第六話 下僕の気持ち
「儂は奴を追って王室に向かう。お前はどうする?」
「先に行ってくれ。儂はアスタロトと共に後を追うとする」
「さぁて、来るかのぉ?」
ルキフグスはアスタロトを一瞥し、軽い地響きを起こしつつ部屋から駆け出して行った。
今度はヴェールがアスタロトに歩み寄る。
「入れ代わり立ち代わり、もう放っておいてくれぬか」
「奴等が云いたかった事を知りたくはないのか?」
「お前は分かると云うのか?」
「お主は下僕達の気持ちを全く理解しておらぬと云う事じゃ」
「下僕達の気持ちだと?」
「お主の下僕は死ぬ前に敵を討ってくれと云うたと云うておったな。では敵を討った後、死んで会いに来てくれと云うておったのか?」
「いや」
「その下僕は敵を取って欲しいのは勿論じゃろうが、お主にこの先も生きて欲しいからそう云うたのであろう。他の下僕達もそうじゃ。お主を生かす為に必死に戦い、散って行ったのではないのか? その気持ちを無下にするような事をしてどうする」
「では、この先も生き続けろと? 下僕を皆殺しにされた俺に生き恥を晒して生き続けろと云うのか?」
「まだ分からぬか。だから、あ奴等が殺す価値もないと云うたのじゃ。下僕の気持ちが分からぬ以上、この先も分からぬであろうな」
「先程から下僕の気持ちと云うが、これでも元一国の王だ。そのぐらい分かっておるつもりだ。そもそも、お前に俺の下僕の気持ちが分かると云うのか?」
「いや、完全には誰にも分からぬであろう。じゃが、お主よりは分かっておるつもりじゃ」
「何を勝手な。会いもしない者の気持ちなど分かるはずがない」
「全く、話の分からぬ奴じゃ。おお、それほど下僕の気持ちが知りたければ良き方法があるぞ」
「方法だと? それは何だ?」
「簡単な事じゃ。お前が下僕と成れば良いのじゃよ。サタナエルの時のように復讐目的ではなく、仕えるべき主の下僕とな」
「俺が下僕にだと? また一からやり直せと言うのか?」
「驚く事もない。下僕と成るのは簡単じゃ。その忌々しいプライドを捨てれば良いのじゃからな」
「下僕……この俺が下僕に……まさかお前は!?」
「察しの通りじゃ」
アスタロトは急に声を上げて笑う。
「お前は全て分かっていたのか? 奴が俺の思い描いていた道を歩いていたのではなく、俺が奴の道に乗っていた事を」
アスタロトは傷付いた体をもたげて立ち上がり、床に転がっている自分の槍を拾い上げて背に戻す。
「では、行こうか」
「随分と待たせおって」




