第三話 完敗
サタナエルに動く間を与えずに一瞬にして迫り、アスタロトが突き出した槍がサタナエルの体を貫いた。
「殺された下僕達の恨み、とくと味わえ。いや、既に果ててしまったか」
「誰が死んだと?」
口から一筋の血が流れ出しているものの、サタナエルは平然とした様子で体に突き刺さったままの槍を握るアスタロトの手首を摑む。
「馬鹿な? 手応えはあったはず」
「何をやっても無駄だ。私は不死身なのだからな」
「不死身だと? 何を馬鹿な」
「現に致命傷を負ってもこうして生きておるではないか。では、次はこちらの番だ」
アスタロトの手首を摑むサタナエルの手が閃き、その手からアスタロトの摑んでいる手首を伝って体中に強烈な電撃が流れ込む。
アスタロトの悲痛な叫び声が響き渡る。
「陛下!?」
アスタロトの下僕達は堪らずに駆け出し、サタナエルの体に手にしてる槍を次々と突き刺した。
片やサタナエルの下僕達はまるで動こうとしない。
「主と同じ過ちを犯すとは馬鹿な奴等よ。それほど同じ苦しみを味わいたければ、とくと味わうが良いわ!」
今度はサタナエルの体全体が閃き、突き刺さっている五本の鉄の槍を伝って、ガーゴイル達の体中を駆け巡る。
悲痛な叫びを上げて束の間、ガーゴイル達は槍から手を放し、次々と床に倒れる。
動かなくなったその体からは白煙が上がっている。
「ぎ、ぎさま……よくも……」
「案ずるな。此奴等はまだ生きておる。今殺してしまえば、お前は永遠に首を縦に振らなくなるであろう」
「たっ、例えそいつ等がいっ、生きておろうと……貴様の下僕になど……なっ、なる……かっ!」
「強情な奴よ。ならば、これでどうだ!」
サタナエルの体全体の輝きが止まると共に、アスタロトの手首を摑む手の輝きが増し、アスタロトの体に流れ込む電撃もまた強さが増した。
悲痛な叫び声も大きくなる。
「さあ、下僕となると云え。そうすればその苦痛から解放してやろう」
「なっ、なるもの…………」
突然アスタロトは力なく床に倒れた。
体を流れる電撃のせいか、その体は水から打ち上がった魚の如く小刻みに跳ねている。
「気絶しおったか」
手首を摑むサタナエルの手の輝きが消えると共にアスタロトの体は動かなくなり、白煙が上がる。
「あれほどの衝撃をここまで耐えるとは、さすがに一国の王たるはある。やはりその力、この手に欲しい。おい、こいつ等を連れて城に戻り、牢に入れておけ」
周りで待機していた下僕達が床に倒れているガーゴイル達の周りに集まり、持ち上げて運んで行く。
アスタロトの元にも四匹のゴブリンが集まる。
「ちょっと待て」
サタナエルはその場にしゃがみ、倒れているアスタロトの頭にある王冠を手にした。
「これは私にこそ相応しい」




