第二話 果たし合い
少し遅れて両側の通路から、サタナエルの下僕であるガーゴイルやゴブリンが大勢集まって来てアスタロト達の逃げ道を塞ぐ。
「どうやら粗方の奴等は始末出来たようだな」
アスタロト、そして下僕達が怒りの目をサタナエルに向ける。
「そういきり立つでない。今やお前達は袋の鼠。歯向かった所でどうにもならぬであろう。それよりもアスタロトよ。今からでも遅くはない。私の下僕とならぬか? そうすれば、そこに居る下僕だけは助けてやっても良いぞ」
「大勢の下僕を殺しておいて今更何を云う!」
「確かにそうだ。だが、元はと云えばお前が悪いのではないか? 先日、友好的に使者を送り、下僕にならぬかと伝えたが、それをお前は無下に断ったであろう。だからこうして実力行使に出るしかなかったのではないか」
「勝手な云い分だ。何故一国の君主たる俺が貴様の下僕にならねばならぬのだ」
「それは我が国には大勢の下僕は居るが、重臣と呼べるほどの者が居らぬからだ。お前の国も我が国同様、さしたる重臣が居らぬなら分かるであろう。そう云う国を攻めるには問題がないが、かなりの力ある重臣を持つ国を攻めるにはこちらもそれなりの重臣が要るであろう。それに、どの世界に於いても強い者に弱い者が従うのが道理。違うか?」
「確かに貴様の云う通りだ。ならば、俺が貴様を斃せば問題はない訳だな」
「こういう状況でまだ大口が叩けるか。先程まで逃げ出そうとしておった者がな」
「先程は下僕達に勧められて止む無く逃げていただけのこと。それに貴様も云ったではないか。貴様の国にもさしたる重臣が居ないと。ならば貴様さえ斃してしまえば良いと云う事であろう」
アスタロトは再び槍を手にし、サタナエルに穂先を向ける。
それに合わせてアスタロトの下僕達も周りを囲むサタナエルの下僕達も武器を構える。
「待て」
止めたのはサタナエルだ。
「そこまで云うのなら機会を遣ろう。こちらは私だけが戦う事にしよう。他の者は構えを解き、一切手を出すでないぞ」
言われるがまま、サタナエルの下僕達は直ぐに構えを解く。
「どう云うつもりだ?」
「お前の云う事も一理あると云う事だ。長々と戦いを引き延ばすよりも、その方が早く片が付くであろう」
「それを信じろと?」
「この状況だ。信じる信じないもあるまい」
「確かにそうだ。ならば、こちらも俺だけで戦おう。お前達は手を出すでないぞ」
「ですが……」
「何も指を食えて見ておれと云っておる訳ではない。他の者が動き出せばそれに対処せよ」
状況を考えれば最善の策かと、下僕達も納得する。
「どうあっても信じぬか。こちらは私一匹。全員を相手しても良いと云っておるのに、わざわざ一騎討ちとは馬鹿な奴よ」
「一国の王であるこの力、甘く見るなよ。どちらが馬鹿なのか、直ぐに分からせてくれる」
アスタロトは通路一杯に羽を広げ、サタナエルに向かって飛び出した。




