第四話 功労者
カレガタナスはルシフェル達の方を向き、ゆっくりと歩み寄って行く。
マルコキアスが身構える中、少し距離を置いて立ち止まると、手にした剣を目の前に投げ捨てた。そして、
「殺せ」
思いもよらない言動に、マルコキアスとルキフグスが怪訝な顔を見せる中、ルシフェルの反応は違った。
「死ぬぐらいならその力、我等の為に使え」
今度はカレガタナスが戸惑いを見せる。
「何を言っている? 私はお前とプロセルピーヌを殺そうとしたのだぞ」
「それはサバタイがやらせた事であろう。下僕なら仕方のなき事だ。それに、一番の功労者を殺す訳にも行かぬであろう」
「この私が功労者だと?」
「そうではないか。我等はサバタイの首を獲る為にここに来た。その首を獲ったのはお前なのだ。これを功労者と云わず何とする?」
それを聞いてルキフグスは苦笑いする。
「そう云う事か。誰が殺しても構わぬと云っておきながら、こいつ初めから……」
「死ぬ事はいつでも出来る。もうサバタイは居らぬのだ。これからは自分の為に生きてみてはどうだ?」
「自分の為に……生きる…………」
カレガタナスは戸惑いを見せ、言葉を失った。
「ちょっと待て。そう言う大事な事を勝手に進めるな」
プロセルピーヌを暗殺しようとした者を仲間にとは、当然の如くマルコキアスが反対する。しかし、
「分かった。もう少し考えてみよう」
カレガタナスは剣を拾い、鞘に納める。
「だから待てと━━」
更に抗議しようとするマルコキアスの肩を、大きな手が摑む。
「止めておけ。どうせお前の声など聞いてはおるまい」
「そう言う問題ではない」
苛立ちを募らせるが、確かにルシフェルとカレガタナスの耳に声は届きそうになかった。
「ええい、勝手にしろ。どうなっても知らぬぞ」
プロセルピーヌの城に戻り、ルキフグスとマルコキアスは傷の治療を受けていた。
ルシフェルだけは、帰ったその足で王室に入った。
プロセルピーヌは既に玉座を立ち、ヴェールの向こうから出て来て階段から少し下りて来ていた所だった。
「これで良いのだな」
ルシフェルは手にしているサバタイの首を掲げる。
「誠に凄い奴じゃ。本当にたった三匹で一国を落としてしまったのじゃからな。お前も早く傷を癒すが━━」
入口から聞こえて来た騒がしい声に、プロセルピーヌは話を止める。
「何の騒ぎじゃ?」
「お前に会わせたい奴が居ってな。そいつのせいであろう」
「会わせたい奴じゃと?」
「入って来い」
呼び声と共に入口から姿を見せた悪魔に、プロセルピーヌは目を丸くする。
それ以上に慌てたのが水面に六つの頭を出しているスキュラだ。
「カレガタナス!?」




