第七話 何故ここに?
王室では、二匹のガーゴイルと三匹のゴブリンに囲まれた玉座に、サタナエルがかなり焦燥した様子で座っていた。
「まさかプロセルピーヌの方から攻めて来ようとは……サバタイの国に攻め入って間もないと云うに、疲弊しておらぬのか? それにしても遅い。まだ片が付かぬのか?」
石造りの肘掛けを摑んでいるサタナエルの手に力が入る。
遂には摑んでいる辺りが粉々に砕け散る。
周りを囲む護衛達は、いつとばっちりを食らうかと怯え、微かに体を震わせる者も居る。
更に、部屋に入り口から聞こえて来た悲鳴に驚き、固まる。
悲鳴に続いて入口から血塗れのガーゴイルが飛び込んで来た。
床に横たわるガーゴイルは既に息絶えていた。
それに続いて悠然と歩いて入って来たルシフェルに、サタナエルは驚きを見せる。
「貴様、生きておったのか!?」
「久しぶりだな。約束通り、貴様を殺す為に戻って来てやったぞ」
「よもやとは思っておったが、何と云う生命力よ。いや、それよりも何故貴様が今ここに居る? まさか、私の誘いは断っておきながらプロセルピーヌの元に就いたと云うのか?」
「勘違いするではない。何度も云ったが我は魔王となるのだ。誰の下僕にもならぬし、誰の命令も受けぬとそう云ったはず。しかし、後の妻となる者が治める国を脅かす貴様の国を排除するのは当然と云うものであろう」
「後の妻だと? あのプロセルピーヌがお前の妻になると云うのか? そんなはずはない。まだ堕ちて間もない一介の悪魔であるお前が、どうしてプロセルピーヌと……」
プロセルピーヌには今まで数多くの求婚者が居た事はサタナエルでなくとも周知の事実であり、その悉くが突っ撥ねられて来た事も然りである。
「この数日間にあのプロセルピーヌの気を引いたと云うのか? いや、それともその逆か……?」
「信じられぬようだな。まあ、貴様が信じようが信じまいがどちらでも良い。貴様はここで死ぬのだからな」
笑みを浮かべるルシフェルに、サタナエルも笑みで返す。
「確かにその通りだ。それが誠か否かどちらでも良い事だ。ただ、どういう形であれ、お前がプロセルピーヌに組みしている事は事実のようだ。この手に入らないのなら始末してしまえば良いだけだ。おい、先程から何をしておる? 目の前に敵が居るのだぞ。さっさと始末せぬか」
今まで呆然と立ち尽くしていた護衛達が慌ててルシフェルに向かって駆け出した。
ルシフェルの前方、左右の三方から、散開したゴブリン達が斧を振り上げて詰め寄り、直ぐに羽を広げて飛び上がった二匹のガーゴイルが、上空から槍を突き出して降下して来る。
慌てることなくルシフェルが羽を広げた次の瞬間、ゴブリン達の視界からルシフェルの姿が消えた。
「速い!?」
サタナエルは驚いた顔を上に向けていた。




