に槍が突き刺さり、斃れた。
床に叩き付けられたガーゴイル達が立ち上がるのを見たルシフェルは、その内の一匹に向かって急降下し、背後に降り立つなり、鋭い爪でガーゴイルの体を背後から貫いた。
「何と云う動きだ。この短い間にあれほどの動きが出来るようになったのか……?」
崩れ落ちるガーゴイルの屍を目の当たりにし、もう一匹のガーゴイルは恐怖に顔を引き攣らせ、その場から逃げ出してしまった。
生き残っているゴブリンも斧を投げ捨ててその後を追う。
「貴様ら、何処に行く!」
サタナエルの怒鳴る声を気にも留めず、二匹は王室から出て行ってしまった。
その直後、外から一つの悲鳴が聞こえて来た。
部屋の出入り口から、出て行ったゴブリンが身を震わせながらゆっくりと後退りして戻って来る。
素早く後ろを振り返り、一目散に駆け出そうとするが、その体は縦に真っ二つに分かれ、無残な屍となって床に横たわった。
「今度は何事だ!?」
少し遅れて外からルキフグスが姿を見せ、斧を肩に担ぎ直しつつゆっくりとした足取りでルシフェルに歩み寄り、肩を並べる。
「追う手間が省けたであろう」
「要らぬ世話だ」
「相変わらずの返事だのぉ。ほう、あいつがサタナエルか」
「貴様、何者だ? その風貌、ただの悪魔ではなさそうだが」
「儂か。儂はルキフグスだ。お前も一国の君主であれば儂の名を知っておろう」
「ルキフグス? あの暴君と云われるルキフグスだと云うのか? 何を馬鹿な。ルキフグスがこんな所に居るはずが……」
サタナエルはルキフグスの姿を凝視する。
「あの尋常な大きさではない斧を自然に持ち、遠く離れておっても分かる威圧感。確かに話に聞くルキフグスに違わぬ。しかし……貴様が誠のルキフグスとして、何故この場に居る?」
「訳か? 少し事情があってな。今はこいつと行動を共にしておるだけだ」
「どう云う事だ。ルキフグスまでプロセルピーヌに就いたと云うのか? いや、ルキフグスは奴と行動を共にしておると云ったな。ならば奴がプロセルピーヌを。しかもルキフグスまで……」
サタナエルの顔を困惑と言う二文字が埋めた。




