第八話 やるべきこと
数の上ではプロセルピーヌの軍が圧倒的に劣勢であった。
但し、その数の差さえ、たった四匹の悪魔によって、まるで劣勢を感じさせなかった。
ルシフェルがその爪で、ルキフグスが斧で、マルコキアスが吐く炎で、更にカレガタナスは姿をガーゴイルに変え、劣勢な上空の戦いに加わり、数を減らして行く。
城の前は瞬く間に屍が散乱し、いつしか両軍の数は拮抗した戦いになっていた。
「よし、ここはもう良かろう。カレガタナス! マルコキアス! ここを頼めるか!」
ルシフェルは戦いの手を止めず、二匹に呼び掛ける。
「任せろ!」
上空でガーゴイルの姿で戦うカレガタナスが答え、魔獣の姿のマルコキアスも奇声を上げて応えた。
ルシフェルは羽を広げて飛び上がり、城の入り口付近まで一気に戦火を飛び越え、舞い降りる。そして辺りを見廻し、斧を振り廻して暴れまわるルキフグスの姿を認める。
「ルキフグス! 我等は城の中に行くぞ!」
「何を云う。まだ暴れたらぬぞ!」
暴れ廻る様は正に暴君、周りに居る者の中には逃げ出す者も居る。が、
「お前の胸に下げている物は何だ! やるべき事を忘れたか!」
ルキフグスは動きを止め、胸に下がるペンダントを見た。
ハッとしたその後ろから襲い掛かって来たヒュポクトニアを斧で薙ぎ払い、ルシフェルに向かって猛然と駆け出した。
「退け! 退け! 退けい!」
ルキフグスが通った後に一本の屍の道を生み、まるで支障なくルシフェルの元に辿り着く。
「済まぬ。つい昔の癖が出た」
「謝る相手が違うであろう」
「そうであったな」
「では行くぞ」
未だ城の中から出て来る悪魔達を薙ぎ倒しながら、二匹は城の中に入って行く。
城の中でも、待ち構えていた悪魔達が次々と襲い掛かって来る。
「ええい、次から次へと、まだこんなに残っておるのか」
「おお、暴君が泣き言か?」
「馬鹿を云うな。ちまちまと戦うのが面倒なだけだ!」
ルキフグスが振り下ろした斧が床を割り、その先に居る悪魔達の体が真っ二つに裂けて行く。
「負けてられぬな」
数が居てもこの二匹には足止めにもならず、ただ屍の数を増やすだけであった。
そうこうしている内に、地下へと続く階段の前に辿り着く。
「この下にヴェールが居る」
「お前は行かぬのか?」
「サタナエルより先に決着を付けねばならぬ奴が居る。そいつとは我だけで相手がしたい」
「ほう、お前にそこまで云わせるとは、儂も会ってみたいが、ヴェールの事もあるしな。分かった。それでは王室で会おうぞ」
ルキフグスは階段を駆け下りて行った。




