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堕天使物語 -サタン誕生-  作者: 平岡春太
 第五章 それぞれの戦い

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 第四話 功労者

 カレガタナスはルシフェル達の方を向き、ゆっくりと歩み寄って行く。

 マルコキアスが身構える中、少し距離を置いて立ち止まると、手にした剣を目の前に投げ捨てた。そして、


「殺せ」


 思いもよらない言動に、マルコキアスとルキフグスが怪訝な顔を見せる中、ルシフェルの反応は違った。


「死ぬぐらいならその力、我等の為に使え」


 今度はカレガタナスが戸惑いを見せる。


「何を言っている? 私はお前とプロセルピーヌを殺そうとしたのだぞ」

「それはサバタイがやらせた事であろう。下僕なら仕方のなき事だ。それに、一番の功労者を殺す訳にも行かぬであろう」

「この私が功労者だと?」

「そうではないか。我等はサバタイの首を獲る為にここに来た。その首を獲ったのはお前なのだ。これを功労者と云わず何とする?」


 それを聞いてルキフグスは苦笑いする。


「そう云う事か。誰が殺しても構わぬと云っておきながら、こいつ初めから……」

「死ぬ事はいつでも出来る。もうサバタイは居らぬのだ。これからは自分の為に生きてみてはどうだ?」

「自分の為に……生きる…………」


 カレガタナスは戸惑いを見せ、言葉を失った。


「ちょっと待て。そう言う大事な事を勝手に進めるな」


 プロセルピーヌを暗殺しようとした者を仲間にとは、当然の如くマルコキアスが反対する。しかし、


「分かった。もう少し考えてみよう」


 カレガタナスは剣を拾い、鞘に納める。


「だから待てと━━」


 更に抗議しようとするマルコキアスの肩を、大きな手が摑む。


「止めておけ。どうせお前の声など聞いてはおるまい」

「そう言う問題ではない」


 苛立ちを募らせるが、確かにルシフェルとカレガタナスの耳に声は届きそうになかった。


「ええい、勝手にしろ。どうなっても知らぬぞ」







 プロセルピーヌの城に戻り、ルキフグスとマルコキアスは傷の治療を受けていた。

 ルシフェルだけは、帰ったその足で王室に入った。

 プロセルピーヌは既に玉座を立ち、ヴェールの向こうから出て来て階段から少し下りて来ていた所だった。


「これで良いのだな」


 ルシフェルは手にしているサバタイの首を掲げる。


「誠に凄い奴じゃ。本当にたった三匹で一国を落としてしまったのじゃからな。お前も早く傷を癒すが━━」


 入口から聞こえて来た騒がしい声に、プロセルピーヌは話を止める。


「何の騒ぎじゃ?」

「お前に会わせたい奴が居ってな。そいつのせいであろう」

「会わせたい奴じゃと?」

「入って来い」


 呼び声と共に入口から姿を見せた悪魔に、プロセルピーヌは目を丸くする。

 それ以上に慌てたのが水面に六つの頭を出しているスキュラだ。


「カレガタナス!?」

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